先日、機会があって、覚せい剤の依存症の治療について
専門家のお話をうかがう機会がありました。
依存症の治療についての新たな試みの説明だったのですが、
その中で指摘された現状の抱える問題に
いくつか驚かされることがあったので記録します。
まず、現在覚せい剤の依存症の治療を行う病院は、
ほとんどないということ。
私がうかがった病院は、ほぼ専門的に常時40名ほどの
覚せい剤依存の入院患者を抱えているということでしたが、
この規模の治療施設は、ほぼ国内で唯一だということです。
現在、覚せい剤の使用については、当然、刑罰の対象に
なっているわけですが、取り締まり側には
「治療」を行うスキームがほとんどないということ。
それは、服役していてもほとんど同じで、
だから、覚せい剤の再犯率が高くなっている。
「罰は与える」が「治療」はしない、ということです。
(現在は、服役中に認知行動量穂などを使った
治療なども行われているようです*未確認)
そして、「福祉」が、その後押しをしている確立が高い、
ということ。つまり、「生活保護」を受けながら「覚せい剤」
を使用している人間が多いという現実があるということです。
この因果関係は、「生活保護」を受けている人に
「覚せい剤依存」の人が多いのか、
「覚せい剤依存」の結果正常な生活を営むことが
できなくなった結果「生活保護」を受けるに至っている
のかは、難しいところでしょうが、
流れから考えると後者の方かなと思います。
ただ、「覚せい剤の依存」のいかんに係らず、
多くの福祉事務所では「用件を満たせば」
生活保護を支給することになるようです。
これは、結局、依存から脱却させるための社会的
インフラがまったく整っていないということです。
取り締まり側、治療側、福祉・行政側の間の
連携がまったくなく、覚せい剤依存の人間は、
刑事的にしろ、治療的にしろ、一旦覚せい剤から
離脱するきっかけに至っても、結局はもとの
黙阿弥ということになってしまうケースが多いのだそうです。
そして、いま依存症の治療のひとつの手法として
行われている「認知行動療法」が、どうも
あまり適切ではないのではないかという指摘。
今回うかがった病院の医療チームの観点は、
依存は「思考」によるのではなく「反射」による
というところで、その観点から治療の実績を挙げています。
まだ、学界的にはあまり認められていないと
担当のお医者さんご本人はおっしゃっていましたが、
話をうかがうにつけ、きわめてリーゾナブル
なので、今後の治療実績を期待したいと思います。
ちなみに、当然ですが、この問題は「治療」だけでは
どうにもならないわけで、社会的な環境整備が
別途必要だということです。もちろん、取り締まりもそうですし、
社会復帰の仕組みもそうでしょう。
現在「覚せい剤」で服役している受刑者は
およそ1万5000人。実刑でこれだけの人数ですから、
背景にはその何十倍以上の依存者、使用者がいるということでしょう。
自助組織の「ダルク」というグループがありますが、
うかがったところによると、現在全国に50箇所以上の
支部(?)があるそうです。この広がりからしても
その裾野の広がりは、うかがえます。
薬物中毒が、社会の活力を奪っていくという
理屈がどの程度実証的なものかは知りませんが、
薬物が蔓延した社会が、社会のありようとして、
決してよい状態ではないことは想像に難くありません。
ノリピーの事件や押尾の事件で、「違法薬物」に対して
世間の関心は高まっているかもしれませんが、
本当の問題に迫る報道はなかなか見受けられないものです。

