独り言  6月18日 | はなのブログ

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          ぼくの想い出にのこる本   14

    武田百合子をご存じであろうか。戦後派の作家武田泰淳の妻であるが、本人

   も作家である。作品は、富士日記、日日雑記、ことばの食卓、犬が星見た、な

   どあるが、夫武田泰淳の作品、もの食う女、メサの使徒、未来の淫女、続未来

   の淫女に武田百合子をモデルにした女がでてくる。特にもの食う女はチェホフ

   のかわいい女のような作品で、武田泰淳の数ある名作のなかでも、ぼくのおき

   にいりの作品である。

    円谷幸吉の遺書は、つとに有名であるが、死をまえにして食い物がえんえん

   と書かれ、形而上学的な言辞は一言も書かれていない不思議な遺書なのです

   が、それが妙に読む者のこころをつかむ。

    もの食う女も全編ただひたすら女がものを喰うのである。それだけでなんの

   説明もなくても、女のかわいさ、男の女にたいする愛情が読む者に伝わる。名 

   作とはこういうもんだ。言葉の説明やよけいな描写はかえってじゃまになる。た

   だものを喰う女と、その女を見つめる男、それだけでいいのだ。

    武田家につきあいがあった、おおくの作家や編集者が、武田百合子さんの事

   を書いているが、その文章の行間から必ず武田百合子の人間にたいする愛情

   があふれている。彼女に出会った男は武田百合子の人柄に魅了されてしまう

   のだ。

    言葉は手段ではない。言葉は精神である。百合子さんの作品を通じて彼女の

   精神を知ってほしい。彼女のファンは女性のほうが多いときいている。