ぼくが銭湯をすきな本当の理由 特別編 2
思春期の男が手始めに思いつく悪さは女だろう。かといって、買いに行くに
は勇気と金がない、渋谷あたりでナンパして、ということも考えたが、田舎育ち
で関西弁では嫌われるのではないかと、ちと気おくれがする。現に下宿の娘の
晴美ちゃんを、おまえとよんで、しかられてしまった。江戸の女は怖い。阿波藩
は徳川幕府比べて、あきらかにかくした。怒らせばとり潰しになるは必定、か
りそめにもうわついた心根でちかよってはあいならぬ。
さていかなる行動をおこすべきか、つらつら愚考してみるに確たる思案もうか
ばず、ひねもすしょざいなきままに、もんもんたる日々にあけくれる。
ある日レーニンの何をなすべきかを読みながら、玉電という極めて男性を連
想させる名の電車にゆられて、ふと目を窓外にやれば、なにやら卑猥な看
板、これだとひとり合点したのが用賀の駅。用賀いえば東条秀樹がすんでたと
ころ、まぁ、ああいう生真面目な官僚が国を殺めるのか、と思いつつ、目はあく
までも卑猥な看板をとらえてはなさない。
翌日、さっそくいくばくかのおあしをもってその劇場へ。キップを買うときこころ
なしか声が震えたのをおぼえている。われはおのこ、花も嵐もふみこえるのが
定め、決死の覚悟で座席にすわり、いまやおそしと聖なるものをご拝顔にあず
かりたく清く正しく心をしずめまちもうした。やがて音楽がなり、けばけばしいス
ポットライトがステイジを照らして、踊り子が東条、いや登場。なんと、阿波踊り
をおどりだしたではないか。ちがうちがう、ぼくは卑猥を、エロスを、いやらしさを
期待して、はるばる地の果て徳島からやって来たのに、阿波踊りは飽食してい
るのだ。トホホ づづく