空想と潮騒 9
三島由紀夫氏が生まれたときの、産湯を浸った記
憶は、つとに有名なおはなしである。父親の平岡梓
氏によればその話はウソッパチだそうであるが、梓
氏は父親と言えどあくまで本人でなく、この場合三島
氏の言葉を信じるか、あるいは氏の作家としてのレト
リックに過ぎないということか。ぼくはなにも三島氏の
フアンではないけれど、氏ほどの有り余る才能の持
ち主ならばそんなことがあっても不思議ではない。な
にしろ聖書では、処女マリアが神と姦通して子供を産
んだのだから、それに比べれば三島氏のほうが信用
できる。
さて、三島氏のはなしのつぎにぼくのことを述べるの
は、いかにも天才を汚すようで申し訳ないが、ここでや
めるとブログが終わらないので続けさせていただく。
ぼくのいちばん古い記憶は、混沌としていて定かで
はないが、無理に整理すると、二歳か三歳のころ、と
心もとないが、母親の背中に負われた時の母親がき
ていた着物の冷たさである。ひやっとした不快な感じ
を鮮明におぼえている。それが次第にあたたかくな
っていきぼくは眠った。ただそれだけの記憶で、三島
氏に比べるといささか散文的で風味に欠けるが、そ
れはそれ天才となんとやらで、いたしかゆしである。
うん、ぼくなにか変なこと言いましたかね?