門松 6
立派な行いを、ひとしれずなす人を好むし、尊敬
もうしあげる。が、立派なことを人前で言うひとはぼ
く嫌いです。巧言令色少なし仁、でおまん。で、ぼく
はどうか、といえば少なし仁組なんです。ぼく、はっき
り言って偽善者ですね。子供の時から偽善の塊でし
た。嘘、告げ口、悪口、妬み、嫉み、その上要領が
よくて、教師に可愛がられていました。
小2のとき、女性教師の藤本先生に、授業中先生
の質問に手を挙げて、ほかの生徒が「はい、先生。
はいはい先生」と言っているのに、ぼくは「はい、おか
あちゃん」言いました。クラス中が爆笑でした。ぼくは
恥ずかしそうに真っ赤になり、頭を手で掻きました。
これ、ぼくの計算でした。藤本先生は、笑っているほ
かの生徒をなだめ、「いいのよ、先生はおかあさんと
同じなのよ」と言って、熱い視線でぼくを凝視しました。
先生の瞳のなかに大きな星が輝いていいるのが見え
ました。
それ以来、ぼくは藤本先生に溺愛されました。クラス
委員、学芸会の主役、日曜日には先生のお家に御呼
ばれ。ぼくはしてやったり、大人なんてちょろいもんだ
と思いました。しかし、クラスのほとんどの生徒が、ぼく
の魂胆を見抜き、白い視線でおどけるぼくをバカにしま
した。わずか小2でぼくは、大人より同級生を恐れてい
ました。いわずもがなで、やんす。ニャロメ。