ドイツの看護師であるサビーネMベッカーさんが講師を務める「廃用症候群を予防するポジショニングセミナー」を受講してきました。
肺炎・関節拘縮・褥創は、慢性の病気を持った方をケアする上で最も注意が必要な点で、その予防が重要なのはドイツも日本も同じだそうです。
ただ、ドイツは日本に比べて関節拘縮の患者が少ないとのこと。ベッカーさんが言うには、「生活習慣の違いなどが影響しているのかも知れませんが、ドイツの看護が『患者の動き』を大切にするという考えを基本にしているのが大きいかもしれない」ということです。
例えば褥創予防に使用するエアマットは、体圧を分散して褥創を防ぎますが、体圧分散のために軟らかくなったマットの上は身動きがとりにくく、ただでさえ動けない人がさらに動けなくなり、関節拘縮を生じさせる恐れがあります。エアマットでも体位交換はしなければならない。体位交換は、褥創を予防するためだけでなく、患者が動く機会を作る意味でも重要な看護技術なのです。
ポジショニングというと、「安楽な姿勢をスタッフが作ってあげる」という認識でしたが、ベッカーさんは「患者が安楽な姿勢を求め、スタッフがそれを援助する」という姿勢が大切だと説明していました。
においや音は、初めは強く感じますが、長時間同じ環境にいると感じなくなってくるもので、これを「慣れ」と言います。においや音に限らず、人間はあらゆる刺激に「慣れる」動物です。
と同時に人間は、刺激に反応して(あるいは刺激を参照して)動く動物で、刺激がなければ動きは起こりません。これは体の面だけでなく心の面でも言える事です。
同じ刺激が続くとそれに慣れてしまい、刺激を感じなくなる。刺激を感じないことで動かなくなる。動かないことで動きを求めなくなる…これが心身の廃用症候群の根本にある仕組みなのです。
動くことが最も大切で、その障害を取り除くことが廃用症候群を防ぐことになります。
ドイツでは最近、「スモール・ステップ」というポジショニング方法を推奨しているそうです。
在宅で老老介護をしている介護者に効果的なポジショニングを指導してもできない。介護者が疲れずに、患者に効果的なポジショニングは何かと考えると、わずかな変化を高頻度で与えることだったとのこと。例えばクッションをしっかり当てて30度の体位を作らなくても、こまめに少しずつクッションをずらしていくだけで体は動き、患者はその動きを感じることができると。
PTやOTのように、短時間で良い影響を与えるという方法もありますが、看護や介護の場面では、長時間のかかわりならではの方法があるのですね。セラピストと看護・介護が交わって良いケアを作り出していく大切さを、改めて感じました。