※注意!!※
・これは素人が書いた「創作物」です。この手の事に興味のない方、苦手な方は読まない事をお勧めしておきます。いや、本音としては読んでほしいですけど…。
・モンスターハンターP2Gの公式設定をかなり無視しております。
・多数の中二病設定が使われております。



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登場人物紹介

NAME:タロ・ライド
HR:2
主な使用武器:ランス・ガンランス

小説モンスターハンター ~愛の物語~


三年前以前の記憶が無かったが、前回の話で自分の過去を「知った」。
ただ今、リオと同居中。


NAME:リオ・アズベル
HR:9
主な使用武器:大剣・ランス・ガンランス

小説モンスターハンター ~愛の物語~


三年前まではタロと愛し合っていた。三年前、ポッケ村の危機を救った英雄。
ただ今、タロと同居中。


NAME:アズ・ルードリア
HR:6
主な使用武器:太刀・片手剣

小説モンスターハンター ~愛の物語~


元大闘技場の門番兵。前回のタロの戦いに感動して「ハンター」に戻る決意をする。


NAME:ナルガ・ロウ・セトラ
HR:9
主な使用武器:ハンマー・太刀・狩猟笛

小説モンスターハンター ~愛の物語~


ややこしいけど名前は「ナルガ」。ロウはミドルネーム。
過去にちょっとあってファーストネームに「ナルガ」と付けている。…が、今回の本編には関係無し。
アズを追いかけてポッケ村にたどり着く。


34

アズは自分の、ミリアとの過去を話し終えると、ふぅっと一呼吸置く。
そして自分の目に貯まっていた涙を拭くと、目の前の二人に話しかけた。
「とまあ、そんな訳さ。…あいつが、ミリアが死んでからは…俺自身『ハンター』としてやっていく意味が無くなってしまった。その後、集会所で酒にやさぐれている所を、グスタが『門番兵』にならないかと…声をかけてくれたんだ。」
アズの話を黙って聞いていた二人は、アズの話を終えるのを確認すると同時にため息をつく。
二人ともに、アズの話に目にうっすらと涙を貯めていた。
「そんな事があったの…。」
リオがアズに相槌を打つも、しかしどう声をかけていいか解らずその後も言葉を続ける事が出来ない。

アズの経験した『過去』の重さが、過去の話をしている時のアズの表情から窺えた。

リオ自身も一度、「タロを失う」という経験をしているだけに、アズの心中が良く解る。
そしてロウも、アズの心中が痛いほどに伝わっていた。
「共感」というにはロウは「愛する者を失う」という経験はしていないが、アズを見てきたロウにとって、今のアズの心中の苦しさが理解できる。
「興味のある者」とは、それだけその者との感情の共有ができるからこその「興味」だ。
ロウもまた、話を聞いただけでもミリアを想うアズの心の傷の深さが解った。

「まあ…もう二年も前の話さ。ミリアの事は…俺自身、もう引きずっているつもりはないんだ。」
そう言って笑うアズだが、その笑顔は哀愁に満ちていた。
「今までは…ミリアの事を語る事なんてとてもできなかった。思い出すだけで…寂しくて、悲しくて…気が狂いそうになった。でも…時間が解決してくれたんだろうか、今は…こうしてミリアの事を語る事もできる。」
そこまで言うとアズは一呼吸置き、さらに話を続ける。
「だからなのかな。タロの戦いを外で聞いていた時、目に浮かんだんだ。自分が狩猟をしていた時の風景が。今まであの大闘技場の門番をしていても、まったくそんな事なかったのに。でもタロの時は思い出したんだ…ミリアと一緒に狩猟をしていた時の事を。」
アズはあの時の、タロの「モンスターハンター」の時の情景を思い出しながら語る。

「俺がミリアから教えてもらった『絶景』を…もう一度見たいと思わせる感動が、タロに送る観客達の『歓声』に籠っていた。だから…俺はタロに会いたいと思ってここまで来たんだ。」
ここまで語るとアズは手に持っていたフラヒヤビールをぐっと口の中に流し込む。
長く語って喉も枯れていたので、ビールが喉を通る感触が気持ち良かった。

「そうだったの…。タロならきっとあなたを歓迎すると思うわ。今ちょっと『訳あり』でね、タロは早急にHRを上げなきゃいけないの。だからあなたがタロの狩猟が見たいというなら手伝って上げて!」
リオがアズにそう言って微笑む。
そんなリオの笑顔に、
「そうか、そう言ってもらえると嬉しいよ。」
と、アズも微笑んだ。

アズのタロに「会いたい」という感情が伝わる。
これは「ハンター」ならではの特有の感情かもしれない。
しかしだからこそ、その想いはより正確に共感し合えるのだろう。



「…でもさ、『上手い人』の狩猟を見たいならリオでも良いじゃない。私はあなたの『狩猟センス』以上の人は知らないよ?」
ロウがそう言ってリオを指差す。
タロの「狩猟技術」を知らないロウは、リオの狩猟風景を思い出しながらそう言った。
「ロウ、そう言ってくれるのは嬉しいけど。私じゃタロには勝てないわ。あの人は…本当にすごいから。あなたも一度タロの狩猟を見てみると良いわよ。」
自分を褒めてくれるロウに、リオは照れ笑いしながらもそう答えた。

そんなリオの言葉に、ロウは驚いた。
リオは「国王の勅令」が来るほどのハンターだ。
今現在、この国ではリオ以上のハンターはいないだろう。
リオも「国王の勅令」を順守する以上、そのプライドと誇りを持っている。
なので今まで一度も自分を卑下した事はない。
そんなリオが「私じゃ勝てない」と言うのだ。
タロという男、一体どれほどのハンターだと言うのだろうか。

アズもまたタロの戦いに惹かれ、そしてリオもタロに勝てないと言う。
昨晩一緒に飲んだあの「男」を思い出すと、ロウはどうしても「リオの尻に敷かれるタロ」のイメージがある。

ロウもまたハンターだ。
そこまでこの二人に言わしめるその「男」。

俄然、ロウも「タロの狩猟」に興味が湧いた。



そこまで三人が話していると、集会所にギルドマネージャーが入ってきた。
リオ、ロウ、アズの三人が集会所の中央のテーブルで酒を飲んでいるのを確認すると、ギルドマネージャーはその三人に声をかける。

「リオちゃん!良かった、まだ居たのね~。」
そうリオに声をかけると、ギルドマネージャーは残りの二人にも視線を向けて軽く頭を下げた。
「マネージャー。どうしたんですか?」
リオがギルドマネージャーの方に向くと、マネージャーの後ろに一人の兵士が立っているのに気が付いた。
その兵士の存在に、リオは眉をひそめる。

リオが後ろの兵士に「そんな顔」をする事に気が付いたギルドマネージャーは苦笑した。
この子、本当に察しが良いわね…。
そんな風に思いながら、口を開いた。
「ちょっとリオちゃんと、そこのナルガさんにお話があるの~。あなた…横、座っても良いかしら?」
言葉尻でアズの方に向いてそう聞くと、視線のあったアズは、
「ええ、もちろん。どうぞ。」
と、横に座るように促した。
「ありがとう~。」
マネージャーはそう言って、ニコニコしながらアズの横に座る。
マネージャーが座るのを確認すると、リオがマネージャーに話しかけた。
「後ろにいる兵士さん…『宮仕え』ですよね。何か…あったんですか?」
そんなリオの言葉に、マネージャーが笑顔を消す。
「リオちゃん、さすがね。そう、ちょっと問題が起こったのよ。それでリオちゃんとナルガさんにお願いがあってね~。」
そう言うとマネージャーはロウの方を向いた。
ロウとマネージャーは視線が合うと、ロウに向かってマネージャーが口を開いた。
「あなたが『ナルガ・ロウ・セトラ』さんね。噂は聞いてるわ。リオちゃんの最高のパートナーとして、国王の勅令も何度もこなした『漆黒のハンマー使い』。私はここの集会所のギルドマネージャーをしているアネーシャというの。以後よろしくね。」
アネーシャが挨拶すると、ロウも口を開く。
「あなたがアネーシャさんなんだ。アルトのおっさん、よくその名前を出してたから知ってるよ!よろしく!」
そう言ってニコニコと笑うロウ。
そんなロウの言葉にアネーシャはピクッと体を反応させた。
「あら…アルト隊長、私の事なんて言ってたのかしら…?ロウちゃん、ちょっと詳しく聞かせてくれる?」
うっすらと笑顔を浮かべると、アネーシャはロウに聞く。
そのアネーシャの笑顔と、急に呼び名が「ロウちゃん」という馴れ馴れしい口調に変化したことに、ロウは一瞬ゾッとした。
なんか…久しぶりに人間から『圧力』を感じたな…。
そんな風に思いながらも、ちょっと面白そうと思ってアルトの過去話でも…と思っていると、隣で話を聞いていたリオが慌ててアネーシャに声をかけた。
「と、所でマネージャー!そのお願いってなんですか?」
隣で見ていたリオも、アネーシャの只ならぬ圧力に気付いたのか、アルトの身に危険を感じたリオが話しかける。

そんなリオの言葉にロウとアネーシャは一瞬顔をしかめたが、アネーシャはリオの方に向いて口を開いた。

「うん。実はね…私の口から言うのも変な話なんだけど、また『国王の勅令』を受けてほしくてね~。」


意外な人物からの「国王の勅令」に、リオとロウは目を合わせた。


35

リオ、ロウ、アネーシャのやりとりを聞いていたアズは、ただただ驚愕しながらその話を聞いていた。
とにかくこの三人の話に気後れする…そんな内容だった。

この三人は…一体なんだと言うのだ?
リオは解る。
あの「ポッケの英雄」だ、国王の勅令を受けるのも納得なのだが…。
ロウも…またそんなにすごいハンターだったのか。
リオと共に国王直々の依頼をこなすハンター。
さらには国王直属部隊の隊長、アルトを知っている。
いや、知っている所か「アルトのおっさん」と慣れ慣れしく呼んでいる。

アルト隊長と言えば我が国における最高にして最強の兵士だ。
伝説も数多く残している。
ハンターという一面においても片手剣と双剣、大剣を自在に使いこなし、「この者を以って切れぬ化物は無し」と言われた人物だ。
こんな辺境の地の集会所のギルドマネージャーも、アルト隊長の事を知っている。
いやアルト隊長の口からその名前が良く出ると言っていた。
「知り合い」…というには余所余所しいのか。

老兵というにはまだ若い、そんな「生きる伝説」の人物の名前をホイホイと挙げるこの三人は…一体何者だと言うのか…。

唖然とした顔でこの三人の話を聞いていたアズにアネーシャが気が付いた。
「挨拶が遅れてごめんなさい~。私はここのギルドマネージャーのアネーシャと言うの。あなたはこの二人のお知り合いかしら?よろしくね~。」
アネーシャがアズに声をかける。
「二人というか…ロウの方とだけどね。リオとは今日初めて会ったんだ。俺はアズ・ルードリア。この二人のようなすご腕ハンターではないが…よろしく。」
話の内容に押されたまま、自分が場違いな気がするこの雰囲気の中でアズが言う。
元々しっかりと「自我」に意識の持てるアズだったが、さすがにこの三人の前ではそんな「自我」も霞む。
少し浮足立った感に、アズは自分の居場所の居辛さを感じていた。

「それで、アネーシャさん。国王の勅令って何?」
ロウがアネーシャに向かって聞いた。
ロウの語りかけにアネーシャは二人を交互に見ると、
「二人は『塔の噂』の事は知ってるかしら?」
と、唐突に聞く。
そんなアネーシャの言葉に、リオが眉を寄せた。
「塔…?」
ロウは聞いたことが無いと言うように首を傾げている。
「塔って…もしかして…『古塔』の事…ですか?」
リオがそうアネーシャに訪ねた。
「リオちゃんは…もう解ったみたいね…。でもさすがにここまではまだ『噂』は来てない…か。」
リオの言葉に、アネーシャはそう呟いた。そしてそのまま話を続ける。
「実は先日から、『奇妙な噂』が流れ出したの。リオちゃんが言ったその『古塔』。そこの麓にある村に住む一人が…その『古塔』で『神』を見た…というの。」
そんなアネーシャの言葉に、リオは目を見開いた。
「まさか…もう。」
リオの顔が驚愕の顔に変わるのを見たロウも、その『噂』が只事ではないと感じる。
普段はどんな依頼でも動じないリオが慌ててる…。
ロウはアネーシャの言葉に耳を傾けた。
「いや…まだ解らないわ。まだ…『災い』が『起きた』という報告は聞いてないの。ただ今回、それに関係するような事態が起こってね。」
そこまで話すと、アネーシャは目の前にいる二人の顔を見た。

「実は…。」
そこまで話すと、急に後ろから声がした。

「そこから先は、俺が話そう。」
急に聞こえてきた声の方向に顔を向けると、アズは驚きのあまり立ちあがった。
「ア…アルト隊長…!!」
アズは驚きのあまりその人物に向かって思わず声を出してしまった。

そこに立っていたのは、先ほどまでアネーシャと洞窟で話していたアルトだった。

「何よ~。帰ったんじゃなかったの~。」
アネーシャはアルトに顔を向けると、いつもの口調でそう声をかける。
「いや、やはり国王の勅令は俺自身が頼まないといかんと思ってな…。ここに寄らせてもらったよ。」
アルトはそう言うとアネーシャに微笑む。
「なんでアルトのおっさんまでここにいるのさ!?」
ロウもまたアルトの登場に驚いていた。
「それはこっちの台詞だ、ロウ。なんでお前までこんな辺境の地にいるのだ。それと『おっさん』は止めてくれ。」
そう言うとアルトはロウに苦笑する。
この娘は本当に「遠慮」がないな…。
そう思うアルトだったが、自分の今の立場に「遠慮」をしないロウに、アルトは少し嬉しそうな顔をした。
「アルト隊長、お久しぶりです。」
リオはアルトににこやかに挨拶する。
「リオ、久しぶりだな。今回も…すまんが貴殿に頼りに来てしまったよ。」
リオの笑顔に、アルトも笑顔で返す。


アズが驚いた顔で呆然と突っ立っていると、今度は別の方からまた声がした。

「ただいまー。」
アルトのさらに後ろから、一人の「男」の声がする。
「タロだ!お帰りー。」
ロウがアルトのさらに後ろの「男」に声をかけた。
「…?どうしたんだい?こんなに人が集まって…。うわっアルト隊長!」
アルトの後ろにいた男、タロがこの面子にアルト隊長が居る事に驚いた。


タロ…!?
アズはアルトの向こう側にいる、一人の男に目を向けた。
そこには、いつか大闘技場の門の前で見た、一見華奢な男。
しかしずっと「会ってみたい」と思っていた男。


アルトがこの場にいる事に驚いているタロの顔を見たアズは、さらに驚く。


アズは突っ立ったまま、この光景をゆっくりと、そして呆然と眺めた。


目の前に「ポッケの英雄」とそのパートナー。

その奥に「国王直属部隊隊長」。

そしてさらにその奥に…あの、「タロ」。



アズはもはや、どれに驚けば良いのか解らなかった。


36

集会所に集まっている、とある一団。
男女6人が一つのテーブルに座っているこの光景。
知らぬ者が見れば、狩猟を終えてその成功に酒を浴びる団体とでも映るだろう。
しかし知る者が見れば、こんな辺境の集会所に一体何があったのかと驚いたかもしれない。

そんな6人が一堂にそのテーブルに座っている。
いや、そんな中一人場違いと浮足立つ男、アズがいた。
この面子の中に自分が居る事に、改めて違和感を感じざるを得なかった。

アズとしては先ほど帰ってきたタロと話したかったが、とにかくアルト隊長もいると言う事で挨拶もそのままに、今はアルト隊長の話を聞くことにした。

アルト、タロがそのテーブルに着くと、一同が誰の声に耳を傾けるべきか窺うように静まり返る。

そんな静寂を破ったのはもちろんと言うべきか、アルトだった。
「今日私がここにきたのは、先ほどアネーシャが君たち二人に説明しようとしていた件で、君達に依頼を頼みたかったからだ。」
アルトはそう言うと、リオとロウを見る。
「率直に言おう。先日、古龍観測局より二頭の『古龍』が動き出したという報告が入った。一頭は上位クラスのクシャル・ダオラ。もう一頭はG級のテオ・テスカトル。クシャルは雪山にて、テオは火山にて目撃されている。」
アルトがそう言うと、それを聞いていたリオが反応した。
「二頭同時…ですか。」
リオもまた、「同調の説」を知る者だ。二頭が同時に動き出すという異常性に気が付いた。
「ああ、そうだ。リオなら解るだろう、この事態の意味を。」
アルトがそう言うと、リオは黙って頷く。
「まあでも、まだその『関連性』は確認取れてないからね、リオちゃん。まだ…慌てる事は無いから。」
アルトとリオのやり取りを見ていたアネーシャがリオに言う。
タロが居る手前、この事態が「祖龍」に関係している事だとはあまり言いたくはない。
とにかくまだ「慌てる」かどうか判断できないのだ。
まだ、タロにはいつものペースでHR上げをしてほしい。

アルトもここにタロが居ると改めて自覚すると、少し話題の主旨を変える。
先ほどのアネーシャとの会話を思い出したからだ。

「まあそこでだ。リオには今回、この火山のテオ・テスカトルの討伐を依頼したい…。
というには、俺は国王よりこの手の命令指揮の任を全て一任されているからな。俺の依頼は全て『国王の勅令』という扱いになってしまうが…。」
王政という専制君主制の政治形態において、「国王」の命令は絶対だ。
国王が「死ね」と言えば、死ぬしかない。
国王の勅令とはこの国に住む者にとっては最高の栄誉でもあるが、絶対に順守しなければならない、そんな「圧力」もかかる。
しかも「モンスター」絡みで来る「国王の勅令」は、大概「国」という枠で「害」のあるクラスのものばかりだ。
一筋縄では行かない。
このプレッシャーに打ち勝ち、さらに「結果」を出せるハンターはこの国でも今まだ数えるほどしかいなかった。

「解りました。テオの件、謹んでお受けいたしますわ、アルト隊長。」
リオはそう言うとアルトに笑顔で返答する。

そんなリオを見ていたアズは、改めてリオの「凄さ」を思い知った。
おいおい…相手はG級のテオだぞ…?
笑顔で…なんの躊躇いもなく笑顔で返事するとか…。

顔には出さないが、その勅令の内容とリオの態度に「身震い」するアズがいる。

「リオが行くなら、私もついて行くよ!!テオか~久しぶりだね。」
アルトの依頼に、ロウもそう発言した。

アズはもう、この話の流れに自分の経験が付いていけてないと気が付いた。
もはや別次元の、英雄を語る絵本の話の世界だ。
いつしか、グスタの「勇者」の話で、絵本の世界と自分で評した事があったが、それが正に今目の前で行われている。

ただ呆然と、その会話をする者達を見ているしかなかった。

「いや、ロウ。今回はお前にも別で依頼を頼みたいのだ。」
ロウの今の言葉に、アルトが反応する。
「え?もしかして上位のクシャルの方?でも上位クラスなら相手できるハンターなんてごろごろいるじゃん。」
ロウが顔をしかめながらアルトにそう言った。
アルトはそんなロウに苦笑する。
普通なら「楽」な方を喜ぶものだが…。
「まあ聞け。今回のクシャル・ダオラなんだがな。確認された報告を見る限り、少し『変』なんだ。」
アルトがロウにそう言うと、ロウは首を傾げた。
「変…ってどういうことさ?」
そんな二人の会話に、アネーシャが会話に割り込んできた。
「そのクシャルね、体全体が『錆びてる』のよ。」
「錆びてる…?クシャルが?」
ロウがアネーシャの言葉に、さらに首を傾げる。
「私も初めて聞いた事例なんだけどね~。ロウちゃん、クシャル・ダオラって『脱皮』するって知ってる?」
アネーシャの言葉にロウが驚く。
「脱皮!?そんな事するの?…ああ!!そうか、雪山の頂上にあるアレか!」
ロウがあっと何かに気が付いた。
「そう言えば今日もピッケルで叩いてきたよ。クシャルの脱皮した抜けがら。」
ついさっきまで雪山でクエストをこなしていたタロが、笑いながらそう呟いた。
そんなタロの発言にリオが反応する。
「どおりで遅いと思ったら…。」
タロを見ながら、先ほどのアネーシャと同じような「圧力」のある笑顔で呟いた。
そんなリオの「圧力」にタロはビクッとすると、すぐさま口を噤む。
「そう、その『脱皮』なんだけどね。今回現れたクシャル・ダオラは、おそらくその脱皮寸前のものだと思うの。」
アネーシャがリオとタロのやりとりを横目に、笑いながら話を続ける。
「『脱皮』をするという事。それは表皮を新しく取り換え、さらにその硬度が上がる事を意味する。その言葉の通り、『一皮むける』と言うことね。おそらく…私達人間の目線で言えば、『上位』から『G級』に上がる寸前のもの、と言えば解りやすいかしら。」
アネーシャがそこまで言うと、ロウが少し嬉しそうな顔をする。
「つまり…『強い』と言う事?」
ロウの呟く言葉に「期待」がこもるように、少し語尾のトーンが上がる。
「G級…と言う程ではないでしょうけどね。でも、この時期のクシャルはとてもナイーブでその気性もいつも以上に荒いわ。『いつもの』クシャルだと思っていると…案外痛い目に会うかもね。」
ロウのそんな「期待」の眼差しに、アネーシャはフフッと笑いながらそう答えた。
「良いよ!解った。じゃあ私はクシャルの討伐を引き受けるよ!場所は雪山で良いのかな?」
そう言うとロウはアルトを見る。
そんなロウの視線にアルトは、
「いや、どうにもそのクシャルなんだが、『街』の方に動いているんだ。ロウには『街』の方に行ってもらいたい。」
と、答えた。
「『街』って、どこの『街』さ?」
ロウがアルトにさらに聞くと、アルトはその街の名前を告げる。

そんな「街」の名前に、アズははっとした。

その「街」は…俺と、ミリアが住んでた「街」じゃないか…。
アズは思わずその「街」の情景を思い出す。

二年前…ミリアを葬った後、「門番兵」としてその「街」を出てからは一度も帰っていない。
ミリアの思い出が詰まったその家に、アズはずっと帰れなかった。
思い出すのが辛すぎて。

まだ、おそらくそのままの形で残っているだろう、あの「家」。



そして、何よりその「街」にはミリアの「墓」がある。



アズはその「街」の名前を聞いて、いたたまれない気持ちに襲われた。
ミリアとの思い出の場所。


アズは無意識だった。
後になって「身の程をわきまえ」て、恥ずかしくなる事も普段のアズなら想像ついただろう。
でも、その時アズはミリアとの「思い出」で、頭が一杯だった。

無意識で言っていた。


「アルト隊長。ロウ。俺も…そのクエストに連れてってくれないか!?」


突然のPT志願者に、その場にいる一同が目を合わせた。



集会所編12に続く