流転と啓示 2
比較優位説をわかりやすく説明したのがサムエル
ソンである。彼の名著経済学の中で、有能な女性弁
護士に喩えて比較優位の合理性を説いている。この
女性は弁護士としても大変に有能だが、同時に手先
も器用で、一般的なタイピストの二倍のスピードで書
類を打てる。彼女は果たしてタイピストを雇うだろうか。
それともタイピストの給料を節約し、自分でタイプワー
クを熟したほうが得かーーー。
正解は、タイピストを雇う。である。敏腕弁護士の報
酬はタイピストの給料とは比べ物にならないほど高い。
自分が打った方が速いとしても、給料を払ってタイピス
トを雇い、弁護士の仕事に専念したほうがより多くの報
酬を得る事ができるからである。
リカードは様々な理論を打ち立てたが、比較優位説と
並んで、もう一つ重要なのがセイの法則を理論の中心
に据えた事である。セイの法則とは、市場に供給された
モノは必ず売れる、と言う驚くべき法則である。日常の生
活感覚で聞くと、随分と無茶な事を言っているようにも思
えるが、セイの法則はもっと広い意味で市場を捉えている。
国全体の市場を見渡せば、需要は必ず供給と等しくなる。
要するに、総供給にに等しいだけの総需要が生まれるとい
う思想、これがセイの法則である。
つづく