檸檬 3
おいら、いわゆる吝嗇である。そうケチなのである。
みみっちいとも言われる。なにかにつけ一流品は買
わない。つねに二流品の安物を買ってしまう。これは
もう、性癖とでも呼ぶべきか、おいらの悲しい性なの
である。
それでも今まで生きてこられた。なんの不都合もな
かった。おいら自身は三流と自覚しているが、これは
決して謙虚なる美質ではなく、よくよく世間を見渡して
定めた、おいらの社会的ポジションである。
なにかにつけ、おいらよりすぐれた人がいる。おもえ
ば学生時代、おいらの成績たるや、ほとんどビリだった。
あまたの学友の顔を見回し、なぜ彼等・彼女らより、おい
らの成績が劣るのかは解せぬのではあるが、事実は事
実として認めざるをえなかった。
こんなふうに書いていると、なにやら被虐趣味と思われ
る向きもあられるが、サに非ず。おいらが思い定めた、お
いらの評価である。
若き頃、おいら劣等感に悩んだが、今は開き直っている、
三流の矜持とやらを持ったのである。こう思う。帝国ホテ
ルの食事、あの吉兆の食事、わが吉野家の食事、おいら
は吉野家である。大衆食堂である。労働者の食堂である。
なんら恥じることはない。これが三流の矜持である。