受験の裏で滑らなかった者たち | 東京医科歯科大学スキー部

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三男とエミネムの優雅な休日

 

 起床

 朝目覚め、知らない天井を見上げる。今日は医科歯科二次試験当日だと気づきX(旧Twitter)を検索するも医科歯科受験生の姿は見えない。昨年や一昨年は数名いたので頑張れと心の中でエールを送っていたが今年は実行されることはなかった。

 二日酔いの体に鞭を打ち起き上がろうとすると全身の筋肉が雄たけびを上げ、1度目は叶わなかった。スキーというものはこれほどに体幹の筋肉を使うものであったかと考えるとともに、力み過ぎている自分を恥じた。昨日の転倒による首の痛みもまああるだろう。それ以上に二日酔いを恥じるべきという声は私には聞こえない。これは勲章である。

 時計を見ると七時であった。私は早々に葬送されていたためオフのくせして早起きをする暴挙が可能となっていたのだ。LINEを見ると私が眠りこけた後の楽しそうな飲み会の画像を見つけて悔しい思いをする。普段酔わない人が酒を飲むと随分と面白い酔い方をするものである。いとおかし。

 同期に出発時刻を聞くと10時と答える。まだ時間に余裕があるみたいだ。同期は仲良く班目で寝ている。私は再び瞳を閉じた。

 

 出発

 別の部員はスパイファミリーを見に行ったらしい。逆張りで1名ハイキューを見たようだが多分そちらの方が面白そうだ。主観。後輩のエミネムをピックし大人気蕎麦屋に連絡を入れると開店が12:30だそう。

 車でも医科歯科受験の話は続く。医科歯科の物理が近年難化している様子を聞く。我々の代までは実に簡単な問題が多かったとされているので少し意外に感じた。とはいえ私は電磁気が大の苦手だったので物理は力学が30点、電磁気は5点ほどであった。非常に情けないが、受かればこちらのものである。今年の物理も難しいとなればもうそれは終わりの始まりなのではないかという話をしていた。

 兎にも角にも朝ご飯も食べていない体に空腹はきつい。このままでは無理だと悟り我々は別の蕎麦屋に向かうことにした。外は雪である。ちなみに白馬にはうまい蕎麦屋がたくさんある。一個目は休業日だった。話が変わってきた。二つ目に向かう。ギリ滑り込んだ。炬燵にいざなわれ、我々は席に着いた。

 

 

 1ターン目,利根川蕎麦店

 本日の朝昼食はこちら、利根川蕎麦店にやってきている。1ターン目は慎重にというモットーとは裏腹に私は迷わず天ぷら盛り蕎麦を頼む。今日のご飯は舞茸ご飯と知った瞬間それも注文されていた。当方舞茸には弱い。

 舞茸に関する(例えば天ぷらとか)料理が出てきたときに必ず披露するうんちくがある。舞茸の語源の話だ。舞茸は貴重で旨いキノコであることから発見すると舞って喜んだという話だ。エミネムからは「へぇ」と声が上がるが、F山N沼は幾度となく披露された豆知識にもう反応もない。彼らはご自由にどうぞと書かれたちゃんちゃんこに夢中であった。

 料理が来る。思わず「いいんすか?」と聞いてしまうような香ばしい舞茸ご飯、美しく盛られ光沢を放つ蕎麦、金糸雀色の衣をまとった天ぷら、これは垂涎不可避である。気づいたときにはこれらは消え失せていた。天にも昇る気分と舞茸の香りだけが残った。

 ちなみにおでん1個100円で置いてあったのでついつい5個食べた。会計の時に数を申告するようだ、白馬に悪人はいないので特に困りはしないのであろう。

 ちなみに食中の会話は専ら猫ミームであった。私は猫ミームにヤギとイヌが含まれていることに対して遺憾報を放ちまくっていた。日本が銃社会であればHappoHappoHappo~(発砲)がトレンド入りする危険性があった。各自この幸せをかみしめた方がいいじゃないの?used to be。

 

 

 昼寝という選択肢

 さて、時刻は12時半。まだ、まだ寝れます。ここで昼寝という選択肢をとることができるのが白馬である。白馬では時間の流れは非常に遅い。ヒーリングミュージックを流しながら文化、宗教、自死について考える。

 言わずもがな人間は文化的な生き物であり、集団知性による文化の蓄積によってこの地球を席巻している。これは他の生物にはない人間特異的なことであり、自死に関しても同様である。自然界では希死観念を生じさせるような本能を持つ血統は淘汰されるが、人間はその文化的蓄積によりその本能を生存に有利な方向へと作用させた。その希死観念を生じさせる文化的蓄積の一つが宗教であると考える。人間を除くと一般に生物には神を祈ったり天国のような存在にすがることはない。言い換えると何らかの心理的な「在り処」に縋るのは人間だけである。その在り処の一つが宗教である。

 「死」というのはどのような宗教とは切っても切り離すことができないテーマの一つであるが、「死」に対して深く向き合うのは他の生物でもできることである。ただ、他の生物は辛い・苦しいといったような感情(があるのかどうかはわからないが)に対して死という救済方法を知らないであろう。それを人間特異的たらしめたのはそれを何世代にもわたって継承し、考え、そこに解放・救済を見出したからであると考える。

 自死に関して「してはいけない」と一刀両断することは簡単である。しかしそれは同時に何万年にもわたるヒトの文化的蓄積の否定であり、不都合な産物に対して目を背けているに過ぎない。私は自死を「してはいけないもの/無くすべきもの」ではなく「減ると喜ばしいもの」として大観的に捉え、集団知性の変革を社会が働きかけるべきだと考えている。これには当然行政の介入が必要であり、いじめ・差別・貧困等枚挙に暇がないような社会動態を虱潰しに改善しなくてはいけない。これらは「自死はいけないことだ」で止められることではないからだ。しかしながら幸いなことに集団知性は、進化と異なり可塑性に富んでいることがインターネット・スマホ・AIの普及を見るに明らかである。

 と考えたところで14時。次の行動に。東京では1日1ターンしか行動できないのであるが、白馬に向かうとずっと俺のターンである。複数回の行動はお手の物である。

 

 

 2ターン目、Cafe greens

 次なる目的地はTHE NORTH FACE HAKUBA Cafe greensである。コーヒーを飲みに行ったところ手に持っていたのはホットチョコレートであった。くそ旨いのである。

 なんだかずっとだらけていたので思い出は少ない。THE NORTH FACEと言えば中高生が母親に買ってもらうリュックのイメージが強い。かくいう私もその口だ。しかしTHE NORTH FACEのスノーブーツを一度見てほしい。あれは傑作である。ふきー部に所属している人は雪山の普段靴がステータスの一部であるが、現状トップティアである。

 N沼が望遠鏡を見つける。建物から遠く望む八方尾根では黒菱ゲレンデが望めるが、そこでコブに苦しむスノーボーダーまでもを見ることができる。スノーボーダーはバーン中央で座り込むのをやめるとかっこいいと思います、などと言ってみる。

 望遠鏡で5メートルほど離れた部員の顔を覗く。変顔ゲームが開幕したところで次の行動が決定される。

 

 

 3ターン目、モンピジョン

 白馬を拠点として活動する団体でこの名を知らぬものは損している。いわずもがな知れたデカワンコがいるケーキ屋である。私はコカ・コーラとショートケーキを頼んだ。うまい。

 ここでは思い出話に花が咲いた。思い返せば私の大学生活はスキー部を中心に回っている。しかしここで語った思い出話と昨日の思い出話は外に出すのも野暮というものであろう。部員と私の心に刻んでおく。このままでは主将がO橋➤N沼➤F山という伝説の代(21年度入学)が爆誕してしまうので後輩に教えるムーブを大切にしていきたいとおもった。圧迫骨折してる場合じゃねーよ,,,

 とにかく大学生活も折り返し、頑張るぞ。

 

 医科歯科二次筆記が終わったことをX(旧Twitter)で知る。物理では原子が出題されたようだ。難化らしい。担当生徒には力学と電磁気を死ぬ気でやれ、ほかに出るとしたら多分原子と言っていたため動揺は少ない。入試において先生の研究分野を知ることは大事である。と、筆記終わりに書いてみる。

 大学生活1年目の歯学部の点数開示は伝説であったなあと振り返ったところでもういい時間。次のターンに移る。次のターンを辞退したエミネムは宿に送った。いい夢を見てほしい。

 

 

 4ターン目、ぽかぽかランド美麻

 一日の締めくくりは温泉である。この3人限りで温泉に行くのも多分今年度は最後かもしれない。明日からチーム運営の民宿に泊まるからだ。我々三男の温泉ムーブとしてはほぼ会話はなく、各自が各々のセットをこなすというのが通例であった。例えば私のセットは「体を洗う➤頭を洗う➤温泉につかる➤サウナ➤水風呂➤外気浴➤露天風呂につかる➤再度体を洗う」というものである。しかし今日は一味違った。会話があったのである。なんか色々話した。中高の部活のこと、日本の省庁のこと、スキー部の未来について、非常に濃厚な時間であった。

 風呂をあがると18:40、私の携帯の充電は切れている。冊子の良い部員の皆様はお気づきであろうが今日は東医体主将会議の日である。19時から。焦る私は大会担当にN沼の携帯から電話を掛けると完全に出先と言われてしまった、詰んだと思ったその時ポカラン出口に神器が置いてあった。神は存在したのである。

 「Hesta 24時間165円」

 ラブホテルのような書き方であるがこれはモバイルバッテリーの貸し出しであった。東京と白馬ではモバイルバッテリーのレンタルの物価すら違うのかとふと思う。これは借りるしかない。我々からは帰宅という選択肢は消え失せ、ほおずきソフトを食べるという選択肢が顔を覗かせていた。(-5日目 PKPKLAND参照)

 ほおずきソフトを食べ終わったころには充電は30%へと回復していた。帰りの車に乗る。数校が参加しておらずしばらく始まらなかった。主将会議を受け終わるころには宿についていた。

 

 

 

 ターンエンド、一日の終わり。

 宿につくと猥談にも花が咲く。話のはずみでバズり欲が芽生える。明日は面接かと考える。うちには高校中退1留年のエースがいる。受験生諸君は2次面接対策まで教えてもらうとよい。明日は頑張ってください。

 彼が隣でブログを書いている頃私は自死について書いていた。早いはずの白馬の夜は長かった。今は23:33、0時からはリバプールvsチェルシーだ。N沼はリバプールを応援しているそうだ。私は遠藤しか知らないが。。。

 つまり寝れるはずもなく夜は更けていく。起きたら毛根大復活していることを祈って今日は寝ます。

 

文責:主将と化した大橋(文字数4313)