※注意!!※
・これは俺の完全な自己満足作品です。本当に暇でまあ他にやることないしな…という方だけ読んでいただければーーーー。
・それとかなり話の展開がベタベタしてきました。そんな話が大丈夫な人だけ読んでみると良いかもしれません。
・厨二設定が多数含まれております
~~~~~~~~
~登場人物紹介~
NAME:タロ
HR:2
主な使用武器:ランス、ガンス
補足:三年前以前の記憶がない。
NAME:リオ
HR:9
主な使用武器:大剣、ランス、ガンス
補足:三年前以前のタロを知る者。村の危機を一度救っている村の英雄。
14
頭が痛い。それもかなり。
この痛みは最近味わった痛みだ。
夢の中から戻ってきてまず気がついたのはまたしても重く鈍い、ひどい頭の痛みだった。
「あぁ…昨日は…飲み過ぎたな…。」
少し声に出して後悔してみた。
また…後悔してみた訳か…。
やはりこの瞬間は思考が止まる。
今の状況を把握しようと目を開けてみると、そこは見慣れた天井だった。
自分の部屋。前と一緒だ。
前と一緒…鈍い痛みに耐えながらもタロは昨日の事を思い出そうとした。
昨日は…そうだ、リオとキッチンで飯を食べて…その後…酒を飲みながら『モンスターハンター』の話をして…。
それから…。
…。
ダメだ。そこから先を思い出す事ができない。
フニュ。
思い出す事ができない…!!
フニュ。
今回は思い出さないといけない気がする。
フニュフニュ。
いや…なんか…思いださないと…死ぬかもしれない…!!
なんで俺の隣でリオが寝てるんだ…!!
タロがさっきから右手に柔らかい感触がすると思って掴んでいたのはリオの尻だった。
タロはその右手を静かに離すと、リオを起こさないようにベッドから起きる。
物音を立てないように、タロは隣のアイルーキッチンに向かった。
タロがキッチンに入ると足元で伸びをしていたシラタキが声をかけてきた。
「ご主人、おはようニャ!昨日もご主人すごい酔っぱらってたニャ!最近どうしたニャ?」
シラタキが朝からすこぶる元気な声でタロに話しかける。
そんなシラタキの大声がタロの頭にガンガンと激痛を与えた。
「うお…。もう少し声のトーンを…シラタキ、すまんが水を一杯持ってきてくれないか…。」
そう言ってタロは椅子に座ると、テーブルに項垂れ少しでも頭が楽な位置を探す。
この痛みは前回以上だな…。
「ご主人持ってきたニャ。大丈夫かニャ?」
シラタキが心配そうな顔で水を渡す。
タロは水を受け取り一気に飲み干すと、またテーブルに寄り掛かる。
「センキュー…なあシラタキ…。昨日の俺、どんな感じだった…?」
シラタキに聞いた所で大した事も聞けないだろうとは思っていたが、昨日の事をまるで覚えてないタロにとってはどんな事でも良いから知りたかった。
タロにそう聞かれてシラタキはうーん…と少し考える素振りを見せると、
「そうニャ!ご主人、リオに抱きついていたニャ!仲が良くて良い事ニャ!」
と、昨日の事を思い出して嬉しそうに話す。
その一言を聞いたタロはガバッと起き上がると自室の方を振り向く。
そこでまだ寝ているリオを思い出すと無言で立ち上がった。
「シラタキ、すまんがちょっと農場の方に行ってくるわ。」
タロはそうシラタキに言い残すと足早にキッチンから出て行った。
そんな主人を今日の仕込みをしながら見ていたガルが、横でこんがり肉を焼いていたアシガルに話しかける。
「ご主人、一体どうしたニャ。こんな時間から農場に行くなんて珍しいニャ。」
「おそらく…ご主人は前と同じように記憶を飛ばしたニャ。…逃げたんじゃないかニャ。」
横で一生懸命肉を焼いているアシガルがガルの問いかけに答える。
「なんで逃げるニャ。ご主人とリオは仲良い感じだったニャ。逃げる事なんてないニャ。」
ガルが首を傾げながらアシガルに聞くと、
「ご主人が覚えてないのが問題ニャ。…人間って面倒臭い生き物ニャ。僕たちみたいにもっとこう素直に生きればいいニャ…はああ!!」
最後の掛け声と共にアシガルは焼いていた肉を天にかざす。
「どうニャ?今度は良い感じニャ!」
どうだと言わんばかりのアシガルの顔を横目にガルが天にかざされた肉を見る。
「素直なのは良いけど…それ生焼けニャ。」
ガルが肉の匂いを嗅ぎながらダメだしした。
「にゃああああーーー!!またご主人に怒られるニャーーーー!!」
そう叫ぶと、アシガルはがっくりと肩を落とした。
15
今日も良い天気だな…。
農場にある釣り場で糸を垂らしながら、タロは水面に映り込む太陽を少し眩しそうに眺めている。
シラタキの衝撃の一言で思わず逃げてきてしまったが、こんな時間に農場に来るのも悪くないなとタロは思った。
釣り場から見える雪山が太陽に照らされ、キラキラと輝いている。
いつも農場を回る時間では隣の丘の影に隠れる水面が、今は太陽の光を反射している。
いつもとは違う、優しい風が吹いている。
川の音が心地良く定期的なリズムを刻む。
そんな穏やかな時間の中、タロは昨日のリオとの会話を思い出していた。
「モンスターハンター」
G級のモンスター。
リオレウス。
ティガレックス。
ナルガクルガ。
そして…ラージャン。
過去に戦い、そしてすべて狩猟したモンスター達だが、それを一日で…手持ちのアイテムを変えることも出来ずに狩り切らなければならない…。
そう思うと、タロは大闘技場で自分がこの4匹のモンスター達と戦う場面を想像する。
ズキ…。
例の頭の疼きがやってきた。
そう、これだ。
昨日から…ネコートさんから渡された依頼書を見てから、自分が闘技場で戦う場面を想像する度に頭が疼つく。
つまりそれは…過去に俺はこのクエストに挑んだ事がある…という事。
俺の知らない過去が、このクエストに反応しているのは確かだ。
このクエストをこなせば…何か思い出せるだろうか。
いや、思い出さなければ行けないのかもしれない。
リオが「ちょっとした依頼」をこなしてここに帰って来た。
そのタイミングで村長とネコートさんが俺にあのクエストを持ってきた。
そしてそのクエストを…俺は知っている…。
何かが動きだしていて、俺は何かを求められている。
しかもその「求められている」モノは俺の知らない…過去の自分。
俺の知らない…「過去の自分」。
思い出せるだろうか。
あの二人と一匹の期待に応えられるだろうか。
そう思うと嫌な汗が出てくる。
自然と釣り竿を持つタロの手が震える。
昨日から緊張していた理由はこれだ。
俺は…決してモンスター達に緊張しているんじゃない。
村長とネコートさん、リオが知っている「過去の自分」の期待に、「今の俺」が応えられるかどうかだ。
思い出せない以上、「過去の自分」は今の俺にとっては「俺」ではない。
ここに来て、タロは初めて「過去の自分」を恨めしく思った。
そんな自分の知らない「自分」を周りから重ねられることが思いのほか苦しいという事にタロは今更ながら気づく。
そして思いだそうとすればあの「疼き」だ。たまったもんじゃないぜ…。
「過去の自分」はそんなにすごいヤツだったとでも言うのか。
どんな実績を残してるのか知らないが、今の俺にそんなヤツと同じモノを求められても困る。
そう思い少し自虐的にタロは笑うと、
「なんにしても…まずは『モンスターハンター』をこなす事だな…。」
と、一人呟く。
どうやらタロの思いもしない所から「ライバル」が現れたようだ。
「そいつがこなしたのなら、俺もやってやるさ…。」
精一杯の強がりを声に出してみる。
根拠のない強がりだとは解っていたが、それでも今出来ることを精一杯やるしかないとタロは前向きに考えることにした。
これ以上は考えても無駄だと思ったタロは、いつまでたっても反応しない釣り竿を引き上げる。
釣り針の先にあった餌は、いつの間にか無くなっていた。
16
釣り場を後にしたタロは、次に農場の中央にある畑で種まきをした。
植えている種は「怪力の種」。狩猟ついでに持ってきたモンスターの糞をばらまくと種を撒いてよく混ぜ合わせた。
モンスターの糞を混ぜると作物はよく育つ。
そしてタロはその作業を終えると畑の周りにある雑草を抜き始めた。
「沢山実れよ~。そして全部売ってやるぜ~。」
そんな独り言をつぶやきながら、丁寧に草を抜いて行く。
考え事をしているとどうにもネガティブになると思ったタロは草むしりに集中することにした。
考えても仕方のないことだ。
今、やれる事をやれば良い。
そう思うと少し気持ちが軽くなったタロは、鼻歌交じりに目の前にある草を抜いて行く。
「お早う、タロ。」
「ほぎゃああーー!!!」
雑草抜きに集中していたタロの背後から突然声がかかり、タロは思わず悲鳴を上げた。
びっくりして後ろを振り向くと、そこにはリオがいる。
「お、お早う…。」
リオの顔を見て、昨日の事を覚えていない事とシラタキの一言を思い出したタロは顔を真っ青にしながらそう答えた。
「きょ、今日も良い天気ですね…。」
タロは何を言っていいか解らないまま口を開く。
そんなタロを見て、リオは片方の眉を吊り上げるとチョコンとタロの隣に腰を下ろす。
そしてそのままタロと同じように草をむしり始めた。
そんなリオの行動にタロは動揺しながらも、リオと同じように目の前にある雑草を抜き始めた。
「タロ…昨日の事、覚えてないでしょ?」
おもむろにリオが話し始めたので、タロは思わずビクッとする。
そしてその質問にどう答えて良いか解らず、タロが言葉に詰まっていると、
「昨日…私があなたの過去を話し始めたら、急にあなたが頭を抱え出したの。」
と、目の前の草を抜く手を休めずリオが語り出した。
「なんか苦しそうで…その後、すごい急ピッチでお酒を飲み始めて…。そう、何かから逃げるように次々とお酒を飲み干して行って。確か集会所で飲んだ時もそんな感じだったわ。昔のタロはそんな飲み方は絶対やらなかった。」
そこまで言うと、リオは草を抜く手を止めて、
「やっぱり…昔の事を思い出すのが辛いの?」
と、タロの方を向いた。
なるほどな…。
タロはリオの言葉で、自分がどのように記憶を飛ばしたのか理解した。
リオの昔話で、あの「疼き」が出たのか。
その「疼き」から逃れようとして酒を飲みまくった訳だ。記憶を飛ばす程に。
いや…記憶を飛ばす為に。
疼きの原因を頭の中に残さないために、防衛本能でも働いたか…。
言葉を待っているリオに対してタロが口を開いた。
「どうにもな…昔の事を思い出そうとすると頭の中が変になりそうなんだよ。自分でも思い出したい、自分がどんな人間だったか知りたいと願ってはいるんだけど、どうにも苦しくてな…。」
そこまで言うとタロは口を噤んだ。
自分が弱音を吐いていることに気づいて、急に恥ずかしくなったからだ。
「まあでもいずれ思い出すさ。慌てることもないんだろう?過去の自分がどんなハンターだったかは知らないけど、それに見合う強さがあれば誰も文句は言わないだろ。」
そうタロは言うとリオの方に振り向く。
リオはタロと目が合うと、
「まあ、タロはタロだしね。」
と、微笑んだ。
タロはそんなリオの言葉に少しホッとした。
リオは「過去」も「今」も俺を「タロ」として見ている。
過去にリオと何かがあったとして、過去の俺を求められても俺はどうしようもない。
思い出せればそれに越したことはないが、思い出せなかったらリオは「今の俺」をどう見るのだろう。
「過去の俺」と比べられて…。
そう思うと急に惨めな気分になってきたのでタロは考えるのを止めた。
とにかく、今リオは俺の事を「タロ」として見ている。
今はとりあえずそれだけで良い。
過去の自分を「思い出さない」と決まっているなら、ネコートさんの依頼も村長のお願いも聞く義理なんてなかったんだろうにな。
フとそんな事をタロは思ったが、それはそれであまりにも「今の自分」が格好悪く思えたのですぐにそんな考えを頭から消した。
今は…過去の自分を取り戻す為に全力でやれば良い。
本当にそれだけのことだ。
タロは再び目の前にある草を抜きはじめると、
視線を地面に向けたままリオに言う。
「明日、ネコートさんの依頼をこなしに…ちょっと行ってくるわ。」
それを聞いたリオも視線を目の前の雑草から離さずに答える。
「うん。がんばってね。」
夕方。
その畑の周りの雑草は綺麗に取り除かれていた。
17
次の日。
自室の扉を開けると、まずタロの視界に飛び込んできたのは太陽の光だった。
あまりにも眩しく、思わず目を細める。
ゆっくりと目を開けて空を見ると、そこは雲一つない、まさに「快晴」だった。
「絶好の狩り日和じゃないか。なあカク。」
脚元でタロと同じように目を細めていたカクも、タロの一言に頷く。
「絶好の狩り日和ニャ!旦那さん、今日は僕がんばるニャ!」
そう言ってカクと呼ばれたオトモアイルーが大きく手を振る。
そんなやる気一杯の我がオトモを見てタロは微笑んだ。
どんなクエストだろうとコイツはいつもやる気満々だ。
タロはそんなカクを気に入っている。
「さて、行こうか。」
タロがそう言うと、カクは頷いて大マカライトの祭壇に向かって歩きはじめた。
とにかく、今自分が出来る事をやろう。
そう心に唱えるとタロもカクの後を追うように歩きだす。
左手に集会所を見つつ坂を下ると、大マカライトの祭壇がある。
いつものように、そこにはネコートと村長がいた。
そして今日はさらにそこにリオも立っていた。
「お早うございます。」
タロが一人と一匹に挨拶をする。
「お早う。来たか。まさかこんなに早く挑戦するとは思ってもみなかったわ。」
ネコートがタロの顔を見るなりそう言って笑った。
「まあこういう事は勢いが大事かなと思いましてね。」
そう言ってタロもつられて笑う。
「ふむ。まだ別に急がなくてもいいのだぞ?欲しい鎧や素材集めをしてからでも。全然な。」
タロの顔を見てその腹のくくり方を悟ったネコートが、それでもわざとらしく聞いてきた。
「いや、特にはありませんよ。後は…やるだけです。」
タロはそんなネコートのわざとらしい質問にも笑顔で答える。
「ふむ。あっぱれな事だ。」
タロの覚悟が決まってる事を改めて確認すると、ネコートはフフと笑って目を細めた。
「ではこれを。」
そう言ってタロは自分の名前の書かれた依頼書をネコートに渡す。
ネコートはその依頼書を受け取ると、ギルドの正式マークが入った判子の部分を半分に切り取り、タロに差し出す。
「ではこれで『モンスターハンター』の契約完了だ。タロや…必ず、生きて帰ってこいよ。」
そう言ってネコートは依頼書の半紙をタロに渡した。
その半紙を受け取ったタロも、
「もちろんですよ。これは『序章』なんでしょう?こんな所じゃくたばりませんよ。」
と、笑いながら言う。
「タロや。今日は久しぶりに良い顔をしているねえ。がんばっておいで。」
隣にいた村長が笑顔でタロに話しかけた。
「そうですか?いつも通りですよ。…ありがとうございます。がんばります。」
タロは村長の方を向くと、そう言ってぺこりと頭を下げる。
「では、行ってきます。」
タロはちらりとリオを見たが、特に話しかけてくる様子もなかったのでそう言って大マカライトの横にある下り坂に向かって歩きはじめた。
「待って。」
タロがリオの横をすり抜けようとした時、リオがタロを呼びとめる。
「三年前のように…また『帰ってこなかったら』…ただじゃおかないからね。」
リオはそう言うとぷいっと横を向く。
そんなリオの言葉にタロは一瞬キョトンとした顔をしたが、
「大丈夫だ。こんな所で死んでたまるか。」
と、笑った。
リオはそんなタロの顔を横目で見て、はっとして正面を向く。
そんなリオの態度にタロは気づくことなく、笑いながら下り坂を降りて行った。
「行ってしまったか…。上位装備での『モンスターハンター』挑戦など聞いたこともないが…ヤツならやってくれるさ。」
ネコートがそう言ってリオの横に立つ。
「ええ…。」
リオの頷きに違和感を感じたネコートはリオの顔を見上げる。
「…。どうした、心配なのかい。」
リオの瞳から流れる一筋の涙を見て、ネコートが声をかけた。
リオはまだ小さくなっていくタロの背中を見つめている。
「いえ…。そうじゃないんです。一瞬だけ…タロが…タロが帰ってきた気がして…。」
そう言ってリオは頬を伝う涙を拭いた。
「大丈夫、信じてます。三年前に私にしてくれた約束も、さっきのタロの一言も。」
まっすぐな視線でタロを見つめるリオの顔を見て、ネコートは思う。
三年前のあの日…ワシらはこのリオと…そしてタロに救われた。
受けた恩に量があるとすればそれは計り知れないものだ。
もう、この二人にはゆっくりとしてもらいたいのだがな…。
三年経った今もまた、ワシらはこの二人無くしては希望を見出せんとは…。
「リオ…お主たちには苦労ばかりかけて本当にすまんな…。無力とは罪なものだ…。」
いつになく弱々しい声色でネコートが呟く。、
「そんなネコートさん!気にしないでください!…誰かがやらなきゃいけない事ですから。タロも…記憶を取り戻せば良いだけの話だし。例え記憶を取り戻せなくたって…今のタロなら…大丈夫だと思います。」
そんなネコートを見て、リオが慌てて言った。
「タロは…いつだって良い子だよ。記憶を取り戻せなくたって…本質は全然変わってないさ。」
横でネコート達のやりとりを聞いていた村長が呟く。
村長の呟きにリオは黙って頷いた。
「今はただ…タロが無事に帰ってくるのを祈るだけです。」
そう言うとリオは空を見上げる。
その空は相変わらず雲一つない、まさに「快晴」だった。
「モンスターハンター ~愛の物語~村最終モンスターハンター編」に続く
・これは俺の完全な自己満足作品です。本当に暇でまあ他にやることないしな…という方だけ読んでいただければーーーー。
・それとかなり話の展開がベタベタしてきました。そんな話が大丈夫な人だけ読んでみると良いかもしれません。
・厨二設定が多数含まれております
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~登場人物紹介~
NAME:タロ
HR:2
主な使用武器:ランス、ガンス
補足:三年前以前の記憶がない。
NAME:リオ
HR:9
主な使用武器:大剣、ランス、ガンス
補足:三年前以前のタロを知る者。村の危機を一度救っている村の英雄。
14
頭が痛い。それもかなり。
この痛みは最近味わった痛みだ。
夢の中から戻ってきてまず気がついたのはまたしても重く鈍い、ひどい頭の痛みだった。
「あぁ…昨日は…飲み過ぎたな…。」
少し声に出して後悔してみた。
また…後悔してみた訳か…。
やはりこの瞬間は思考が止まる。
今の状況を把握しようと目を開けてみると、そこは見慣れた天井だった。
自分の部屋。前と一緒だ。
前と一緒…鈍い痛みに耐えながらもタロは昨日の事を思い出そうとした。
昨日は…そうだ、リオとキッチンで飯を食べて…その後…酒を飲みながら『モンスターハンター』の話をして…。
それから…。
…。
ダメだ。そこから先を思い出す事ができない。
フニュ。
思い出す事ができない…!!
フニュ。
今回は思い出さないといけない気がする。
フニュフニュ。
いや…なんか…思いださないと…死ぬかもしれない…!!
なんで俺の隣でリオが寝てるんだ…!!
タロがさっきから右手に柔らかい感触がすると思って掴んでいたのはリオの尻だった。
タロはその右手を静かに離すと、リオを起こさないようにベッドから起きる。
物音を立てないように、タロは隣のアイルーキッチンに向かった。
タロがキッチンに入ると足元で伸びをしていたシラタキが声をかけてきた。
「ご主人、おはようニャ!昨日もご主人すごい酔っぱらってたニャ!最近どうしたニャ?」
シラタキが朝からすこぶる元気な声でタロに話しかける。
そんなシラタキの大声がタロの頭にガンガンと激痛を与えた。
「うお…。もう少し声のトーンを…シラタキ、すまんが水を一杯持ってきてくれないか…。」
そう言ってタロは椅子に座ると、テーブルに項垂れ少しでも頭が楽な位置を探す。
この痛みは前回以上だな…。
「ご主人持ってきたニャ。大丈夫かニャ?」
シラタキが心配そうな顔で水を渡す。
タロは水を受け取り一気に飲み干すと、またテーブルに寄り掛かる。
「センキュー…なあシラタキ…。昨日の俺、どんな感じだった…?」
シラタキに聞いた所で大した事も聞けないだろうとは思っていたが、昨日の事をまるで覚えてないタロにとってはどんな事でも良いから知りたかった。
タロにそう聞かれてシラタキはうーん…と少し考える素振りを見せると、
「そうニャ!ご主人、リオに抱きついていたニャ!仲が良くて良い事ニャ!」
と、昨日の事を思い出して嬉しそうに話す。
その一言を聞いたタロはガバッと起き上がると自室の方を振り向く。
そこでまだ寝ているリオを思い出すと無言で立ち上がった。
「シラタキ、すまんがちょっと農場の方に行ってくるわ。」
タロはそうシラタキに言い残すと足早にキッチンから出て行った。
そんな主人を今日の仕込みをしながら見ていたガルが、横でこんがり肉を焼いていたアシガルに話しかける。
「ご主人、一体どうしたニャ。こんな時間から農場に行くなんて珍しいニャ。」
「おそらく…ご主人は前と同じように記憶を飛ばしたニャ。…逃げたんじゃないかニャ。」
横で一生懸命肉を焼いているアシガルがガルの問いかけに答える。
「なんで逃げるニャ。ご主人とリオは仲良い感じだったニャ。逃げる事なんてないニャ。」
ガルが首を傾げながらアシガルに聞くと、
「ご主人が覚えてないのが問題ニャ。…人間って面倒臭い生き物ニャ。僕たちみたいにもっとこう素直に生きればいいニャ…はああ!!」
最後の掛け声と共にアシガルは焼いていた肉を天にかざす。
「どうニャ?今度は良い感じニャ!」
どうだと言わんばかりのアシガルの顔を横目にガルが天にかざされた肉を見る。
「素直なのは良いけど…それ生焼けニャ。」
ガルが肉の匂いを嗅ぎながらダメだしした。
「にゃああああーーー!!またご主人に怒られるニャーーーー!!」
そう叫ぶと、アシガルはがっくりと肩を落とした。
15
今日も良い天気だな…。
農場にある釣り場で糸を垂らしながら、タロは水面に映り込む太陽を少し眩しそうに眺めている。
シラタキの衝撃の一言で思わず逃げてきてしまったが、こんな時間に農場に来るのも悪くないなとタロは思った。
釣り場から見える雪山が太陽に照らされ、キラキラと輝いている。
いつも農場を回る時間では隣の丘の影に隠れる水面が、今は太陽の光を反射している。
いつもとは違う、優しい風が吹いている。
川の音が心地良く定期的なリズムを刻む。
そんな穏やかな時間の中、タロは昨日のリオとの会話を思い出していた。
「モンスターハンター」
G級のモンスター。
リオレウス。
ティガレックス。
ナルガクルガ。
そして…ラージャン。
過去に戦い、そしてすべて狩猟したモンスター達だが、それを一日で…手持ちのアイテムを変えることも出来ずに狩り切らなければならない…。
そう思うと、タロは大闘技場で自分がこの4匹のモンスター達と戦う場面を想像する。
ズキ…。
例の頭の疼きがやってきた。
そう、これだ。
昨日から…ネコートさんから渡された依頼書を見てから、自分が闘技場で戦う場面を想像する度に頭が疼つく。
つまりそれは…過去に俺はこのクエストに挑んだ事がある…という事。
俺の知らない過去が、このクエストに反応しているのは確かだ。
このクエストをこなせば…何か思い出せるだろうか。
いや、思い出さなければ行けないのかもしれない。
リオが「ちょっとした依頼」をこなしてここに帰って来た。
そのタイミングで村長とネコートさんが俺にあのクエストを持ってきた。
そしてそのクエストを…俺は知っている…。
何かが動きだしていて、俺は何かを求められている。
しかもその「求められている」モノは俺の知らない…過去の自分。
俺の知らない…「過去の自分」。
思い出せるだろうか。
あの二人と一匹の期待に応えられるだろうか。
そう思うと嫌な汗が出てくる。
自然と釣り竿を持つタロの手が震える。
昨日から緊張していた理由はこれだ。
俺は…決してモンスター達に緊張しているんじゃない。
村長とネコートさん、リオが知っている「過去の自分」の期待に、「今の俺」が応えられるかどうかだ。
思い出せない以上、「過去の自分」は今の俺にとっては「俺」ではない。
ここに来て、タロは初めて「過去の自分」を恨めしく思った。
そんな自分の知らない「自分」を周りから重ねられることが思いのほか苦しいという事にタロは今更ながら気づく。
そして思いだそうとすればあの「疼き」だ。たまったもんじゃないぜ…。
「過去の自分」はそんなにすごいヤツだったとでも言うのか。
どんな実績を残してるのか知らないが、今の俺にそんなヤツと同じモノを求められても困る。
そう思い少し自虐的にタロは笑うと、
「なんにしても…まずは『モンスターハンター』をこなす事だな…。」
と、一人呟く。
どうやらタロの思いもしない所から「ライバル」が現れたようだ。
「そいつがこなしたのなら、俺もやってやるさ…。」
精一杯の強がりを声に出してみる。
根拠のない強がりだとは解っていたが、それでも今出来ることを精一杯やるしかないとタロは前向きに考えることにした。
これ以上は考えても無駄だと思ったタロは、いつまでたっても反応しない釣り竿を引き上げる。
釣り針の先にあった餌は、いつの間にか無くなっていた。
16
釣り場を後にしたタロは、次に農場の中央にある畑で種まきをした。
植えている種は「怪力の種」。狩猟ついでに持ってきたモンスターの糞をばらまくと種を撒いてよく混ぜ合わせた。
モンスターの糞を混ぜると作物はよく育つ。
そしてタロはその作業を終えると畑の周りにある雑草を抜き始めた。
「沢山実れよ~。そして全部売ってやるぜ~。」
そんな独り言をつぶやきながら、丁寧に草を抜いて行く。
考え事をしているとどうにもネガティブになると思ったタロは草むしりに集中することにした。
考えても仕方のないことだ。
今、やれる事をやれば良い。
そう思うと少し気持ちが軽くなったタロは、鼻歌交じりに目の前にある草を抜いて行く。
「お早う、タロ。」
「ほぎゃああーー!!!」
雑草抜きに集中していたタロの背後から突然声がかかり、タロは思わず悲鳴を上げた。
びっくりして後ろを振り向くと、そこにはリオがいる。
「お、お早う…。」
リオの顔を見て、昨日の事を覚えていない事とシラタキの一言を思い出したタロは顔を真っ青にしながらそう答えた。
「きょ、今日も良い天気ですね…。」
タロは何を言っていいか解らないまま口を開く。
そんなタロを見て、リオは片方の眉を吊り上げるとチョコンとタロの隣に腰を下ろす。
そしてそのままタロと同じように草をむしり始めた。
そんなリオの行動にタロは動揺しながらも、リオと同じように目の前にある雑草を抜き始めた。
「タロ…昨日の事、覚えてないでしょ?」
おもむろにリオが話し始めたので、タロは思わずビクッとする。
そしてその質問にどう答えて良いか解らず、タロが言葉に詰まっていると、
「昨日…私があなたの過去を話し始めたら、急にあなたが頭を抱え出したの。」
と、目の前の草を抜く手を休めずリオが語り出した。
「なんか苦しそうで…その後、すごい急ピッチでお酒を飲み始めて…。そう、何かから逃げるように次々とお酒を飲み干して行って。確か集会所で飲んだ時もそんな感じだったわ。昔のタロはそんな飲み方は絶対やらなかった。」
そこまで言うと、リオは草を抜く手を止めて、
「やっぱり…昔の事を思い出すのが辛いの?」
と、タロの方を向いた。
なるほどな…。
タロはリオの言葉で、自分がどのように記憶を飛ばしたのか理解した。
リオの昔話で、あの「疼き」が出たのか。
その「疼き」から逃れようとして酒を飲みまくった訳だ。記憶を飛ばす程に。
いや…記憶を飛ばす為に。
疼きの原因を頭の中に残さないために、防衛本能でも働いたか…。
言葉を待っているリオに対してタロが口を開いた。
「どうにもな…昔の事を思い出そうとすると頭の中が変になりそうなんだよ。自分でも思い出したい、自分がどんな人間だったか知りたいと願ってはいるんだけど、どうにも苦しくてな…。」
そこまで言うとタロは口を噤んだ。
自分が弱音を吐いていることに気づいて、急に恥ずかしくなったからだ。
「まあでもいずれ思い出すさ。慌てることもないんだろう?過去の自分がどんなハンターだったかは知らないけど、それに見合う強さがあれば誰も文句は言わないだろ。」
そうタロは言うとリオの方に振り向く。
リオはタロと目が合うと、
「まあ、タロはタロだしね。」
と、微笑んだ。
タロはそんなリオの言葉に少しホッとした。
リオは「過去」も「今」も俺を「タロ」として見ている。
過去にリオと何かがあったとして、過去の俺を求められても俺はどうしようもない。
思い出せればそれに越したことはないが、思い出せなかったらリオは「今の俺」をどう見るのだろう。
「過去の俺」と比べられて…。
そう思うと急に惨めな気分になってきたのでタロは考えるのを止めた。
とにかく、今リオは俺の事を「タロ」として見ている。
今はとりあえずそれだけで良い。
過去の自分を「思い出さない」と決まっているなら、ネコートさんの依頼も村長のお願いも聞く義理なんてなかったんだろうにな。
フとそんな事をタロは思ったが、それはそれであまりにも「今の自分」が格好悪く思えたのですぐにそんな考えを頭から消した。
今は…過去の自分を取り戻す為に全力でやれば良い。
本当にそれだけのことだ。
タロは再び目の前にある草を抜きはじめると、
視線を地面に向けたままリオに言う。
「明日、ネコートさんの依頼をこなしに…ちょっと行ってくるわ。」
それを聞いたリオも視線を目の前の雑草から離さずに答える。
「うん。がんばってね。」
夕方。
その畑の周りの雑草は綺麗に取り除かれていた。
17
次の日。
自室の扉を開けると、まずタロの視界に飛び込んできたのは太陽の光だった。
あまりにも眩しく、思わず目を細める。
ゆっくりと目を開けて空を見ると、そこは雲一つない、まさに「快晴」だった。
「絶好の狩り日和じゃないか。なあカク。」
脚元でタロと同じように目を細めていたカクも、タロの一言に頷く。
「絶好の狩り日和ニャ!旦那さん、今日は僕がんばるニャ!」
そう言ってカクと呼ばれたオトモアイルーが大きく手を振る。
そんなやる気一杯の我がオトモを見てタロは微笑んだ。
どんなクエストだろうとコイツはいつもやる気満々だ。
タロはそんなカクを気に入っている。
「さて、行こうか。」
タロがそう言うと、カクは頷いて大マカライトの祭壇に向かって歩きはじめた。
とにかく、今自分が出来る事をやろう。
そう心に唱えるとタロもカクの後を追うように歩きだす。
左手に集会所を見つつ坂を下ると、大マカライトの祭壇がある。
いつものように、そこにはネコートと村長がいた。
そして今日はさらにそこにリオも立っていた。
「お早うございます。」
タロが一人と一匹に挨拶をする。
「お早う。来たか。まさかこんなに早く挑戦するとは思ってもみなかったわ。」
ネコートがタロの顔を見るなりそう言って笑った。
「まあこういう事は勢いが大事かなと思いましてね。」
そう言ってタロもつられて笑う。
「ふむ。まだ別に急がなくてもいいのだぞ?欲しい鎧や素材集めをしてからでも。全然な。」
タロの顔を見てその腹のくくり方を悟ったネコートが、それでもわざとらしく聞いてきた。
「いや、特にはありませんよ。後は…やるだけです。」
タロはそんなネコートのわざとらしい質問にも笑顔で答える。
「ふむ。あっぱれな事だ。」
タロの覚悟が決まってる事を改めて確認すると、ネコートはフフと笑って目を細めた。
「ではこれを。」
そう言ってタロは自分の名前の書かれた依頼書をネコートに渡す。
ネコートはその依頼書を受け取ると、ギルドの正式マークが入った判子の部分を半分に切り取り、タロに差し出す。
「ではこれで『モンスターハンター』の契約完了だ。タロや…必ず、生きて帰ってこいよ。」
そう言ってネコートは依頼書の半紙をタロに渡した。
その半紙を受け取ったタロも、
「もちろんですよ。これは『序章』なんでしょう?こんな所じゃくたばりませんよ。」
と、笑いながら言う。
「タロや。今日は久しぶりに良い顔をしているねえ。がんばっておいで。」
隣にいた村長が笑顔でタロに話しかけた。
「そうですか?いつも通りですよ。…ありがとうございます。がんばります。」
タロは村長の方を向くと、そう言ってぺこりと頭を下げる。
「では、行ってきます。」
タロはちらりとリオを見たが、特に話しかけてくる様子もなかったのでそう言って大マカライトの横にある下り坂に向かって歩きはじめた。
「待って。」
タロがリオの横をすり抜けようとした時、リオがタロを呼びとめる。
「三年前のように…また『帰ってこなかったら』…ただじゃおかないからね。」
リオはそう言うとぷいっと横を向く。
そんなリオの言葉にタロは一瞬キョトンとした顔をしたが、
「大丈夫だ。こんな所で死んでたまるか。」
と、笑った。
リオはそんなタロの顔を横目で見て、はっとして正面を向く。
そんなリオの態度にタロは気づくことなく、笑いながら下り坂を降りて行った。
「行ってしまったか…。上位装備での『モンスターハンター』挑戦など聞いたこともないが…ヤツならやってくれるさ。」
ネコートがそう言ってリオの横に立つ。
「ええ…。」
リオの頷きに違和感を感じたネコートはリオの顔を見上げる。
「…。どうした、心配なのかい。」
リオの瞳から流れる一筋の涙を見て、ネコートが声をかけた。
リオはまだ小さくなっていくタロの背中を見つめている。
「いえ…。そうじゃないんです。一瞬だけ…タロが…タロが帰ってきた気がして…。」
そう言ってリオは頬を伝う涙を拭いた。
「大丈夫、信じてます。三年前に私にしてくれた約束も、さっきのタロの一言も。」
まっすぐな視線でタロを見つめるリオの顔を見て、ネコートは思う。
三年前のあの日…ワシらはこのリオと…そしてタロに救われた。
受けた恩に量があるとすればそれは計り知れないものだ。
もう、この二人にはゆっくりとしてもらいたいのだがな…。
三年経った今もまた、ワシらはこの二人無くしては希望を見出せんとは…。
「リオ…お主たちには苦労ばかりかけて本当にすまんな…。無力とは罪なものだ…。」
いつになく弱々しい声色でネコートが呟く。、
「そんなネコートさん!気にしないでください!…誰かがやらなきゃいけない事ですから。タロも…記憶を取り戻せば良いだけの話だし。例え記憶を取り戻せなくたって…今のタロなら…大丈夫だと思います。」
そんなネコートを見て、リオが慌てて言った。
「タロは…いつだって良い子だよ。記憶を取り戻せなくたって…本質は全然変わってないさ。」
横でネコート達のやりとりを聞いていた村長が呟く。
村長の呟きにリオは黙って頷いた。
「今はただ…タロが無事に帰ってくるのを祈るだけです。」
そう言うとリオは空を見上げる。
その空は相変わらず雲一つない、まさに「快晴」だった。
「モンスターハンター ~愛の物語~村最終モンスターハンター編」に続く