精神の”潤い”を静かに発光させる人 | 鶴田真由応援ページ

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Domani 2000.10月号
美容ジャーナリスト:齋藤薫


 女優になりたいと思ったのは、いつ頃?という質問に、「面白くなってきたのはここ1,2年です」と答え、女優になったきっかけも、「アルバイトするような感覚。こんなにやるなんて全然思っていませんでした。大学を卒業するときに、就職をどうしようというのが、現実的な問題としてあって。そこでの選択肢のひとつとして、こういう道があっただけ」という答えは、生き馬の目を抜くような世界にあっては”淡泊すぎる”ように聞こえるかもしれない。

しかし、この人が演じる女性の”存在感”は、どんな役においてもかなり強烈だ。
ひとりの男性を一途に想うストイックな女性、道ならぬ恋に走る純粋な心をもつ女性・・・・・。
”控えめで生真面目”という役柄ほど、異様に重い存在感を放ってしまうのは、ひょっとするとこの人が天性でもっている存在感の強さが、抑えた演技ならばこそ出てきてしまうということだろうか。


「ここ1、2年で、仕事が面白くなってきたというのも、私なりに何かモノをつくるということが、どういうことなのかを、少しづつ体でわかってきたのかなぁという感じがあるからなんですよ。デビューしてからもう12年くらいたつんですが、なんでも10年というけれども、そういうことなのかも」

 言葉少なな人である。そして、なんでも冷静に、率直に答える人だ。それだけにどんなことでも言葉ひとつひとつに覚悟みたいなものを感じさせる。まったくもって”女優然”としていない代わりに、自分がしっかりとあって、しかも思慮深い、言うならば”大人”としての完成度を感じずにいられない。

 今年1月に放送されたドキュメンタリー番組『君は楽園を見たか!』では、パキスタンの寒村に滞在。電気も電話も何もない村での暮らしに何を思ったか?にも物事に対する独特のスタンスがハッキリと示されている。「たとえば朝起きて、まず乳を搾りに行くところからはじめないと、何も飲むものがないとか、ご飯をつくるときも、まず畑に採りに行かなきゃ何もない、だからゴミがひとつも出ないとか・・・・・そういうものになんの違和感もなく入っていかれた。ところが逆に、村を出てみてワッと思ったのは、朝ご飯に出てくるコーンフレークとか牛乳が、段ボール臭くて食べられないということだったんですよ。それにホテルに泊まったときに、現地のお金持ちの人たちが、パーティーをしていて、その様子を見てると、何か人間が持っている剥ぎ出しになった虚栄心みたいなものが、すごく見えちゃったり、そういうことに敏感になりましたね。行ったときのショックより、帰ってきたときのショックのほうが、むしろ大きかったかのしれない。でもね、何かが大きく変わったということは別にないんですよ。ただ東京に無いもの、というか無くなってしまったものがそこにあったから単純に楽になれたというのか、なんの違和感もなくそこに入っていける。たぶん自分のDNAの中にあった経験と言うことなんでしょうか」

 原点に戻った人間の暮らしにDNAでなつかしさを感じる人、行ったときより都会に帰ってきたときのほうに大きな違和感を感じる人・・・・・意外に思うかもしれないが、鶴田さんはそういう女性なのである。

 「たとえば自分が本当に人を好きになったら感情のままに動けるほう。でも、離れていても平気。基本的には、お互い外に向かって何か発信していて、内側でものすごくシンクロしているという感じが好きなので、物理的な意味でいつもいつも一緒にいなくても、わりと平気なのかもしれません。そもそも、人と人の関わりって気持ちがお互い動物的にわかるもの。別に恋人じゃなくても、自分は好きなのに、相手に嫌われているという関係はあまりないような気がするんですよ。人の気持ちは同時進行だって。だからあまり言葉とかは要らない」恋愛についても、あくまで”大人”である。
いや、たぶんこの人は魂のレベルが人より少し高いのだろう。
今年30歳。
だれでも漠然とした不安に苛まれる年齢である。
でもこの人のどこにもそういう不安定さを感じないのは、自分の立ち位置がハッキリと定まっている上に、精神的な成熟度が高いからなのかもしれない。
30歳にして12年のキャリアをもつ人は少なくはないが、早々と社会に出たことが、メリットもデメリットも含めて、すべてが身になっている人・・・・・ともかくそういう印象を持った。

「30代ってけっこう楽しみです。今まではたぶんなりふりかまわず走ってきただけ。でも今度はそれを仕事だけじゃなく、少し周りを見渡しながら、無駄なく自分のペースで走れるかなという・・・・・」

 同じことを、40代を目前にしていう女性が多い。
何かこの人は、人より10年早い、10年分”大人”であるという気がしてならない。それが独特なしっとり感を生んでいると解釈してもいいはずだ。

 そしてこの人は、印象に残った仕事の話をするとき、いつも同じ”面白い”という表現を使う。たとえばJRAやキリンビールなどのCM、そして今放映されているテレ朝の『つぐみへ・・・』というドラマ。
コマーシャルなのに考えて話し合って絵づくりができる、ドラマならみんなで一緒につくっているという実感がある・・・・・そういう仕事が、女優・鶴田真由を面白がらせる。
動かされるのではなく、つくりあげたという、ハッキリとした意志・・・・・。

ちなみに大学では”西洋美術史”を学んだ。
「両親がふたりとも美大を出ていて、そういう仕事をしているので。同じ話題で話ができるようになりたいという気持ちもあったのかもしれません。単純に環境なんでしょうね」
そのことと、クリエイティブな欲求を単純に結びつけることはできないが、この人が役柄の中に見せる”強烈な存在感”も、そうした資質が生み出すものなのかもしれない。

そして”ここ1、2年仕事が面白くなってきた”との言葉どおり、以前は美しい顔にただ見とれてしまうことが多かったのに、最近では完璧な美しさに影や迫力までをものぞかせるようになった。
もともと程よく力の抜けた演技が評判の女優さんだけれども、力のかけどころと抜きどころの絶妙さが、さらに私たちを惹きつけるようにもなった。
女優としてそういうレベルに達するのも、30歳は異例の早さ。
自らひっそりと”艶”を出すためには若すぎる年齢でありながら、この人の全身から紛れもない艶がほの見えるのも、精神的な早熟からくるものなのだろう。
こういう女性は2年後、5年後、予想もつかない高さへと達しているのかもしれない。
しかしまた、そういう才能を、わずかも外へアピールしようとしない。

たぶん、”艶”はそういうところにこそ宿るものなのである。