※注意!!※
・これは素人が書いた「創作物」です。この手の事に興味のない方、苦手な方は読まない事をお勧めしておきます。いや、本音としてはは読んでほしいですけど…。
・モンスターハンターP2Gの公式設定をかなり無視しております。
・多数の中二病設定が使われております。
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登場人物紹介
NAME:タロ・ライド
HR:2
主な使用武器:ランス・ガンランス
三年前以前の記憶が無かったが、前回の話で自分の過去を「知った」。
ただ今、リオと同居中。
NAME:リオ・アズベル
HR:9
主な使用武器:大剣・ランス・ガンランス
三年前まではタロと愛し合っていた。三年前、ポッケ村の危機を救った英雄。
ただ今、タロと同居中。
NAME:アズ・ルードリア
HR:6
主な使用武器:太刀・片手剣
元大闘技場の門番兵。前回のタロの戦いに感動して「ハンター」に戻る決意をする。
NAME:ナルガ・ロウ・セトラ
HR:9
主な使用武器:ハンマー・太刀・狩猟笛
ややこしいけど名前は「ナルガ」。ロウはミドルネーム。
過去にちょっとあってファーストネームに「ナルガ」と付けている。…が、今回の本編には関係無し。
アズを追いかけてポッケ村にたどり着く。
4
太陽が完全に地平線の山脈の中に沈んで数刻。
集会所の入り口にカギをかけたジョーイは、すでに中央のテーブルでスタンバイOKなミルカとギルドマネージャーを見るとため息をついた。
頭のヘルパーフードを外して、もう諦めているかのようにトボトボと歩いて空いている席に座る。
ジョーイが席に着くと、すでに座っていたカイとジーコ、ジョーイが目を合わせる。
アイコンタクトだ。
ジーコがちらりとミルカを見ると、三人は黙って頷いた。
ちなみにアイコンタクトでの作戦内容は『ミルカをとことん飲ませてさっさと潰せ』だ。
どうにもミルカは酒癖が悪いようで、暴れられる前に潰れてもらいたいようだ。
最近の宴会での作戦はほとんどこれだった。
「最近、本当にタロちゃんとリオちゃんの周りが騒がしいわね~。」
全員が席に着いたのを確認すると開口一番、ギルドマネージャーがそんな事を呟く。
「リオさんは今日初めての尋ね人でしたけど、タロさんは本当に色々聞かれますね、最近。何かあったんですかね。」
ギルドマネージャーの呟きに、カイが反応した。
「今日もタロさんの事尋ねる人来たしね。この前もなんか偉そうな人がタロさんの事聞いてきたし。」
カイの言葉に、ジョーイが頷く。
「偉そうな人って…もしかしてカイザーXの装備の人?」
隣で聞いていたジーコがジョーイに聞いた。
「そうそう!すっごい嫌な感じでしたけど。でも、なんか身分の高い人って感じでした。そんな人がタロさんとどんな関係があるのか気になって、よく覚えてるんですよね。」
ジーコの問いにジョーイがそう答えると、
「あの人…依頼書とギルドカード見る限り…王族の人よ。」
と、ジーコが呟いた。
「王族…!!なんでタロさんにそんな身分の人が訪ねて来るんですか!?やっぱり最近変ですよ!タロさんの周り!」
話を聞いていたカイが驚いたように言う。
「そうなのよね。私が見る限り、あの時を境にしてなのよ。」
話のやりとりを聞いていたミルカが手に持っていた酒を一口、口の中を潤わすとそう呟いた。
「あの時って…。確かタロさんがネコートさんのクエストに出たまま数日帰ってこなかった時ですか?」
カイが思い出すように聞くと、ミルカは手に持っていた酒をぐいっと空ける。
隣で座っていたジョーイがすかさずその開いたグラスに酒を注いだ。
「そう!あの時!!あの時からなんか変なのよね。なんかこう…今まで余所余所しかった二人の間が、すごく親しくなったような…っ!!」
そこまで言うとミルカは注がれた酒をぐっと飲み干す。
『今はあの「二人の間」の話じゃないから!!』
カイ、ジョーイ、ジーコの三人が心の中で同時にミルカに向かって突っ込みを入れる。
そんなミルカに苦笑いしながらも、ギルドマネージャーが口を開いた。
「中々皆見てるわね~。私はそのクエストでタロちゃんが何をしたかギルド通じて知ってるけど、でも確かにその時を境にタロちゃんとリオちゃんの周りはちょっと騒がしいわね。」
手元にある、酒の入ったグラスを見つめながらギルドマネージャーが呟く。
「そう!それなんですよー!マネージャーに聞きたかったんですが、あの時タロさん…なんのクエストに行ったんですか?私、村長とネコートさんに用 があったのでその時にお会いしたんですけど、なんか今まで見たことない位タロさんの事心配してて…。アカムトルム討伐の時ですらあんな心配してなかったの に…。」
ジョーイがその時の事を思い出しながらマネージャーに聞いた。
「ああ!私も見た。タロが帰ってこない…ってずっと言ってたね。」
ジーコもその時のことを目撃していたようで、ジョーイの話に乗っかる。
「それと!そのクエスト以降、あんなに嫌がってた集会所クエストをほぼ毎日こなしに来るし!タロさんの装備なら下位くらい問題ないのにリオさんまで一緒に行ってるし。」
カイもまたその話に気がついた事を話した。
「そうなのよね、憎たらしい…。」
ミルカもまた呟く。若干話の主旨がずれた感想だが。
そこにいたギルドマネージャーを除く全員が「その時のクエスト」を境に、何かが動き出している事は解っていた。
「そのクエストねえ~。私も教えてあげたいんだけど、実はお上のシークレットだから~。でもその内解るわよ…。そろそろ、あの『噂』もここに流れてくるだろうしね…。」
ギルドマネージャーは手に持つグラスの氷をクルクルと回しながら呟いた。
「『噂』…?」
ギルドマネージャーの呟きに、聞いていた四人が眉をつり上げる。
何の事を言っているのか、まるで見当がつかなかった。
先日行われたタロの「モンスターハンター」は、実際のところ民衆にはあまり知られていない。大闘技場関係者、今後の『災い』に備えるべき兵士たち。それから貴族、王族、後は各国の来賓のみが知るクエストだ。
元々が『災い』に対しての先行討伐隊の人選が目的のクエストなので、民衆に要らぬ不安を煽らぬためにもこのクエストは一般民衆の知るクエストでは無かった。
まあつまりの所ここにいる5人の内、ギルドマネージャー以外の四人はタロの「モンスターハンター」の事は知らないのだ。
「でも最近、その騒がしさとは裏腹にタロさん楽しそうですよね。やっぱりリオさんと暮らしてるのが大きいのかな。なんかあの二人を見てるとすっかり夫婦って感じだし。」
今日も二人でクエストをこなそうとして一緒に集会所に入ってきたリオとタロを思い出しながら、カイが言う。
ギルドマネージャーの言っていた「噂」がなんなのか気にはなったが、多分この人は教えてくれないだろう。
言って良い事なら聞かなくても喋る人だということはカイもよく知っていた。
だからあえてカイは話題を変えた。
「夫婦って言うには、タロさん尻に敷かれすぎだけどね。」
そう言ってジョーイが笑う。
「私が聞いた情報では、あの二人はあれでもまだくっついてないのよ~。」
そんなジョーイの笑いに釣られながら、マネージャーも笑いながらそう言った。
「ええー!?そうなんですかー?ちょっと!あははっタロさん何やってんのよ。」
マネージャーの言葉にジーコが笑う。
そこにいた四人がタロとリオの事でケラケラと笑う中、一人笑わない人物。
むすっとした顔で一人手酌酒のミルカに気がついたジーコは慌ててジョーイに目配せする。
「ミルカさん!大丈夫ですよ!あの二人、案外平行線たどってくっつかないかもしれませんし!」
ジョーイがこの話の流れにしまった!という顔をしたが時すでに遅かった。
「何が大丈夫だってのよ!!!別にあんな奴、誰とくっつこうが私には関係ないわよ!!なんなのよ!!」
ミルカがそう叫ぶと、ジョーイがつごうとして持っていた芋酒の瓶を奪うと、直接口につけてラッパ飲みを始める。
「ばあああーか!!ばああーか!!タロのばああーか!!!」
そう叫ぶとともに立ち上がると、さらにその瓶をラッパ飲みする。
ラッパの高さが頂点にまでくると、
「もう無くなったわよ!!!次持ってきなさいよおおおーーーー!!」
と、瓶をぶんぶん振り回しながらさらに叫んだ。
『あ~あ…始まっちゃったよ…。』
カイ、ジョーイ、ジーコの三人はお互い顔を見合わせると全く同じ事を思い、そして「はあ…。」と三人同時にため息をついた。
『暴れる前に、潰れてほしかった…。』
そんな四人を見てギルドマネージャーは微笑みながら、手に持っていた酒を一口付けた。
5
そんな集会所の宴会と同時刻。
ここはタロの家、アイルーキッチン。
キッチンにあるテーブルに男一人と女二人が、アイルー達の作った夕食を食べ終えて酒を飲んでいた。
食後の、「後は寝るだけ」という今日の日程に、流れる時間もゆっくりなそんな一時。
「しかしリオがねえ。男と住んでるとは…本当にびっくりしたよ!」
そんな一時の中。女二人の内の一人、ロウがリオに話しかけた。
「いや…これは、私も仕方なくだから!久しぶりにポッケ村に帰ってきたら私の家、この人に使われちゃってたから。」
目線を宙に泳がせながらリオがボソボソと答えた。
そんなリオを見て、ロウはニヤニヤといやらしい顔をする。
「へえ。私と街で住んでた時は身持ちが堅かったのに。住む家がないから同居という選択とは、リオらしくないねえ。」
ロウはからかうように言った。
「いや…だから!仕方ないの!私らしくなくて悪かったわね!」
そんなロウの言葉にリオはムスっとした顔をした。
そんな慌てるリオを、タロはもの珍しそうに見ている。
ここ最近の同居生活でタロはリオに対して全くイニシアチブが取れなかった事から、久しぶりに見るリオの慌て顔をちょっと半笑いな顔で見ていた。
ここ最近、俺はリオに怒られてばかりだったからなあ…。
ロウに茶化されている対象が自分も「込み」だとは気が付いていたが、そんな事よりも今はリオの慌てる顔を見れる事が嬉しいようで、タロは特にロウに向かって何も言おうとはしなかった。
むしろ、もっと言ってほしいと思うタロがいた。
まあそれだけタロはここ最近、ずっとリオの尻に敷かれていたわけだ。
「…ちょっとタロさん?なんか変な笑顔してるけど…。」
ロウが少し「引き気味」でタロに話しかける。
リオが押される所を見てニヤ付いていたタロの顔はどうにも薄気味悪かったようだ。
「ああ。すまんすまん。」
はっと我に返ると、ちょっと照れたようにタロが笑った。
「まあロウが言いたい事は解るけど。本当に訳ありでね。リオの事は温かく見守っていただけると。」
そう言ってタロはハハハッと笑う。
「なんであなたが『部外者』ヅラなのよ!?」
リオは顔を赤くしながらそう言うと、タロの耳をひっぱる。
「いたたた…っ!!ちょっと!リオさん!?」
引っ張られたタロは思わず「すいませんでしたっ!」と叫んでいた。
そんなやり取りを見ていたロウは、「へえ。」と呟くと、ちょっと驚いた顔をした。
リオ、なんか変わったな。
私と街に住んでた時は絶対こんな顔しなかったのに。
街に住んでた時はずっと何かに悩んでるって感じだった。
出会った当初からリオには過去に何かあったんだなって思わせる「翳り」みたいなものがあった。
だからと言ってそこに踏み込ませようとしないリオの意思が解ったから、何も聞かなかったけど…。
多分、リオの「翳り」の原因はこの「人」の事だったんだね。
良かったね、リオ。
そんな風に思うとロウはフッと微笑んだ。
「で、ロウ。なんで今日はここに来たの?あなたが私に挨拶するためだけにここに来るとは到底思えないけど…。」
タロを叱りつけて一段落付けると、リオが改めてロウの方に向いた。
隣ではタロがシュンっとしている。
「え?ああ、いやあここに来たのはついでさ。ちょっと人探しでそこの集会所まで来たからさ。」
物思いに耽っていたロウが、リオに語りかけられてハッと頭を上げた。
「人探しでここまで…?集会所1番に用がある人なんて限られてるのに…。」
リオがそう呟いて、ロウと関係がありそうな人を思い出す。しかしそんな人はまるで出てこない。
「ああー。私もさ、今日聞いたんだよね。私の探してる人がここに向かったって。」
そう言ってロウはフッとリオから視線を外した。
ロウは自分のその言葉で、今日のグスタのやりとりを思い出して急に恥ずかしくなってしまったのだ。
そんな「照れ」を見られたくないようで、ロウはリオの方を見ないようにしている。
「…。ねえ、ロウ。あなたの探している人って男の人…?」
そんなロウの態度にピンと来たリオは、思いついた事を質問する。
「えっ!?…ああ、まあ。そうだけど…?」
ビクッと肩を上げると、ロウはさらに顔を見られないようにリオから顔をそむけた。
「へえ~。」
攻守交代の鐘の音が鳴る。
リオがニコニコした顔でロウを見る。
「じゃあ私達も一緒に探してあげるわよ。」
そんな提案をするリオに、ロウは慌てて手を振り、
「良いって!良いって!や!本当に大した用事じゃないんだ!その人!」
と、言ってリオの顔を見た。
そんなリオの顔は楽しそうに笑っている。
「何よ?その顔…。」
リオの楽しそうな顔にロウは嫌な予感がした。
「あなた、本当に解りやすいわよね。大した用事がある訳でもないのになんでここまで追いかけてきたの?」
リオは笑顔を崩さないままそう質問する。
「え?いや、ただ…ほら。暇だったから…。」
動揺を隠せないロウがいた。上手い言い訳が見つからない。
「暇だからって宿も無いこんな村に来るの?何より顔が赤いわよ?」
そう言ってリオはロウの顔を指差す。
「え!?」
ロウはそう言うと、思わず頬を両手で隠した。
「嘘よ。」
リオがニヤニヤしながら言う。
「嘘なの!?」
ロウが思わず叫ぶ。
「いやいや赤いよ。」
タロが馬鹿正直に、二人のやりとりに笑いながら本当の事を言う。
「…。」
バタンッ。
タロの一言が止めだったようで、もう諦めたと言わんばかりに大きなため息とともにロウはテーブルに上半身を投げ出した。
「グスタにも言われたんだ…解りやすいって…。」
テーブルに上半身を投げ出して、ロウが呟いた。
「グスタって人は解らないけど同意見ね。解りやすいわ、あなた。」
そんなロウの呟きに、リオが笑いながら答えた。
6
ロウがアズを意識したのはもう一年も前の事。
本当に些細な事だった。
ちょっとした事。
―――――「きっかけ」なんてそんな事。
一年前のある日。ある時間。
大闘技場の門の所まで来て、ロウは砥石を忘れた事に気が付いた。
「しまったなあ。今から取りに帰ったらクエストの予定時間に間に合わないし…。」
そんな呟きをした時だった。
「これを使いなよ。」
不意にそんな声が後ろから聞こえた。
一人の門番兵が手に砥石を持っていた。
「ずっと持ち歩いていたから、ちょっと汚いけどさ。」
そう言って照れくさそうに笑う門番兵。
差し出された手には、確かにお世辞にも綺麗とは言えない一つの砥石が乗っていた。
「良いのかい?なんかお守り代わりとか、願掛けとかに使ってたっぽいけど。」
綺麗とは言えないが、でもその砥石は大事そうに紙に包まれていたようで、手の平に乗っている砥石の下には紙が敷かれている。
「ああ、別に良いんだ。砥石も使われてこその砥石だろう?俺はもう…使う事は無いからさ。」
そう言って差し出す門番兵は少し寂しそうな顔で笑っている。
「…ありがとう。」
差し出された砥石を受け取ると、ロウはそう言って手を上げてお礼をした。
「おっちょこちょいハンター。がんばれよ!」
そう言って笑うと、その門番兵は自分の勤務位置に戻って行った。
手の平に乗っている、紙に包まれた砥石。
ロウはそれを見て、あの門番兵はなぜこんな紙に包んで持ち歩いていたんだろうと考えた。
受け取りはしたものの、なんか使う気になれない…そんな砥石。
結局ロウは大闘技場にある携帯砥石で全てをまかない、そんな紙に包まれていた砥石は今も使わずに持っている。
人を意識する「きっかけ」なんてそんなもの。
好きか嫌いかなんてはっきりとしたものなんてまだ芽生える訳ではないが。
人を意識する理由なんてそんな些細な事。
「…とまあ、そんなありきたりな事だった訳よ、最初なんて。…でもさ、そこからなんか意識し出しちゃった訳なのよね…。」
ここまで語ったロウの顔は真っ赤だった。
それから今日、ロウはグスタからアズが門番を辞めたと聞き、もう会えないと思ったら勝手に足が動いていたそうだ。
こういう事に慣れていないのだろう、ロウはアズを追いかけてきたものの自分でもどうすれば良いのか、どうするべきなのか解かってはいなかった。
「でもさ!ここで追いかけないと…もう会えない気がして…。だから、まあ偶然装ってなんとか会おうと思ってここまで来たけど…。」
そう言うと、ロウはテーブルに両手を投げ出し顔を伏せる。
こんな辺境の集会所にまできて、やあ偶然☆久しぶり!
…なんか…無理ないか…?タロはそう思ったが、敢えて口には出さなかった。
「会ったら会ったで…なんて言えば良いのかなあ。」
ロウはそんな呟きをもらしたまま、その姿勢のまま動かなくなった。
そんなロウの話を聞いていたタロとリオは、どうしたもんかと目を合わせた。
「とりあえず、明日そのアズさんって人に会いましょうか。丁度私達も明日クエストに出るつもりだったし。とりあえず集会所で待ってれば帰って来るんでしょ?」
リオがそう言うとロウの肩をぽんっと叩く。
「うん…。」
ロウがテーブルに突っ伏したまま頷くと、その後ゆっくりとその顔を上げた。
上げた顔の頬はまだ赤く染まっている。
「でもそのアズさんって人、なんでこんな辺境の集会所になんて来たのかしら。街の集会所の方が全然近いのに…。」
リオが思った事を口にすると、ロウは視線を上げてリオを見た。
「なんか人探しをしてるんだって。グスタがそう言ってた。誰を探してるかまでは解らないけど…。」
まさかそのアズの探している人物が今ロウの目の前にいる事も露知らず、ロウはうーんと頭を唸らせている。
「まあとにかく、今日の所はもう寝ましょうか。アズさんを集会所で待つとしても、帰って来る時間が解らなければ会えないしね。明日は朝一番に行って、帰って来るのを待ってましょうか。」
リオはそう言うと席を立つ。
釣られてタロもロウも席を立った。
「皆、もう良いのかニャ?」
席を立った三人に、キッチンカウンターで明日の仕込みをしていた料理長のガルが声をかける。
「うん、ありがと、ガル。今日もおいしかったよ。」
そう言ってリオはガルに微笑むと、ガルは嬉しそうに眼を細めた。
三人がキッチンから出て行った後。
ガルは明日の仕込みの手を止めずに、横でこんがり肉を焼いていたアシガルに話しかけた。
「さっきのご主人達の話、あれは『イロコイザタ』というヤツかニャ?」
「そうだニャ。今日来たお客さんが恋の悩みをご主人達にうちあけていたニャ。」
肉をクルクル、おぼつかない足取りで肉焼き機を回すアシガルが答える。
「ご主人達にそんな問題わかるのかニャ?二人とも自分達のことも碌に解決できてないのに。」
トントントン…と、手に持つ包丁を滑らせながらガルが呟く。
「ニャ!料理長も解ってきたニャ。その通りニャ。本当にあの二人はもどかしいニャ。」
えっちらおっちら、肉焼き機を全身を使って回すアシガルが答える。
「アシガルの横にいると色々と解ってくるニャ。なるほどニャ。」
ガルが呟く。
「だからボクはいつも言ってるニャ!どうしてこうボク達みたいに素直になれないかニャ~と!ご主人達は好き合ってるのに全然くっつく気配が無いニャ!」
少し怒り気味でアシガルが言う。
「本当ニャ。早くボクも料理長として、ご主人とリオの子供においしい料理を作ってあげたいニャ。」
ガルが今後のちょっとした夢を語る。
「早くそんな日が来ると良いニャ~。」
そんなガルの夢に共感したアシガルがうっとりする。
まさかキッチンアイルー達に、こんな風に心配されてるとも二人は思ってないだろう。
そんな「アイルー心、ご主人知らず」な状況はまだ当分続きそうだ。
今日という日が、静かに終わりを告げた。
集会所編3に続く
・これは素人が書いた「創作物」です。この手の事に興味のない方、苦手な方は読まない事をお勧めしておきます。いや、本音としてはは読んでほしいですけど…。
・モンスターハンターP2Gの公式設定をかなり無視しております。
・多数の中二病設定が使われております。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
登場人物紹介
NAME:タロ・ライド
HR:2
主な使用武器:ランス・ガンランス
三年前以前の記憶が無かったが、前回の話で自分の過去を「知った」。
ただ今、リオと同居中。
NAME:リオ・アズベル
HR:9
主な使用武器:大剣・ランス・ガンランス
三年前まではタロと愛し合っていた。三年前、ポッケ村の危機を救った英雄。
ただ今、タロと同居中。
NAME:アズ・ルードリア
HR:6
主な使用武器:太刀・片手剣
元大闘技場の門番兵。前回のタロの戦いに感動して「ハンター」に戻る決意をする。
NAME:ナルガ・ロウ・セトラ
HR:9
主な使用武器:ハンマー・太刀・狩猟笛
ややこしいけど名前は「ナルガ」。ロウはミドルネーム。
過去にちょっとあってファーストネームに「ナルガ」と付けている。…が、今回の本編には関係無し。
アズを追いかけてポッケ村にたどり着く。
4
太陽が完全に地平線の山脈の中に沈んで数刻。
集会所の入り口にカギをかけたジョーイは、すでに中央のテーブルでスタンバイOKなミルカとギルドマネージャーを見るとため息をついた。
頭のヘルパーフードを外して、もう諦めているかのようにトボトボと歩いて空いている席に座る。
ジョーイが席に着くと、すでに座っていたカイとジーコ、ジョーイが目を合わせる。
アイコンタクトだ。
ジーコがちらりとミルカを見ると、三人は黙って頷いた。
ちなみにアイコンタクトでの作戦内容は『ミルカをとことん飲ませてさっさと潰せ』だ。
どうにもミルカは酒癖が悪いようで、暴れられる前に潰れてもらいたいようだ。
最近の宴会での作戦はほとんどこれだった。
「最近、本当にタロちゃんとリオちゃんの周りが騒がしいわね~。」
全員が席に着いたのを確認すると開口一番、ギルドマネージャーがそんな事を呟く。
「リオさんは今日初めての尋ね人でしたけど、タロさんは本当に色々聞かれますね、最近。何かあったんですかね。」
ギルドマネージャーの呟きに、カイが反応した。
「今日もタロさんの事尋ねる人来たしね。この前もなんか偉そうな人がタロさんの事聞いてきたし。」
カイの言葉に、ジョーイが頷く。
「偉そうな人って…もしかしてカイザーXの装備の人?」
隣で聞いていたジーコがジョーイに聞いた。
「そうそう!すっごい嫌な感じでしたけど。でも、なんか身分の高い人って感じでした。そんな人がタロさんとどんな関係があるのか気になって、よく覚えてるんですよね。」
ジーコの問いにジョーイがそう答えると、
「あの人…依頼書とギルドカード見る限り…王族の人よ。」
と、ジーコが呟いた。
「王族…!!なんでタロさんにそんな身分の人が訪ねて来るんですか!?やっぱり最近変ですよ!タロさんの周り!」
話を聞いていたカイが驚いたように言う。
「そうなのよね。私が見る限り、あの時を境にしてなのよ。」
話のやりとりを聞いていたミルカが手に持っていた酒を一口、口の中を潤わすとそう呟いた。
「あの時って…。確かタロさんがネコートさんのクエストに出たまま数日帰ってこなかった時ですか?」
カイが思い出すように聞くと、ミルカは手に持っていた酒をぐいっと空ける。
隣で座っていたジョーイがすかさずその開いたグラスに酒を注いだ。
「そう!あの時!!あの時からなんか変なのよね。なんかこう…今まで余所余所しかった二人の間が、すごく親しくなったような…っ!!」
そこまで言うとミルカは注がれた酒をぐっと飲み干す。
『今はあの「二人の間」の話じゃないから!!』
カイ、ジョーイ、ジーコの三人が心の中で同時にミルカに向かって突っ込みを入れる。
そんなミルカに苦笑いしながらも、ギルドマネージャーが口を開いた。
「中々皆見てるわね~。私はそのクエストでタロちゃんが何をしたかギルド通じて知ってるけど、でも確かにその時を境にタロちゃんとリオちゃんの周りはちょっと騒がしいわね。」
手元にある、酒の入ったグラスを見つめながらギルドマネージャーが呟く。
「そう!それなんですよー!マネージャーに聞きたかったんですが、あの時タロさん…なんのクエストに行ったんですか?私、村長とネコートさんに用 があったのでその時にお会いしたんですけど、なんか今まで見たことない位タロさんの事心配してて…。アカムトルム討伐の時ですらあんな心配してなかったの に…。」
ジョーイがその時の事を思い出しながらマネージャーに聞いた。
「ああ!私も見た。タロが帰ってこない…ってずっと言ってたね。」
ジーコもその時のことを目撃していたようで、ジョーイの話に乗っかる。
「それと!そのクエスト以降、あんなに嫌がってた集会所クエストをほぼ毎日こなしに来るし!タロさんの装備なら下位くらい問題ないのにリオさんまで一緒に行ってるし。」
カイもまたその話に気がついた事を話した。
「そうなのよね、憎たらしい…。」
ミルカもまた呟く。若干話の主旨がずれた感想だが。
そこにいたギルドマネージャーを除く全員が「その時のクエスト」を境に、何かが動き出している事は解っていた。
「そのクエストねえ~。私も教えてあげたいんだけど、実はお上のシークレットだから~。でもその内解るわよ…。そろそろ、あの『噂』もここに流れてくるだろうしね…。」
ギルドマネージャーは手に持つグラスの氷をクルクルと回しながら呟いた。
「『噂』…?」
ギルドマネージャーの呟きに、聞いていた四人が眉をつり上げる。
何の事を言っているのか、まるで見当がつかなかった。
先日行われたタロの「モンスターハンター」は、実際のところ民衆にはあまり知られていない。大闘技場関係者、今後の『災い』に備えるべき兵士たち。それから貴族、王族、後は各国の来賓のみが知るクエストだ。
元々が『災い』に対しての先行討伐隊の人選が目的のクエストなので、民衆に要らぬ不安を煽らぬためにもこのクエストは一般民衆の知るクエストでは無かった。
まあつまりの所ここにいる5人の内、ギルドマネージャー以外の四人はタロの「モンスターハンター」の事は知らないのだ。
「でも最近、その騒がしさとは裏腹にタロさん楽しそうですよね。やっぱりリオさんと暮らしてるのが大きいのかな。なんかあの二人を見てるとすっかり夫婦って感じだし。」
今日も二人でクエストをこなそうとして一緒に集会所に入ってきたリオとタロを思い出しながら、カイが言う。
ギルドマネージャーの言っていた「噂」がなんなのか気にはなったが、多分この人は教えてくれないだろう。
言って良い事なら聞かなくても喋る人だということはカイもよく知っていた。
だからあえてカイは話題を変えた。
「夫婦って言うには、タロさん尻に敷かれすぎだけどね。」
そう言ってジョーイが笑う。
「私が聞いた情報では、あの二人はあれでもまだくっついてないのよ~。」
そんなジョーイの笑いに釣られながら、マネージャーも笑いながらそう言った。
「ええー!?そうなんですかー?ちょっと!あははっタロさん何やってんのよ。」
マネージャーの言葉にジーコが笑う。
そこにいた四人がタロとリオの事でケラケラと笑う中、一人笑わない人物。
むすっとした顔で一人手酌酒のミルカに気がついたジーコは慌ててジョーイに目配せする。
「ミルカさん!大丈夫ですよ!あの二人、案外平行線たどってくっつかないかもしれませんし!」
ジョーイがこの話の流れにしまった!という顔をしたが時すでに遅かった。
「何が大丈夫だってのよ!!!別にあんな奴、誰とくっつこうが私には関係ないわよ!!なんなのよ!!」
ミルカがそう叫ぶと、ジョーイがつごうとして持っていた芋酒の瓶を奪うと、直接口につけてラッパ飲みを始める。
「ばあああーか!!ばああーか!!タロのばああーか!!!」
そう叫ぶとともに立ち上がると、さらにその瓶をラッパ飲みする。
ラッパの高さが頂点にまでくると、
「もう無くなったわよ!!!次持ってきなさいよおおおーーーー!!」
と、瓶をぶんぶん振り回しながらさらに叫んだ。
『あ~あ…始まっちゃったよ…。』
カイ、ジョーイ、ジーコの三人はお互い顔を見合わせると全く同じ事を思い、そして「はあ…。」と三人同時にため息をついた。
『暴れる前に、潰れてほしかった…。』
そんな四人を見てギルドマネージャーは微笑みながら、手に持っていた酒を一口付けた。
5
そんな集会所の宴会と同時刻。
ここはタロの家、アイルーキッチン。
キッチンにあるテーブルに男一人と女二人が、アイルー達の作った夕食を食べ終えて酒を飲んでいた。
食後の、「後は寝るだけ」という今日の日程に、流れる時間もゆっくりなそんな一時。
「しかしリオがねえ。男と住んでるとは…本当にびっくりしたよ!」
そんな一時の中。女二人の内の一人、ロウがリオに話しかけた。
「いや…これは、私も仕方なくだから!久しぶりにポッケ村に帰ってきたら私の家、この人に使われちゃってたから。」
目線を宙に泳がせながらリオがボソボソと答えた。
そんなリオを見て、ロウはニヤニヤといやらしい顔をする。
「へえ。私と街で住んでた時は身持ちが堅かったのに。住む家がないから同居という選択とは、リオらしくないねえ。」
ロウはからかうように言った。
「いや…だから!仕方ないの!私らしくなくて悪かったわね!」
そんなロウの言葉にリオはムスっとした顔をした。
そんな慌てるリオを、タロはもの珍しそうに見ている。
ここ最近の同居生活でタロはリオに対して全くイニシアチブが取れなかった事から、久しぶりに見るリオの慌て顔をちょっと半笑いな顔で見ていた。
ここ最近、俺はリオに怒られてばかりだったからなあ…。
ロウに茶化されている対象が自分も「込み」だとは気が付いていたが、そんな事よりも今はリオの慌てる顔を見れる事が嬉しいようで、タロは特にロウに向かって何も言おうとはしなかった。
むしろ、もっと言ってほしいと思うタロがいた。
まあそれだけタロはここ最近、ずっとリオの尻に敷かれていたわけだ。
「…ちょっとタロさん?なんか変な笑顔してるけど…。」
ロウが少し「引き気味」でタロに話しかける。
リオが押される所を見てニヤ付いていたタロの顔はどうにも薄気味悪かったようだ。
「ああ。すまんすまん。」
はっと我に返ると、ちょっと照れたようにタロが笑った。
「まあロウが言いたい事は解るけど。本当に訳ありでね。リオの事は温かく見守っていただけると。」
そう言ってタロはハハハッと笑う。
「なんであなたが『部外者』ヅラなのよ!?」
リオは顔を赤くしながらそう言うと、タロの耳をひっぱる。
「いたたた…っ!!ちょっと!リオさん!?」
引っ張られたタロは思わず「すいませんでしたっ!」と叫んでいた。
そんなやり取りを見ていたロウは、「へえ。」と呟くと、ちょっと驚いた顔をした。
リオ、なんか変わったな。
私と街に住んでた時は絶対こんな顔しなかったのに。
街に住んでた時はずっと何かに悩んでるって感じだった。
出会った当初からリオには過去に何かあったんだなって思わせる「翳り」みたいなものがあった。
だからと言ってそこに踏み込ませようとしないリオの意思が解ったから、何も聞かなかったけど…。
多分、リオの「翳り」の原因はこの「人」の事だったんだね。
良かったね、リオ。
そんな風に思うとロウはフッと微笑んだ。
「で、ロウ。なんで今日はここに来たの?あなたが私に挨拶するためだけにここに来るとは到底思えないけど…。」
タロを叱りつけて一段落付けると、リオが改めてロウの方に向いた。
隣ではタロがシュンっとしている。
「え?ああ、いやあここに来たのはついでさ。ちょっと人探しでそこの集会所まで来たからさ。」
物思いに耽っていたロウが、リオに語りかけられてハッと頭を上げた。
「人探しでここまで…?集会所1番に用がある人なんて限られてるのに…。」
リオがそう呟いて、ロウと関係がありそうな人を思い出す。しかしそんな人はまるで出てこない。
「ああー。私もさ、今日聞いたんだよね。私の探してる人がここに向かったって。」
そう言ってロウはフッとリオから視線を外した。
ロウは自分のその言葉で、今日のグスタのやりとりを思い出して急に恥ずかしくなってしまったのだ。
そんな「照れ」を見られたくないようで、ロウはリオの方を見ないようにしている。
「…。ねえ、ロウ。あなたの探している人って男の人…?」
そんなロウの態度にピンと来たリオは、思いついた事を質問する。
「えっ!?…ああ、まあ。そうだけど…?」
ビクッと肩を上げると、ロウはさらに顔を見られないようにリオから顔をそむけた。
「へえ~。」
攻守交代の鐘の音が鳴る。
リオがニコニコした顔でロウを見る。
「じゃあ私達も一緒に探してあげるわよ。」
そんな提案をするリオに、ロウは慌てて手を振り、
「良いって!良いって!や!本当に大した用事じゃないんだ!その人!」
と、言ってリオの顔を見た。
そんなリオの顔は楽しそうに笑っている。
「何よ?その顔…。」
リオの楽しそうな顔にロウは嫌な予感がした。
「あなた、本当に解りやすいわよね。大した用事がある訳でもないのになんでここまで追いかけてきたの?」
リオは笑顔を崩さないままそう質問する。
「え?いや、ただ…ほら。暇だったから…。」
動揺を隠せないロウがいた。上手い言い訳が見つからない。
「暇だからって宿も無いこんな村に来るの?何より顔が赤いわよ?」
そう言ってリオはロウの顔を指差す。
「え!?」
ロウはそう言うと、思わず頬を両手で隠した。
「嘘よ。」
リオがニヤニヤしながら言う。
「嘘なの!?」
ロウが思わず叫ぶ。
「いやいや赤いよ。」
タロが馬鹿正直に、二人のやりとりに笑いながら本当の事を言う。
「…。」
バタンッ。
タロの一言が止めだったようで、もう諦めたと言わんばかりに大きなため息とともにロウはテーブルに上半身を投げ出した。
「グスタにも言われたんだ…解りやすいって…。」
テーブルに上半身を投げ出して、ロウが呟いた。
「グスタって人は解らないけど同意見ね。解りやすいわ、あなた。」
そんなロウの呟きに、リオが笑いながら答えた。
6
ロウがアズを意識したのはもう一年も前の事。
本当に些細な事だった。
ちょっとした事。
―――――「きっかけ」なんてそんな事。
一年前のある日。ある時間。
大闘技場の門の所まで来て、ロウは砥石を忘れた事に気が付いた。
「しまったなあ。今から取りに帰ったらクエストの予定時間に間に合わないし…。」
そんな呟きをした時だった。
「これを使いなよ。」
不意にそんな声が後ろから聞こえた。
一人の門番兵が手に砥石を持っていた。
「ずっと持ち歩いていたから、ちょっと汚いけどさ。」
そう言って照れくさそうに笑う門番兵。
差し出された手には、確かにお世辞にも綺麗とは言えない一つの砥石が乗っていた。
「良いのかい?なんかお守り代わりとか、願掛けとかに使ってたっぽいけど。」
綺麗とは言えないが、でもその砥石は大事そうに紙に包まれていたようで、手の平に乗っている砥石の下には紙が敷かれている。
「ああ、別に良いんだ。砥石も使われてこその砥石だろう?俺はもう…使う事は無いからさ。」
そう言って差し出す門番兵は少し寂しそうな顔で笑っている。
「…ありがとう。」
差し出された砥石を受け取ると、ロウはそう言って手を上げてお礼をした。
「おっちょこちょいハンター。がんばれよ!」
そう言って笑うと、その門番兵は自分の勤務位置に戻って行った。
手の平に乗っている、紙に包まれた砥石。
ロウはそれを見て、あの門番兵はなぜこんな紙に包んで持ち歩いていたんだろうと考えた。
受け取りはしたものの、なんか使う気になれない…そんな砥石。
結局ロウは大闘技場にある携帯砥石で全てをまかない、そんな紙に包まれていた砥石は今も使わずに持っている。
人を意識する「きっかけ」なんてそんなもの。
好きか嫌いかなんてはっきりとしたものなんてまだ芽生える訳ではないが。
人を意識する理由なんてそんな些細な事。
「…とまあ、そんなありきたりな事だった訳よ、最初なんて。…でもさ、そこからなんか意識し出しちゃった訳なのよね…。」
ここまで語ったロウの顔は真っ赤だった。
それから今日、ロウはグスタからアズが門番を辞めたと聞き、もう会えないと思ったら勝手に足が動いていたそうだ。
こういう事に慣れていないのだろう、ロウはアズを追いかけてきたものの自分でもどうすれば良いのか、どうするべきなのか解かってはいなかった。
「でもさ!ここで追いかけないと…もう会えない気がして…。だから、まあ偶然装ってなんとか会おうと思ってここまで来たけど…。」
そう言うと、ロウはテーブルに両手を投げ出し顔を伏せる。
こんな辺境の集会所にまできて、やあ偶然☆久しぶり!
…なんか…無理ないか…?タロはそう思ったが、敢えて口には出さなかった。
「会ったら会ったで…なんて言えば良いのかなあ。」
ロウはそんな呟きをもらしたまま、その姿勢のまま動かなくなった。
そんなロウの話を聞いていたタロとリオは、どうしたもんかと目を合わせた。
「とりあえず、明日そのアズさんって人に会いましょうか。丁度私達も明日クエストに出るつもりだったし。とりあえず集会所で待ってれば帰って来るんでしょ?」
リオがそう言うとロウの肩をぽんっと叩く。
「うん…。」
ロウがテーブルに突っ伏したまま頷くと、その後ゆっくりとその顔を上げた。
上げた顔の頬はまだ赤く染まっている。
「でもそのアズさんって人、なんでこんな辺境の集会所になんて来たのかしら。街の集会所の方が全然近いのに…。」
リオが思った事を口にすると、ロウは視線を上げてリオを見た。
「なんか人探しをしてるんだって。グスタがそう言ってた。誰を探してるかまでは解らないけど…。」
まさかそのアズの探している人物が今ロウの目の前にいる事も露知らず、ロウはうーんと頭を唸らせている。
「まあとにかく、今日の所はもう寝ましょうか。アズさんを集会所で待つとしても、帰って来る時間が解らなければ会えないしね。明日は朝一番に行って、帰って来るのを待ってましょうか。」
リオはそう言うと席を立つ。
釣られてタロもロウも席を立った。
「皆、もう良いのかニャ?」
席を立った三人に、キッチンカウンターで明日の仕込みをしていた料理長のガルが声をかける。
「うん、ありがと、ガル。今日もおいしかったよ。」
そう言ってリオはガルに微笑むと、ガルは嬉しそうに眼を細めた。
三人がキッチンから出て行った後。
ガルは明日の仕込みの手を止めずに、横でこんがり肉を焼いていたアシガルに話しかけた。
「さっきのご主人達の話、あれは『イロコイザタ』というヤツかニャ?」
「そうだニャ。今日来たお客さんが恋の悩みをご主人達にうちあけていたニャ。」
肉をクルクル、おぼつかない足取りで肉焼き機を回すアシガルが答える。
「ご主人達にそんな問題わかるのかニャ?二人とも自分達のことも碌に解決できてないのに。」
トントントン…と、手に持つ包丁を滑らせながらガルが呟く。
「ニャ!料理長も解ってきたニャ。その通りニャ。本当にあの二人はもどかしいニャ。」
えっちらおっちら、肉焼き機を全身を使って回すアシガルが答える。
「アシガルの横にいると色々と解ってくるニャ。なるほどニャ。」
ガルが呟く。
「だからボクはいつも言ってるニャ!どうしてこうボク達みたいに素直になれないかニャ~と!ご主人達は好き合ってるのに全然くっつく気配が無いニャ!」
少し怒り気味でアシガルが言う。
「本当ニャ。早くボクも料理長として、ご主人とリオの子供においしい料理を作ってあげたいニャ。」
ガルが今後のちょっとした夢を語る。
「早くそんな日が来ると良いニャ~。」
そんなガルの夢に共感したアシガルがうっとりする。
まさかキッチンアイルー達に、こんな風に心配されてるとも二人は思ってないだろう。
そんな「アイルー心、ご主人知らず」な状況はまだ当分続きそうだ。
今日という日が、静かに終わりを告げた。
集会所編3に続く