ふらふらの記 10
まどろみの中で風のかげんなのか、なにやら男たちが争うようなむさいな声
が聞こえ、はて何事と窓外の川面を見れば、船に乗りブラックバスを釣りしお
のこ達二名が見ゆる。安心と心もちもおちつくなかふたたび睡魔にとらわれて
しまった。
春江ちゃんにしかられてから、いく日もたたぬある日、ぼくは友人と新宿に
行った。下宿をでて瀬田の駅から玉電で渋谷へ、40分ぐらいだろうか、のろ
のろだが心地よい感じだ。その時ぼくは寺山修司の書を捨てよ街に出ようを
読んでいた。
やがて電車は渋谷に着き、山手線に乗り換えて新宿へ。そこで気になり
下宿に電話をした。たしか下宿をでるまえに紅茶飲んだ。そのときのポットの
コードを切ったかどうか不安になったのだ。電話をすると中2の都ちゃんがで
た。おばさんはるすのもよう、部屋の隣の古賀さんか、猿渡さんに変ってと言
ったが、あいにく留守のもよう、しかたないので要点、つまり安全器を切るよう
に都ちゃんにお願いした。都ちゃんはかわいい声で「はい」と言ってくれたの
で、一安心ぼくは胸をなでおろした。
約束の新宿東口で友人二名と合流し、まずはあこがれのACBへ、時間は
午後5時だった。
ACBはいがいに狭かった。50ぐらいの席がなかったと思う。入口で何十周
年記念といって、箱のなかのボウルを引かされたが、ぼくだけ当たりで青いア
ルバムをもらった。かさばるので嬉しくなかったのを覚えている。