井上清の言説。民族教育について。(小熊英二著『民主と愛国』メモ) | 空・色・祭(tko_wtnbの日記)
一九五〇年代の日教組の教研集会では、在日児童の問題は、沖縄や被差別部落の問題、そして米軍基地周辺の風紀問題や平和教育などとともに、「民族教育」として同一の分科会で討論されることが多かった。そして「日本民族の自覚」を育てることは「朝鮮民族」との共存のためにも必要であるとされた。一九五八年一月の第七次教研集会で、討議をまとめた井上清は、こう述べている。


日本にいる他民族からその民族的権利を奪い、これを差別迫害することは、実は日本人自身の民族的自覚・民族愛をさまたげるものである。このことは、端的に言えば在日朝鮮民族を一段低いものとする日本人は、アメリカ人には卑屈なものであるという目前の事実をみれば明白である。朝鮮民族の民族的権利の尊重は、同時に日本人の民族的権利の擁護と一体にあるものである。ことに教育の場では、朝鮮民族子弟の教育をいいかげんにするという事実を見せながら、日本人の子どもに正しい国際理解や世界平和の擁護や民族的自覚をもたせることはできない。・・・・・・朝鮮民族子弟に正しい民族教育をすることが、とりもなおさず日本人子弟にも正しい民族教育をほどこす場である・・・・・・。372p