刑事事件の判決が出ると,しばしばヤフーのコメント欄などに,「刑が軽すぎる!」「どうして執行猶予がつくのか?」「死刑にせよ!」などといったか書き込みが見られます。特に被害者が亡くなられたケースではそうです。

 

確かに,一般市民の方の感覚からすれば,犯人が数年で社会に出られるとか,ましてや刑務所に行かなくてよいというのであれば,「人を死なせておいてそれはないだろう」という気になることが多々あるかと思います。司法の場でも,そのような素朴な感覚を尊重することは大事だと思います。

ただ一方で,一般人の感覚ばかり目をやっていると,必ずしも望ましくない結果が生じることもあります。それが極端な形で現れたのが,過去のいわゆる魔女狩りや,(現代でも絶無とはいえない)人民裁判のようなものでしょう。

被告人への重罰を求める意見にも理由はあると思いますが,そのような発言をされる方は,果たして自分(あるいは親しい人)が裁かれる立場になった時のことを少しでも考えておられるのかなと疑問を感じることもあります。

「自分は犯罪など犯さないから,刑事裁判は関係ない」というのが多くの人の感情でしょうか。しかし,人は弱いもので,ふとしたことから人生の陥穽に落ちることもありえます。また,交通事故のように過失で人を死傷させる可能性や,あるいは冤罪に巻き込まれることも全くないとは誰が言い切れるでしょうか。

さらに,刑事政策的には,罪を犯してしまった人にも立ち直りのチャンスをできる限り与え,社会の一員として復帰できるようにしようという観点も必要です。

 

このように,司法の場では,一般市民感覚だけではない,多様な観点からの考慮が必要なのです。ですから,判決を批判することは当然自由ですが,そのような結論が出された背景をしっかりと考えた上での建設的な批判をしたいものです。

 

交通事故でも、相続関係の問題でも、その他どんなトラブルであれ、金額や規模の小さいことほど、意外と揉め事が大きくなるものです。

その原因として、①トラブルになると思っていないため、証拠になるものをそれ程残していないこと、②いざトラブルになったときは、記憶が各当事者に有利なように変遷し、③終には、お互いに相手の人格をとことんまで疑うようになってしまうといった不幸の積み重ねがあるように思われます。

このような現実にかんがみると、小さなことでもきちんと証拠を残しておくこと(少額でも借用書をとる、わずかな遺産でも遺言や分割協議をゆるがせにしないなど)は、関係者の人格尊重と末永い良好な関係保持のために必要・有効な手段であり、なおかつ相互の尊重を尽くす所以なのではと思います。

交通事故被害者の方が,まだ痛みやしびれ等の症状を訴えておられるのに,相手方保険会社がある時期をもって,「もう改善の余地がないと判断するので,これ以上治療費は払いません。」といってくることがあります。

これをしばしば「治療費の打ち切り」と呼びますが,そのような事態が発生したとき,後から「症状固定時期をいつとみるか」ということが問題になります。これは治療費・休業損害の支払い対象時期をどこまでとみるか,通院慰謝料の対象時期をどこまでとみるかという問題と直結するからです。

例えば,事故から4か月で治療費が打ち切られ,その後2か月健康保険での通院を行った場合,その2か月分の治療費・休業損害をどう見るか,通院慰謝料は4か月分か6か月分かということになるのです。

 

後遺障害等級が認定された場合,たいていは先ほどの例でいえば2か月分の治療費・休業損害・通院慰謝料を任意保険会社も認めてきます。

しかしながら,等級認定がされない場合,なかなか強硬な態度に終始することも多く,そのようなケースでは,被害者側代理人としては医師の意見書などをもって紛争処理センターなどに斡旋の申立てをすることになるのですが,比較的少額であるにもかかわらず,解決に相当の時間を要することも少なくありません。

 

自筆証書遺言は,手軽に作成できることから,一般的によく用いられる形式ですが,後で相続人間において争いになるリスクも低いとはいえません。

 

争いになりやすいポイントとしては,①遺言者の意思能力,②法的要件の欠如,③相続人の一部による隠匿・改ざんなどです。遺言者が亡くなったのち,相続人間で争いが生じれば,各当事者が自分に有利にことを運びたいと考え,何か主張できないかと考えて,あれこれと言い出すことが少なくないのです。

「うちに限って,そんな争いになるはずがない。」と考えておられる向きも少なくないでしょうが,実際に肉親から,突然に遺言の無効を主張され,衝撃を受けるということが少なくないのです。

特に意思能力については,高齢者の方には,認知能力に日によって差が大きい方もおられるため,問題になりやすいといえます。しかも,遺言の有効を主張する側は,遺言者の頭のはっきりしている時のイメージが強く,他方無効を主張する側は,遺言者の判断力が低下している時のイメージが強くなりがちですから(そのようなイメージは後になって強化されることも少なくありません),尚更争いは大きくなります。

 
遺言の効力をめぐって紛争が生じれば,最終的にどのような解決になるにせよ,決着がつくまでに相当の時間と費用がかかるのが通例でしょう。
そのためにも,効力のはっきりした遺言を作成されることが必要です。

 

 
 

 

前回は,遺言のうちでも普通方式遺言といわれるものについてお話しました。

今回は,特別方式遺言について説明します。

 

特別方式遺言とは,病気や事故により遺言者の死が目前まで迫っている状況で活用する遺言形式です。遺言者が,遺言作成より6ヵ月生存していた場合,その内容は無効となることに注意が必要です。

特別方式遺言には,緊急時遺言と隔絶地遺言の2種類があり,さらにその中での状況に応じて2種類の形式があります。

 

⑴ 危急時遺言

 ア 一般臨終遺言

  疫病やその他の有事により,遺言者に死が目前に迫っている状況で利用できる形式です。遺言者にのみ死が迫っている(周囲の証人には死は迫っていません)時に利用できます。

 3人以上の証人のもとで,遺言者が口頭で遺言内容を説明し,それを文章に書き起こすことで遺言としての効力が発生します。

 ただし,遺言書作成日から20日以内に裁判所に対して確認請求をしないと,遺言としての効力が消滅してしまいます。

 イ 難船臨終遺言

 船の遭難や飛行機の難航などが原因で,目前に死が迫っている状況で利用できる形式です。証人も含めて周りに死の恐れがある時に利用でき,これが一般臨終遺言との違いです。

 2人以上の証人のもとで,遺言者が口頭で遺言内容を説明しそれを文章に書き起こすことで遺言としての効力が発生します。

 遺言後,遅滞なく確認請求を受ける必要があります(20日以内などという期間制限はありませんが)。

 

⑵ 隔絶地遺言

ア 一般隔絶地遺言

 伝染病での隔離病棟治療中や刑務所に服役中など,死は迫っていないが自由に行動をすることができない状況で利用できる形式です。

 一般隔絶地遺言は警察官1人と証人1人以上のもとで,遺言者本人が遺言書を作成する必要があり,他社による代筆が認められない点が危急時遺言との違いです(警察官と証人の署名・押印が必用とされます)。

イ 船舶隔絶地遺言

 船舶中(遭難や疾病はない状況です)で死は迫っていないが,船の中で遺言書を作成したい状況で利用できる形式です。

 船長または乗務員1人と証人2人以上のもとで,遺言者本人が遺言書を作成するものです(船長または乗務員と証人の署名・押印が必要とされます)。