白河夜船 1
全ては幻想である。恋も、お金も、名誉も、人間が
創ったあらゆる価値は幻想である。この仮説はすこ
ぶる面白い。価値の根拠とは何か。権威から放た
れた言葉に過ぎない。
しかし、幻想であるにしても必要だからその価値
を創ったのであろう。
ごぞんじのように人間は社会的動物である。そこ
にはおのずから共有する価値がないと社会生活が
成り立たない。それゆえに自然に社会的価値が育
っていって共同体ができたのであろう。
ゆえに価値なるものは、手段であって目的ではな
い。人間関係をスムーズにする触媒であり決して
拝跪すべきものではない。
そう思えば価値の呪縛からのがれられ、いささか
自由の気分に浸れるではないか。倫理とか道徳
を必要以上に厳格に適用する社会は息苦しい。
ほどほどというのが最上のものなりと考えをれり。
このへんのところ、ニーチェの事実はない、ある
のは解釈だけだ、に似ているではないか。事実は
ない、あるのは幻想だけだ。