だいぶ昔だが、大阪にいたころ。友人と寿司を食べに行ったことがある。大阪駅近く、曽根崎警察の裏のほうにその店があった。
四階建てくらいのビル一つ全部がその寿司店で、ついたときはそのビルの入り口にお客が並んでいた。ビル一周半。だが、さすが繁盛店。そんなに待たずに中に入れた。
カウンターの向こうにマグロの半身が飾ってあった。材料の回転の速さが感じられた。好きな寿司を注文すると、一皿二巻が出てくる。一皿の価格は数百円で、安く、しかもおいしかった。椅子の後ろでは次の客が待っていて落ち着かない。
大阪は食い倒れの街という。おいしいものに人は群がる。普通のすし3個食べる人もいるが、それよりおいしい1個に手を出す人もいる。経済学でいうGDPとかGNPでは、1個は1個だ。金額の問題はあるが同じ価格のうまいまずいは測れない。金額に表れない部分は、私たちの評価にある。自分にとってうまいかまずいかはほかの人にはわからない。