テントの外は何やら騒がしく、他隊は既に行動しているようです。
我々も寝袋から出て準備に取り掛かります。
まずは食事、テント収納、そしてパッキングをすべて済ませてやっと出発です。
昨日より天候は良くない模様です。
枝には雪がこんもり積もってます。
ガスも掛かっています。
「でも、ここまで来たから、何とか頂上へ・・・。」
みんな今日は完全防備で出発です。
風も体感で毎秒少なくとも10mは有りそうです。
足は我慢できますが、手先がこのままだと耐えきれなくなりそうです。
白い雪の世界は過酷です。
わずかに残る踏み跡を頼りに一歩一歩進みます。
しかし、昨日より確実に天候はよくないです。
ピッケルを持つ手が徐々に冷たくなってきています。
30分も歩かないうちに我慢できなくて、手袋を補強します。
岩を巻くように登ったり下ったりして、ルートを辿ります。
雲と風の勢いが増したようです。
一度踏み跡を追っていたら、ルートとは違う所に出てしまいました。
後方の仲間に、ピッケルを振って
「バック、バック!」
ルート間違いです。
風も時折強く我々を叩いてきます。
大岩の前の雪壁を超えたところで、一旦停止。
もう少し前に進めます。
また停止。
この先には、岩の下をトラバースもあり、更にガチガチに凍った岩溝の登攀も有ります。
この風とガスの中、いつまでも仲間を曝しておくわけには行きません。
更にもっと荒天に成ることも有ります。
「撤退しよう。」
「了解です。」
仲間は私の意思に従ってくれて、下山することになりました。
仕方がない!
諦めよう!
大分下って来て後ろを振り返ります。
頂上はガスの中、先に出発した他隊の皆さんは大丈夫なのか、少々心配にもなりました。
無理をしないこと・・・。
しかし・・・。
しかたがない。
長い長い尾根を駐車場へむかいました。
車の中から見えた頂上はガスも無く、青空の中に白い頂を輝かせていました。