独り言  7月21日 | はなのブログ

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            ふらふらの記   11

    少なくとも心中になんのわだかまりも、不安あるいは屈託すらなく、波風が騒

   がず、ただぼんやりした、たいくっな平安が幸福なのかもしれない。なにも宝くじ

   が当たったとか好きな女が求愛を承認してくれた、といった非日常のできごとで

   はなく、ありふれた平凡、そんな状態が幸福という名の正体であることを人は知

   らない、あるいは忘れてしまったのかもしれない。ぼくたちはすでに幸福の鳥を

   心で飼っている。それを知らないだけなのだ。

    ACBのその日の出演者はグループTでした。ボーカルのSの魅力で人気が

   あり、ゲゲゲの鬼太郎のような髪型、腕と脚が細長く、異形ともいえるスタイル

   は、危険の匂いをかもしだし、女性のみならず男であるぼくさえ妙な色気にあ

   てられた。このような男はどんな家に生まれ、いかなる育ち方をしたらこんなフ

   ンイキをだせるのか、ぼくは知りたくなった。

    ACBをでて夕食をたべた。食後、夜の不夜城新宿を散策、ひと月前は田舎

   暮らしが嘘のよう、くだらない冗談を言いながら、予定の映画館を三人は目指

   した。映画はアルゼの戦いだった。映画を観るなり、眠るなりしながら朝まで時

   間つぶし。こんなことも学生だからできる特権だ。

    映画も終わって、ぼくらは劇場からはきだされ、早朝の喫茶店でモーニング。

   眠たくてうとうとしてると、眠らないで、とウエイトレスに注意された。三人は新宿

   で解散し、ぼくはぼんやりした頭で電車をなんとか乗り継ぎ、玉電は瀬田の駅

   でストップ。ぼくは下宿をめざす。遠くに下宿の家が見えたときは安心した。無

   事家がある。燃えていない。

    部屋は二階だ。階段をとことこあがると、戸の上の安全器がさがっーーーて

   ない。あっああああああああああああれれれ。あわてて安全器をさげ、カギが

   ああああかん。手がふるえるるるのだ。やっと戸をひらけ、ポットを見ればあき

   らかに怒っている。爆発寸前だ。どうやらポットに敷いたお皿が火事をふせい

   だのだ。鼻の差でセーフ。やれやれ、安堵。肝を冷やした。

    その日の夕方、都ちゃんにあった。

    「安全器ってなぁに?」

    と聞かれた。