やがて10分を過ぎてしまった。まだ帰ってこない。添乗員はしきりに携帯をかけ
ている。
お寺に連絡して、なんども放送してもらったらしいし、婦人が携帯をもってないの
で、家のほうに連絡をしたのだけれど、夫は、またか、と溜め息をくいたらしく、ほっ
といてバスを出発してください、というしまつ、どうも前科があるらしいのだ。
30分すぎてもまだ帰らない。
添乗員はマイクでみんなに状況を説明し、会社の判断もあり、これ以上待てない
ので出発する旨報告し50分遅れで出発。
しかし集団心理がよくわかった。それは一人がルールを破ると、他の人々に伝播
してしまうということだ。3分の1ほどのひとがバスからおりて、自由行動をしてしま
うのだ。ほとんどのひとはトイレだが、出発がきまってもかえらなかった男は、妻が
携帯でれんらくしたらしく、
「すいません。夫がトイレですので、すこしまってください」
と、添乗員にたのんでいたが、帰ってきた夫の手にはたくさんのおみあげの品があつた。
やっとバス出発。でもお寺の周辺は混雑してバスはのろのろ、牛の歩みでした。
乗客はへとへと、ほとんどが居眠りでしたが、退屈しのぎにと、綾小路きみまろの
ビデオをながしてくれましたが、その甲高いこえと自・加虐的なギヤグにへきへきとし、むしろ眠りに邪魔で、はらがたった。添乗員はサービスのつもりがぼくには迷惑千番いやはや地獄でした。
バスは50分遅れで松茂につき、家にかえったのは12時をすぎていた。やれやれ。
蛇足ですが、あの例ののりおくれ婦人は、京都に住む息子の家に行ってたそうです。