ほんの冷やかしのつもりだったんだ
ある日の仕事帰り
いつもの公園の横の道を歩いていたら
五本並木の草の上で
キラッと光るものを見つけたのさ
近づいて行って拾い上げてみると
名刺くらいの大きさの金色の紙で
「9月9日シニアの夕べ 極上の体験を」
そう書いてあったんだ
まさに今日の事じゃないか
なんの事かわからないが
そのキラキラに引き寄せられた事もあって
俺はそのシニアの夕べというものを
見て見たくなった
還暦まであと数年ある俺がシニアの仲間に
入れてもらえるかどうかはわからんけど
極上の体験とはなんぞや?
その日に限って俺は好奇心に勝てなくて
紙の裏に書いてある地図の通り歩いて
ここへ辿りついたってわけさ
まさかこんな古い神社の公衆トイレの横に
入り口があるなんて思わなかった
しかも、中に入ってみれば金ピカの世界で
腰が抜けて
しばらくそこに座り込んでしまったさ
こんな小さな町のこんな場所に
なんでこんだけの数の美人が揃っているのか
しかも皆シニアには見えない年齢で
それっぽいのは自分だけじゃ無いか
それでこれはきっと狐の悪戯だと
思ったのさ
しかし狐の奴め手が込んでいるというか
なかなか凝った事をしてくれるじゃないか
しかし残念だったな狐くん
俺の好みは
こんな背の高い
スッキリ整った顔の美人じゃなくて
もっと野暮ったい
ふっくらしたおばちゃんなのさ
こんなへとへとに疲れている夕べに
癒しを与えてくれるのはきっとそうなのさ
そんな妄想をしながら
俺は飲み屋街の
スナックがいくつも入っている
ビルの上の階から降ってきたと思われる
安っぽい源氏名の金色の名刺を
そっと木の根元の草の上に戻した

