独り言  5月10日 | はなのブログ

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  ぼくは映画少年だった。


  むかし、娯楽がすくなかったころ、映画は娯楽の王様だった。

  村むらに必ず映画館あったのだ。

  おかねを払ってなかに入れば非日常の夢の世界が出現するのだ。

  美男美女がスクリーンに現れ、笑や涙をながさしてくれる。

  ときには善悪のたたかいに手をにぎり、どきどきはらはら、そして安堵。

  ゴジラをはじめて観たとき、ぼくは腰をぬかした。

  とてもつくりものだとは、思えなかった。リアリズムの世界と信じた。

  銀座でゴジラが暴れているが、いつかはぼくらの村にもおそって来るのでは、と

 思った。

  映画ではじめて観た東京はモノクロで、まだ貧しかった。

  できるものなら、いつか東京に行きたいと思った。

  東京に行けば、美空ひばりや中村金之助にあえると、むねがおどった。

  映画から沢山の事をまなんだ。学校より学んだ。

  恋愛も映画から学んだ。

  若尾文子みたいないい女はぼくらの村にはいなかった。

  可能ならば、東京の女をおよめさんにしたいな、と中学生のぼくは願った。

  東京に行けば若尾文子がいっぱいる、と信じた。

  いまから思えば、いっぱいいる若尾文子なんて魅力ないのにね。

  少年探偵団に入りたかったので、明智小五郎に手紙を書こうとしたが、住所がわ

 からないのであきらめた。せめて、恰好だけもと、ハンチングをかぶり腰にまるめ

 たロープをぶらさげて、幻の悪党をさがして村を友達とさまよったが、卑怯にも悪

 党はあらわれなかった。

  あんなにぼくに夢をみさしてくれた映画。本当にありがとう。