6時に入場したが、まだ夕暮れでライトアップにはまだ早い。
清水寺は工事中の建物もあったし、門などが新しいので、途中バスから見た東・
西本願寺の建物群の圧倒的な迫力におよぶべくもないが、山寺の景観はなるほ
ど人を魅するものがたしかにある。まぁ、信仰の地というよりも、観光の地を意識し
ているのだろうか。商魂ですな。
ぼくは夜桜よりも、大好きな小津安二郎監督の晩春の一場面を確認すべくまい
ったしだいだ。
50回は観た映画の場面をあたまで再現して、どの場所に原節子が立っていた
のか、なんどもいたり来たりして、ほぼ確信したが、ねんのため寺のはっぴを着た
青年に、このことを尋ねると、なんといぶかしげに肩をすぼめて、
「テレビや、写真撮影は、あのへんから撮ってます」
と、あらぬほうを指をさした。
あきまへん、この青年のあたまのなかには、天才小津安二郎はすんでないのだ。やんぬるかな。
もう見るところもないので、はやばやとバスに帰った。時間がまだたっぷりあり、ほかの乗客はまだ花見と買い物をたのしんでいる模様、花を見るより行きかう老若男女を観察しているほうがはるかにたのしい。そのうち一人二人帰ってきて、集合時間の7時30分になった。
がしかし、なにやら乗務員や運転手の様子がどうもへんだ。どうやらひとり帰ってこないらしい。それが例の婦人なのだ。車内の人々は、道に迷ったのだ、とか、いや時間を忘れたんだ、別の車に乗ったんだ、と喧しく騒然となってしまった。 続く