雪だるま 10
台風だすな。窓外では風が騒いでいる。不謹慎だが、
おら雨や風の暴れている音を聞くのが好きだ、まるで
ワァグナーかマァラーの交響曲を聴いているような感
におそわれるのだ。おらそんな時心が高揚して、なに
か素晴らしい詩でも書けるのではないかと思って試し
てみるんだが、それは勘違いで、いくら心が高揚して
も才能がなき場合は傑作はうまれない。自明である。
窓外の音がますます喧しくなっている。いよいよクラ
イマックかと思いきや、まだまだこれかららしい。はら
はらしたり、さらにどきどきして、しばしば夢見るような
心持なり、さながら酔いどれのごとし。
無聊を何かで埋めるべく、思案のほどに、ふとあっ
い視線を背中に感じ振り向けば、なにかを促す妻の
意味ありげなしぐさ。そういえば久しくごぶさたのかぎ
りである。たまには妻へのサービスは夫としての道徳
的義務。「やるか」と、おらがさそうと。妻は「やろうや
ろう」と、目と口で笑い、その辺をかたずけはじめた。
「てきとうでいいよ」とおら。「きれいなほうが好きだから」
と妻。昔から妻はこういう奴であった。おかしな奴だ。と、
思いながらおらは座布団を三枚畳の上に並べ、座って花
札をくばり始めた。