檸檬 4
ぼくは人間が大好きである。モーッアルトより、
ドストエフスキーより、マルクスよりも人間のほう
が好きだ。もちろん彼らも人間である。しかも天
才たちである。なるほど、彼らから、沢山のこと
を学ばしてもらったり、楽しませてもらったりした
けれど、やっぱりフツーのその辺の人々のほう
が、ぼくは好きである。
社会はそのフツーの人々で構成されている。そ
のなかに天才はいない。天才は例外であり、そん
な人は社会からはみ出している。
考えてごらん。毎日会っている沢山の人は、沢山
なるがゆえに珍しくはないが、はたして工場で造れ
るものか。理性や、感情をもち、問えば答える。殴
れば怒る。こんな面白い動物を愛さずにいられよう
か。もし、この世から人間がいなくなって、100人ぐ
らいになったらどうしますかね。どんな高価なコンピ
ユーターより、人間のほうが飽きないし、面白いと思
う。ただ現在あまりにも沢山人間がいるので、それ
が気づかないだけ。
人間ほど面白くて、複雑で、興味深くて、恐ろしい
動物はありません。
かく言うぼくも人間である。実に怖いことだ。