※注意!!※
・これは素人が書いた「創作物」です。この手の事に興味のない方、苦手な方は読まない事をお勧めしておきます。いや、本音としてはは読んでほしいですけど…。
・モンスターハンターP2Gの公式設定をかなり無視しております。
・多数の中二病設定が使われております。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「生きて。」
そう言ってあの時笑ったお前は、もういない。
お前がいなくなってから2年の月日が流れたね。
もう、この刀を持つことも無いと思っていた。
でも…。
感動したんだ。
この前のあの「男」に。
もう一度見たいんだ。
あの「絶景」を。
何のために狩るのかって…?
解らない。
でも…やはり俺の居場所はここじゃない。
あの「男」なら、知っているかもしれない。
「狩人」の行くべき場所を。
俺の進むべき道を。
タロの「モンスターハンター」達成から数日後。
大闘技場の門番の一人が、辞表を提出した。
その辞表の紙に書かれていた名前は「アズ」。
「アズ・ルードリア」という名前が書かれていた。
1
良く晴れたそんな日。
街から砂漠方面に向かって半日歩いて行くと、そこには「大闘技場」がある。
砂漠に近い事もありその近辺での平均温度は常時汗をかくほどで、人が住むにはちょっとした覚悟がいるほどの居心地の悪い場所だ。
そんな場所に大闘技場に向かって、一人の少女が歩いていた。
全身を黒一色に染める、ナルガX装備に身を包んだ少女。
腰にはハンマーを担いでいる。
この暑い中、平然とした顔で足取り軽く歩いていた少女は、目の前に大闘技場が見えるのを確認するとさらにその足取りを早くした。
大闘技場の入り口が見える所までくると、もう彼女は走っている。
そんな彼女の顔は心なしか嬉しそうだ。
門番として警護している兵士を確認すると、その少女はその門番に対して声をかけた。
「こんちはーー!!グスタ!!久しぶり~。」
その少女に声をかけられて一人の兵士が振り返る。
その少女と目が合うと、グスタと呼ばれた男は笑顔になった。
「おお!ロウじゃないか!久しぶりだな。今日も闘技場のクエストか?」
ロウと呼ばれた少女はグスタの問いにニコニコしながら、
「うん!やっと闘技場も通常通りに運営されたからね~。真っ先にクエスト入れてきちゃったんだ。」
と、答える。
「ああ、ここ一カ月は各国の来賓やらなんやらの厳重警戒で、闘技場は一般人には全面閉鎖だったからな。でも、それももう終わったよ。」
グスタがそう言うと、
「一体何があったのさ?私がここに来るようになってからは初めてだよ、そんな事。」
と、ロウが首をかしげながら聞く。
「ああ…。まあちょっとした『儀式』さ。数年に一回、行われるんだ。」
グスタはそう言うと大闘技場を見た。そんな大闘技場を見るグスタの顔はどこか楽しそうだ。
「儀式?…ふ~ん。各国来賓とか言ってる辺り、お上の『余興』なんでしょ?どの道一般人の私には関係ないけどさ。でも一カ月は長いよ!!このハンマーが錆びるかと思っちゃったよ!」
面白くなさそうな顔でロウがそう言う。
「まあそう言うな。今回のは中々面白かったのさ。」
グスタは笑顔で呟き、そしてそのままロウに話しかけた。
「しかもお前の言うその『余興』が原因で、人生をくるっと変えちまった馬鹿もいるんだからさ。あながち…お前も関係無いとか言ってられないかもよ。」
ロウの顔を見ながら、グスタは口元を上げて笑う。
「?」
ロウはそんなグスタの言葉と顔に首を傾げた。
「今日は…お前のお目当てのアズはいないぜ。」
含み笑いをしながら言うグスタの言葉に、ロウは徐に顔を赤くした。
「ちょーーーっと!!何言ってんのよー!!そんなんじゃないわよっ!!何よ!!お目当てって!!」
いきなり声のトーンを一つ上げるロウを見ていたグスタは、
「お前は本当に解りやすいな。ずっとアズの勤務日にしか来なかったじゃないか、お前。」
と、言ってニヤニヤ笑っている。
「いやらしい笑いすんなっ!!このエロじじいっ!!」
そんなグスタの顔に腹が立ったようで、ロウはむくれっ面でそう叫んだ。
グスタはむくれっ面でさらに顔を赤くしているロウを見て、
「ははは。すまんすまん。まあでも正直な話、もうここに来てもアズには会えないぜ?」
と、すまなそうな顔で言った。
アズの言葉に、ロウが目を見開いた。
「え?」
聞き返しはしたものの、そのままロウが固まったように動かなくなる。
そんなロウを見て改めて、
「いやアイツ…門番を辞めちまったのさ。ハンターに戻るんだと言ってな。」
と言って、グスタは微笑んだ。
「え…アイツ、元はハンターだったの?」
そのグスタの言葉でロウがやっと動く。
「なんだ知らなかったのか。そうだよ、アイツは元ハンターさ。G級ライセンスの取得直前までは行ってたんだけどな。そのG級直前で何かあったらしくてな、それが原因で辞めちまったんだとさ。」
グスタは過去にアズ本人から聞いたことを思い出すように説明した。
「G級…直前まで。」
ロウがそう呟くと、グスタは頷く。
「ああ。けっこう有名だったんだぜ。集会所のクエストをこなす速さが人並み外れてて話題になったヤツがいたんだが、それがアズ本人だったとはな。聞いたときはびっくりしたもんさ。」
そう言ってグスタは笑った。
しかし、そんなグスタの笑いに釣られる事はなく、ロウが聞く。
「何があったの…?そのG級直前に。」
そこまで難なくこなしてきた者が、急にハンターを辞めるにまで至ってしまった理由。
ロウはそこに漠然とした不安を感じた。
先ほどの赤らめていた顔はもうそこには無い。
「さあ…な。」
そんな呟きをするグスタの顔にも、先ほどの笑顔はなかった。
「まあ何にしてもだ。アズはもうここにはいないぜ。ロウ…知りたいならアズの最寄りの集会所を教えてやるけど?」
グスタが話題を変えるように言うとロウは先ほどの顔から一変、またしても顔を赤くする。
そんな顔の変化にグスタは笑いをこらえるのに必死だ。
「だ・か・ら!!別にアズに会いたくて来てる訳じゃないから!!」
ロウはそう言うとフンッとグスタから顔を逸らし、闘技場の中にスタスタと入って行こうとする。
「あれ…良いのかい?本当に。今聞かないと会えるアテが無くなっちゃうぜえ~。なんでも人探しするっていうから、アズ。これから集会所転々とするだろうしなあ。」
グスタがからかうようにロウの背中に語りかけた。
ぴたっ。
そんな効果音でも聞こえてきそうなほど、ロウは綺麗に足を止めた。
そんなロウを見てさらにニヤニヤするグスタ。
「今なら、アズの行く集会所が解るんだけどなあ~。」
グスタのその一言で、ロウはくるりと反転するとグスタの所に走って来る。
そしてそのままグスタの襟を両手で掴むと、
「本っ当に誰かに言ったら私の得意の縦三ハンマー、あなたの頭にぶち込むからね…。お、教えてもらいましょうか…?その集会所の場所を…っ!!」
と、顔を真っ赤にしながらロウは小声で聞いた。
「おお!素直なのは良い事だぜ。アズは…ポッケ地区集会所1番さ。行ってみ…な。」
笑いを堪え切れないグスタはもはや半分笑っている。
そんなグスタの顔を見てロウはさらに顔を赤くすると、ばっと手を離し今度は先ほど来た道を走って行った。
それを見ていたグスタが遂に大笑いをする。
そんな笑い声を聞いたロウはまたぴたりと足を止めてふり向くと、
「このクソじじい!!本当に夜中、気をつけろよ!!」
と、叫んだ。
そんな捨てゼリフにも似たロウの叫びに、グスタは笑いながら、
「ああ!解ったから!!色々がんばれよ!!」
と叫び返す。
「死ね!!!」
そう言い残して、今度は振り返りもせずにロウは走って行った。
グスタは腹を抱えて笑っていたが、ロウの背中が見えなくなるととポツリと呟く。
「誰にも言うなって…門番の間じゃみんな知ってる事なのにな。若いって良いなあ。」
そう言ってロウが消えていった道を微笑みながら見つめる。
「さて…今日の闘技場クエストは一つキャンセルっと…。受け付けに言ってこないとな。」
そんな呟きと共に、グスタは闘技場の中に入って行った。
2
良く晴れたそんな日。
この国には数えきれないほどのモンスターの依頼請負「集会所」があるが、それも地区ごとに番号を名称として各地に点在している。
ここはポッケ地区の集会所1番。
その1番集会所の中央にあるテーブルに一人の男が座っていた。
先日まではガーディアンスーツに身を包み、大闘技場の門番兵として立っていた男、アズだ。
今は下位の装備であるレウス装備を着て、背中には太刀を担いでいる。
手にフラヒヤビールを持ち、特に誰と連れ立ってる様子もなく、一人で酒を飲んでいるようだった。
ここも…二年振りか…。
アズは手に持っていた酒に口をつける。
久しぶりのクエスト、とにかく昔の感覚を取り戻さなければな。
まずは下位辺りで腕慣らしして、「狩猟」を思い出そう。
まだちょっと「上位」に行くのは怖いからな…。
怖い…か。
いや、そんな感情じゃないな。
アズはそこまで思うとフッと自虐的に笑い、手に持っていたフラヒヤビールを一気に口の中へ流し込んだ。
「おっしゃ。とりあえずは始めようか。」
そんな独り言とともに立ち上がると、アズは受け付けの下位担当の女の子の所へ足を向ける。
一度集会所をキョロキョロと誰かを探すように見回すが、
「まあ…そう簡単には見つからないよな。」
と、ため息一つ、下位担当の子の方へ歩いて行った。
下位でもまだこなしてないクエストがいくつもあったな。
まずはそれから回って行こうか。
そう思い、下位担当の女の子にアズは声をかけた。
自分のギルドカードを受付の子に見せて、こなしていないクエストを確認する。
依頼リストをパラパラめくっていると、そこにアズの目を惹く一つの依頼内容があった。
成功条件:リオレウス亜種一頭の討伐
報酬金:6600z
指定地:森丘
「森丘のレウスか…。」
そう呟くアズの声は少し嬉しそうだ。
「懐かしいな。」
アズは受付の子にこのクエストを受注したいと頼むと、リストから依頼書を出してもらい自分の名前を書き込んだ。
「もうすぐに出発されますか?」
受付の子が聞くと、アズは頷く。
「解りました。では半紙をお渡ししますね。ご武運を。」
そう言ってその受付の子は依頼書のギルド公式の判子が押されてある部分を半分に切り取ると、アズに渡した。
「ありがとう。」
アズはそう言って微笑むと半紙を受け取る。
「ああ、そうだ。君に聞きたいことがあるんだけど…。」
半紙を懐にしまいながらアズは受付の子に訪ねた。
「なんでしょう?」
あくまでも業務口調の受付の子は、にっこりとほほ笑みながら聞く。
「タロ…。タロ・ライドって男、知ってるかい?」
名前を思い出すように、アズはゆっくりとその男の名前を出すと、受付の子が目を見開いて、
「またタロさんを訪ねる方だ!」
と、びっくりした顔になった。
「知ってるのかい?」
ちょっと予想外な反応に、今度はアズが驚く。
「知ってるも何も、そこのポッケ村の村専属ハンターですよ。まあウチの集会所の常連さんです。タロさんに何か用でもあるんですか?」
業務口調から一変、受付の子の声が地声になった。
その子の「タロ」を語る声の変化で、アズはタロがここに良く来るんだと悟った。
「あ?いやあ、特に用があるわけじゃないんだけどさ。ちょっと有名人だから、見てみたいなってさ…。」
いきなりタロの知人に会ってしまって、アズは動揺している。
「でも今日はもうクエストこなして帰っちゃいましたから、ここに来るなら早くても明日になるかと思いますよ。」
受付の子がそう言うと、アズは手を振る仕草をしながら、
「ああ!大丈夫大丈夫!俺もクエスト受けたし。この時間からだったら森丘のベースキャンプに一泊する事になりそうだしね。」
と、答えた。
「ありがとう。じゃあ行って来るよ。」
そう言ってアズは集会所の入り口とは反対側の扉に向かった。
アズが扉の方に向かって歩いて行くのを下位担当の受付の子が見送っていると、横にいた上位担当の子が話しかけてきた。
「またタロさんを訪ねる人?」
緑のベストを着た上位担当の女の子、ジョーイが聞く。
「うん。リオさんが帰ってきてから、タロさんの周りがなんか騒がしくなってきたね。」
下位担当の子、カイが頷きながらそう答えた。
「本当よ。ミルカさんはリオさんが帰ってきてから、毎日ここに来てるし。」
ジョーイはそう呟くと、クエスト掲示板の方をチラッと見る。
釣られてカイも掲示板の方を見た。
今日もミルカは腕を組んで掲示板の前に立っている。
「そして今日はギルドマネージャーもいるし。」
ジョーイはそう言うと今度は逆側の方を向く。
釣られてカイも入り口の方を向いた。
入り口の近くにはギルドマネージャーが立っている。
「二人揃うと…始まっちゃうからねえ…宴会。」
二人のやり取りをさらに横で頬杖を付いて見ていたG級担当の女の子、ジーコが二人に話しかけた。
三人が互いに目を合わせる。
「はあ~。」
そんなジーコの言葉に、カイとジョーイはため息をついた。
扉の近くに立っていた、何かしらの貝でできた笛を持つ男がアズを見ると、
「クエスト受注者の方ですか?」
と、アズに声をかける。
「ああ。これから森丘だよ。」
アズはそう言って微笑む。
「ご武運を。」
その男はそう呟いて微笑み返すと、何かしらの貝でできた笛を口に加えた。
プァ~プォ~
少し間抜けな、でも不思議と力の入る、そんな音。
そんな音を背に、アズはその扉をくぐり抜けた。
3
アズがクエストに旅立ってから数刻後、このポッケ地区1番集会所に一人の少女が入ってきた。
全身を漆黒に染めるナルガX装備に身を包んだ少女、ロウだ。
ロウは集会所に入ると、まずは上位担当の子の方に歩いて行った。
ジョーイはロウが近づいてくるのを確認すると、
「こんにちは。クエスト受注ですか?」
と、ロウに向かって話しかけた。
「こんちはっ!いや、ちょっと人探しをしててさ。今日ここに『アズ』って男のハンターが来なかったかい?」
ロウはジョーイにクエスト受注ではないと解ってもらうように、手を横に振りながらそう言う。
「『アズ』…さんですか?いや、私の所にはそんな人…。」
ロウに聞かれて今日の受注者名を思い出しながら答えたが、ハッと思い出したような顔をすると、ジョーイは隣のカイに話しかけた。
「ねえ。さっきタロさんの名前を出した男の人、名前『アズ』って人じゃなかった?」
そんなジョーイの問いかけに、隣で今日の受注者リストをまとめるために目の前の書類に目を通していたカイが頭を上げた。
「え?『アズ』…さん?えーと、ああ。確かに『アズ』さんですね。」
ジョーイと目の前にいるナルガX装備の少女を交互に見ながら、カイは手元の依頼書の名前を確認する。
「あれ…。アズ、下位のクエストを受注したんだ。」
ロウがそんな呟きをすると、
「ええ。アズさんは今日、リオレウス亜種のクエストを受注してますね。」
と、目の前にある依頼書を見ながらカイが答えた。
「そっか。ありがと!どれ位前に行ったか解かる?もし今日中に帰ってくるならここで待ってようと思うんだけど…。」
ロウが改めてカイに向き直してそう聞く。
「ああ。確か数刻前ですね。アズさん自身が言ってましたけど、おそらく今日は森丘のベースキャンプで一泊するって。」
カイがロウの質問に答えると、ロウは顔を曇らせた。
「そうか。どうしようか…。」
「ポッケ村には宿泊施設、無いですからねえ。」
そんなロウの悩みに、カイがさらに追い打ちをかける。
しかし、そんなカイの言葉にロウはパッと顔を輝かせた。
「ああー!そうか。ここ、ポッケ村か~。ねえねえ、『リオ』。『リオ・アズベル』ってハンター知ってる?」
ロウはカイに身を乗り出すように聞くと、
「え?リオさんのお知り合いの方なんですか?」
と、カイが驚いたような顔をする。
「知り合いも何も、つい先日までリオと同居してたんだ。街でね。そんな返し方してくるって事はリオの事、知ってるんだ?」
リオの事を知っている素振りを見せたカイに、ロウは期待の目で見つめた。
「知ってるも何も有名人ですからね、リオさん。知ってますよ~。」
カイはさも当然と言った感じで話す。
「へえ。ここじゃリオって有名人なんだ。私と暮らしてた時は地味に生きてたのに。」
そんな事を言いながらロウはケラケラ笑った。
「リオさんに地味って…。なんかとんでもなくすごい人なのかしら…。」
隣で聞いていたジョーイが思わずカイに小声で話しかける。
「うーん…。そんな風にも見えないけどね…。」
マジマジとロウを見ていたカイもジョーイに小声で返した。
「ねえねえ。リオの家の場所、教えてもらえないかなあ。」
そんなロウのお願いにカイとジョーイがどうしたもんかと顔を見合わせていると、集会所の入り口の方から声が聞こえてきた。
「ちょっ…!ロウじゃない!なんであなたがここにいるのよ!?」
そんな台詞とともに、集会所の入り口に二人の人物が立っている。
「あ!リオさん!タロさん!」
入り口にいる二人の人物を見て、思わずカイが叫んだ。
そこに立っていたのは、リオとタロだった。
集会所編2に続く
・これは素人が書いた「創作物」です。この手の事に興味のない方、苦手な方は読まない事をお勧めしておきます。いや、本音としてはは読んでほしいですけど…。
・モンスターハンターP2Gの公式設定をかなり無視しております。
・多数の中二病設定が使われております。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「生きて。」
そう言ってあの時笑ったお前は、もういない。
お前がいなくなってから2年の月日が流れたね。
もう、この刀を持つことも無いと思っていた。
でも…。
感動したんだ。
この前のあの「男」に。
もう一度見たいんだ。
あの「絶景」を。
何のために狩るのかって…?
解らない。
でも…やはり俺の居場所はここじゃない。
あの「男」なら、知っているかもしれない。
「狩人」の行くべき場所を。
俺の進むべき道を。
タロの「モンスターハンター」達成から数日後。
大闘技場の門番の一人が、辞表を提出した。
その辞表の紙に書かれていた名前は「アズ」。
「アズ・ルードリア」という名前が書かれていた。
1
良く晴れたそんな日。
街から砂漠方面に向かって半日歩いて行くと、そこには「大闘技場」がある。
砂漠に近い事もありその近辺での平均温度は常時汗をかくほどで、人が住むにはちょっとした覚悟がいるほどの居心地の悪い場所だ。
そんな場所に大闘技場に向かって、一人の少女が歩いていた。
全身を黒一色に染める、ナルガX装備に身を包んだ少女。
腰にはハンマーを担いでいる。
この暑い中、平然とした顔で足取り軽く歩いていた少女は、目の前に大闘技場が見えるのを確認するとさらにその足取りを早くした。
大闘技場の入り口が見える所までくると、もう彼女は走っている。
そんな彼女の顔は心なしか嬉しそうだ。
門番として警護している兵士を確認すると、その少女はその門番に対して声をかけた。
「こんちはーー!!グスタ!!久しぶり~。」
その少女に声をかけられて一人の兵士が振り返る。
その少女と目が合うと、グスタと呼ばれた男は笑顔になった。
「おお!ロウじゃないか!久しぶりだな。今日も闘技場のクエストか?」
ロウと呼ばれた少女はグスタの問いにニコニコしながら、
「うん!やっと闘技場も通常通りに運営されたからね~。真っ先にクエスト入れてきちゃったんだ。」
と、答える。
「ああ、ここ一カ月は各国の来賓やらなんやらの厳重警戒で、闘技場は一般人には全面閉鎖だったからな。でも、それももう終わったよ。」
グスタがそう言うと、
「一体何があったのさ?私がここに来るようになってからは初めてだよ、そんな事。」
と、ロウが首をかしげながら聞く。
「ああ…。まあちょっとした『儀式』さ。数年に一回、行われるんだ。」
グスタはそう言うと大闘技場を見た。そんな大闘技場を見るグスタの顔はどこか楽しそうだ。
「儀式?…ふ~ん。各国来賓とか言ってる辺り、お上の『余興』なんでしょ?どの道一般人の私には関係ないけどさ。でも一カ月は長いよ!!このハンマーが錆びるかと思っちゃったよ!」
面白くなさそうな顔でロウがそう言う。
「まあそう言うな。今回のは中々面白かったのさ。」
グスタは笑顔で呟き、そしてそのままロウに話しかけた。
「しかもお前の言うその『余興』が原因で、人生をくるっと変えちまった馬鹿もいるんだからさ。あながち…お前も関係無いとか言ってられないかもよ。」
ロウの顔を見ながら、グスタは口元を上げて笑う。
「?」
ロウはそんなグスタの言葉と顔に首を傾げた。
「今日は…お前のお目当てのアズはいないぜ。」
含み笑いをしながら言うグスタの言葉に、ロウは徐に顔を赤くした。
「ちょーーーっと!!何言ってんのよー!!そんなんじゃないわよっ!!何よ!!お目当てって!!」
いきなり声のトーンを一つ上げるロウを見ていたグスタは、
「お前は本当に解りやすいな。ずっとアズの勤務日にしか来なかったじゃないか、お前。」
と、言ってニヤニヤ笑っている。
「いやらしい笑いすんなっ!!このエロじじいっ!!」
そんなグスタの顔に腹が立ったようで、ロウはむくれっ面でそう叫んだ。
グスタはむくれっ面でさらに顔を赤くしているロウを見て、
「ははは。すまんすまん。まあでも正直な話、もうここに来てもアズには会えないぜ?」
と、すまなそうな顔で言った。
アズの言葉に、ロウが目を見開いた。
「え?」
聞き返しはしたものの、そのままロウが固まったように動かなくなる。
そんなロウを見て改めて、
「いやアイツ…門番を辞めちまったのさ。ハンターに戻るんだと言ってな。」
と言って、グスタは微笑んだ。
「え…アイツ、元はハンターだったの?」
そのグスタの言葉でロウがやっと動く。
「なんだ知らなかったのか。そうだよ、アイツは元ハンターさ。G級ライセンスの取得直前までは行ってたんだけどな。そのG級直前で何かあったらしくてな、それが原因で辞めちまったんだとさ。」
グスタは過去にアズ本人から聞いたことを思い出すように説明した。
「G級…直前まで。」
ロウがそう呟くと、グスタは頷く。
「ああ。けっこう有名だったんだぜ。集会所のクエストをこなす速さが人並み外れてて話題になったヤツがいたんだが、それがアズ本人だったとはな。聞いたときはびっくりしたもんさ。」
そう言ってグスタは笑った。
しかし、そんなグスタの笑いに釣られる事はなく、ロウが聞く。
「何があったの…?そのG級直前に。」
そこまで難なくこなしてきた者が、急にハンターを辞めるにまで至ってしまった理由。
ロウはそこに漠然とした不安を感じた。
先ほどの赤らめていた顔はもうそこには無い。
「さあ…な。」
そんな呟きをするグスタの顔にも、先ほどの笑顔はなかった。
「まあ何にしてもだ。アズはもうここにはいないぜ。ロウ…知りたいならアズの最寄りの集会所を教えてやるけど?」
グスタが話題を変えるように言うとロウは先ほどの顔から一変、またしても顔を赤くする。
そんな顔の変化にグスタは笑いをこらえるのに必死だ。
「だ・か・ら!!別にアズに会いたくて来てる訳じゃないから!!」
ロウはそう言うとフンッとグスタから顔を逸らし、闘技場の中にスタスタと入って行こうとする。
「あれ…良いのかい?本当に。今聞かないと会えるアテが無くなっちゃうぜえ~。なんでも人探しするっていうから、アズ。これから集会所転々とするだろうしなあ。」
グスタがからかうようにロウの背中に語りかけた。
ぴたっ。
そんな効果音でも聞こえてきそうなほど、ロウは綺麗に足を止めた。
そんなロウを見てさらにニヤニヤするグスタ。
「今なら、アズの行く集会所が解るんだけどなあ~。」
グスタのその一言で、ロウはくるりと反転するとグスタの所に走って来る。
そしてそのままグスタの襟を両手で掴むと、
「本っ当に誰かに言ったら私の得意の縦三ハンマー、あなたの頭にぶち込むからね…。お、教えてもらいましょうか…?その集会所の場所を…っ!!」
と、顔を真っ赤にしながらロウは小声で聞いた。
「おお!素直なのは良い事だぜ。アズは…ポッケ地区集会所1番さ。行ってみ…な。」
笑いを堪え切れないグスタはもはや半分笑っている。
そんなグスタの顔を見てロウはさらに顔を赤くすると、ばっと手を離し今度は先ほど来た道を走って行った。
それを見ていたグスタが遂に大笑いをする。
そんな笑い声を聞いたロウはまたぴたりと足を止めてふり向くと、
「このクソじじい!!本当に夜中、気をつけろよ!!」
と、叫んだ。
そんな捨てゼリフにも似たロウの叫びに、グスタは笑いながら、
「ああ!解ったから!!色々がんばれよ!!」
と叫び返す。
「死ね!!!」
そう言い残して、今度は振り返りもせずにロウは走って行った。
グスタは腹を抱えて笑っていたが、ロウの背中が見えなくなるととポツリと呟く。
「誰にも言うなって…門番の間じゃみんな知ってる事なのにな。若いって良いなあ。」
そう言ってロウが消えていった道を微笑みながら見つめる。
「さて…今日の闘技場クエストは一つキャンセルっと…。受け付けに言ってこないとな。」
そんな呟きと共に、グスタは闘技場の中に入って行った。
2
良く晴れたそんな日。
この国には数えきれないほどのモンスターの依頼請負「集会所」があるが、それも地区ごとに番号を名称として各地に点在している。
ここはポッケ地区の集会所1番。
その1番集会所の中央にあるテーブルに一人の男が座っていた。
先日まではガーディアンスーツに身を包み、大闘技場の門番兵として立っていた男、アズだ。
今は下位の装備であるレウス装備を着て、背中には太刀を担いでいる。
手にフラヒヤビールを持ち、特に誰と連れ立ってる様子もなく、一人で酒を飲んでいるようだった。
ここも…二年振りか…。
アズは手に持っていた酒に口をつける。
久しぶりのクエスト、とにかく昔の感覚を取り戻さなければな。
まずは下位辺りで腕慣らしして、「狩猟」を思い出そう。
まだちょっと「上位」に行くのは怖いからな…。
怖い…か。
いや、そんな感情じゃないな。
アズはそこまで思うとフッと自虐的に笑い、手に持っていたフラヒヤビールを一気に口の中へ流し込んだ。
「おっしゃ。とりあえずは始めようか。」
そんな独り言とともに立ち上がると、アズは受け付けの下位担当の女の子の所へ足を向ける。
一度集会所をキョロキョロと誰かを探すように見回すが、
「まあ…そう簡単には見つからないよな。」
と、ため息一つ、下位担当の子の方へ歩いて行った。
下位でもまだこなしてないクエストがいくつもあったな。
まずはそれから回って行こうか。
そう思い、下位担当の女の子にアズは声をかけた。
自分のギルドカードを受付の子に見せて、こなしていないクエストを確認する。
依頼リストをパラパラめくっていると、そこにアズの目を惹く一つの依頼内容があった。
成功条件:リオレウス亜種一頭の討伐
報酬金:6600z
指定地:森丘
「森丘のレウスか…。」
そう呟くアズの声は少し嬉しそうだ。
「懐かしいな。」
アズは受付の子にこのクエストを受注したいと頼むと、リストから依頼書を出してもらい自分の名前を書き込んだ。
「もうすぐに出発されますか?」
受付の子が聞くと、アズは頷く。
「解りました。では半紙をお渡ししますね。ご武運を。」
そう言ってその受付の子は依頼書のギルド公式の判子が押されてある部分を半分に切り取ると、アズに渡した。
「ありがとう。」
アズはそう言って微笑むと半紙を受け取る。
「ああ、そうだ。君に聞きたいことがあるんだけど…。」
半紙を懐にしまいながらアズは受付の子に訪ねた。
「なんでしょう?」
あくまでも業務口調の受付の子は、にっこりとほほ笑みながら聞く。
「タロ…。タロ・ライドって男、知ってるかい?」
名前を思い出すように、アズはゆっくりとその男の名前を出すと、受付の子が目を見開いて、
「またタロさんを訪ねる方だ!」
と、びっくりした顔になった。
「知ってるのかい?」
ちょっと予想外な反応に、今度はアズが驚く。
「知ってるも何も、そこのポッケ村の村専属ハンターですよ。まあウチの集会所の常連さんです。タロさんに何か用でもあるんですか?」
業務口調から一変、受付の子の声が地声になった。
その子の「タロ」を語る声の変化で、アズはタロがここに良く来るんだと悟った。
「あ?いやあ、特に用があるわけじゃないんだけどさ。ちょっと有名人だから、見てみたいなってさ…。」
いきなりタロの知人に会ってしまって、アズは動揺している。
「でも今日はもうクエストこなして帰っちゃいましたから、ここに来るなら早くても明日になるかと思いますよ。」
受付の子がそう言うと、アズは手を振る仕草をしながら、
「ああ!大丈夫大丈夫!俺もクエスト受けたし。この時間からだったら森丘のベースキャンプに一泊する事になりそうだしね。」
と、答えた。
「ありがとう。じゃあ行って来るよ。」
そう言ってアズは集会所の入り口とは反対側の扉に向かった。
アズが扉の方に向かって歩いて行くのを下位担当の受付の子が見送っていると、横にいた上位担当の子が話しかけてきた。
「またタロさんを訪ねる人?」
緑のベストを着た上位担当の女の子、ジョーイが聞く。
「うん。リオさんが帰ってきてから、タロさんの周りがなんか騒がしくなってきたね。」
下位担当の子、カイが頷きながらそう答えた。
「本当よ。ミルカさんはリオさんが帰ってきてから、毎日ここに来てるし。」
ジョーイはそう呟くと、クエスト掲示板の方をチラッと見る。
釣られてカイも掲示板の方を見た。
今日もミルカは腕を組んで掲示板の前に立っている。
「そして今日はギルドマネージャーもいるし。」
ジョーイはそう言うと今度は逆側の方を向く。
釣られてカイも入り口の方を向いた。
入り口の近くにはギルドマネージャーが立っている。
「二人揃うと…始まっちゃうからねえ…宴会。」
二人のやり取りをさらに横で頬杖を付いて見ていたG級担当の女の子、ジーコが二人に話しかけた。
三人が互いに目を合わせる。
「はあ~。」
そんなジーコの言葉に、カイとジョーイはため息をついた。
扉の近くに立っていた、何かしらの貝でできた笛を持つ男がアズを見ると、
「クエスト受注者の方ですか?」
と、アズに声をかける。
「ああ。これから森丘だよ。」
アズはそう言って微笑む。
「ご武運を。」
その男はそう呟いて微笑み返すと、何かしらの貝でできた笛を口に加えた。
プァ~プォ~
少し間抜けな、でも不思議と力の入る、そんな音。
そんな音を背に、アズはその扉をくぐり抜けた。
3
アズがクエストに旅立ってから数刻後、このポッケ地区1番集会所に一人の少女が入ってきた。
全身を漆黒に染めるナルガX装備に身を包んだ少女、ロウだ。
ロウは集会所に入ると、まずは上位担当の子の方に歩いて行った。
ジョーイはロウが近づいてくるのを確認すると、
「こんにちは。クエスト受注ですか?」
と、ロウに向かって話しかけた。
「こんちはっ!いや、ちょっと人探しをしててさ。今日ここに『アズ』って男のハンターが来なかったかい?」
ロウはジョーイにクエスト受注ではないと解ってもらうように、手を横に振りながらそう言う。
「『アズ』…さんですか?いや、私の所にはそんな人…。」
ロウに聞かれて今日の受注者名を思い出しながら答えたが、ハッと思い出したような顔をすると、ジョーイは隣のカイに話しかけた。
「ねえ。さっきタロさんの名前を出した男の人、名前『アズ』って人じゃなかった?」
そんなジョーイの問いかけに、隣で今日の受注者リストをまとめるために目の前の書類に目を通していたカイが頭を上げた。
「え?『アズ』…さん?えーと、ああ。確かに『アズ』さんですね。」
ジョーイと目の前にいるナルガX装備の少女を交互に見ながら、カイは手元の依頼書の名前を確認する。
「あれ…。アズ、下位のクエストを受注したんだ。」
ロウがそんな呟きをすると、
「ええ。アズさんは今日、リオレウス亜種のクエストを受注してますね。」
と、目の前にある依頼書を見ながらカイが答えた。
「そっか。ありがと!どれ位前に行ったか解かる?もし今日中に帰ってくるならここで待ってようと思うんだけど…。」
ロウが改めてカイに向き直してそう聞く。
「ああ。確か数刻前ですね。アズさん自身が言ってましたけど、おそらく今日は森丘のベースキャンプで一泊するって。」
カイがロウの質問に答えると、ロウは顔を曇らせた。
「そうか。どうしようか…。」
「ポッケ村には宿泊施設、無いですからねえ。」
そんなロウの悩みに、カイがさらに追い打ちをかける。
しかし、そんなカイの言葉にロウはパッと顔を輝かせた。
「ああー!そうか。ここ、ポッケ村か~。ねえねえ、『リオ』。『リオ・アズベル』ってハンター知ってる?」
ロウはカイに身を乗り出すように聞くと、
「え?リオさんのお知り合いの方なんですか?」
と、カイが驚いたような顔をする。
「知り合いも何も、つい先日までリオと同居してたんだ。街でね。そんな返し方してくるって事はリオの事、知ってるんだ?」
リオの事を知っている素振りを見せたカイに、ロウは期待の目で見つめた。
「知ってるも何も有名人ですからね、リオさん。知ってますよ~。」
カイはさも当然と言った感じで話す。
「へえ。ここじゃリオって有名人なんだ。私と暮らしてた時は地味に生きてたのに。」
そんな事を言いながらロウはケラケラ笑った。
「リオさんに地味って…。なんかとんでもなくすごい人なのかしら…。」
隣で聞いていたジョーイが思わずカイに小声で話しかける。
「うーん…。そんな風にも見えないけどね…。」
マジマジとロウを見ていたカイもジョーイに小声で返した。
「ねえねえ。リオの家の場所、教えてもらえないかなあ。」
そんなロウのお願いにカイとジョーイがどうしたもんかと顔を見合わせていると、集会所の入り口の方から声が聞こえてきた。
「ちょっ…!ロウじゃない!なんであなたがここにいるのよ!?」
そんな台詞とともに、集会所の入り口に二人の人物が立っている。
「あ!リオさん!タロさん!」
入り口にいる二人の人物を見て、思わずカイが叫んだ。
そこに立っていたのは、リオとタロだった。
集会所編2に続く