空想と潮騒 8
交響曲第 39番 変ホ長調 K543
六週間のうちに三つの交響曲を作り、しかもそれが
最大傑作であるがごときは、天才のみのなしうること
であろう。モーツァルトは、32歳の1788年の6月2
6日から8月10日までに、この「変ホ長調」はじめ、
「ハ短調」、「ト短調」の三つを作った。彼の才能が爆
発したのである。三つの作品は、それぞれ独立した
作品であるが、お互いにからめあって補足しあいモ
ーツァルトの楽想を尽くしている。したがってこの三
大交響曲は、三つを鑑賞して初めて、効果がえらで
る。初演は1790年10月15日、フランクフルトでモ
ーツァルトによっておこなわれた。
この交響曲はあたたかく陽気で、幸福感にみち、生
のたのしみをうたっている。最後の美しい曲を「白鳥
の歌」と名づけているが、白鳥はふだんは鳴かない。
が、死ぬときにはじめて美しい鳴くと伝えられている。
特に第三楽章のメヌエットは、傑作といわれている。
第一楽章アダージョーアレグロ。第二楽章アンダン
テ。第三楽章メヌエット(アレグロ)第四楽章アレグロ。
モーツァルトを目をとじて聴いていると、あたかも夏
の海岸で寝転んで、入道雲を眺めているがごとし。雲
がどんどん湧き上がり、ぼく自身が吸い込まれるよう
な気分になってしまう。天才おそるべし。