学生のころ北杜夫のどくとるマンボウシリーズをよく読んだ。
その中の「さびしい王様」こんなシーンが心に残った。
王様はひとりで森の中を歩いていた。そこへ女友達がやってくる。「どうしたの」「散歩してる。することもないし。ぼくはもっと賢くなりたいんだ」
「ほら、あそこに蟻がいるわ」
「ほんとだ。」
「蟻の列を追いかけてごらんなさい。どこへ行くか。」
「そんなことして何の意味があるんだい。」
「人はね、単純な作業をするとだんだん考えるようになるの。試してごらんなさい。」
人は考え事をしているとき、実はあまり考えていない。むしろ単純作業をしている時のほうがいろいろなことを考えるのかもしれない。