もともと俺は駅のキオスクで


なかま達と一緒に壁にぶら下がっていた


旅行者が手に取って値段を確認する


そして10ドルちょっとの値段を見て


あっさり売れていったのさ



旅の間、俺は活躍したさ


その国の時間に合わせて


1時間ごとにピピッと鳴って時間を教える


旅人は俺を気に入って大事に扱ってくれたさ



結構いろんな国にも行ったね



ベッキオ橋の上で


俺をチラッと見た時のアイツの顔


今でもはっきりと覚えている



だが旅行が終わると


俺は机の引き出しに


俺と似たような奴らと一緒に入れられて


随分と長い時間が経ってしまった




時々、外の世界へ連れ出してもらう


チャンスがあったが


この頃はとんとご無沙汰さ



どうもひどくお気に入りの奴がいて


いつもソイツとつるんでいるみたいだ



チラッとソイツを見た事が有るけれど


燻んだ古くさい色の地味な奴だった



だが、きっとそこがいいのだろう



俺はすっかり意気消沈して


最近は特にボーっとしてる時間が増えている




俺はだんだんと薄れていく意識の中


最後の力を振り絞って


設定されていない時報を鳴らして


アイツにお別れを告げた