加藤良子は
誰もいない夜の公園が好きだった
夏の蒸し暑い夜も
真冬の雪がチラつく夜も
暗闇に、そこだけオレンジ色に浮かび上がる
公園の景色は
ほんの一瞬でも現実世界のしがらみを
全て忘れさせてくれたから
夜寝る前に見始めた映画がつまらなくなって
その日も気付けば
上着を羽織ってベンチに座って
動かないオレンジ色の景色を眺めていた
やがて身体も冷えて来たので
もう帰ろうかと立ち上がりかけた時
目の前に着物姿の年配の女性が立って
穏やかな顔を静かにこちらに向けていた
「 あの もうどきますから 」
良子が慌てて立ち上がると
着物の人は良子の代わりにベンチに座り
良子がしていた様に目の前の風景を見つめた
その夜、良子は子どもに戻って
公園で遊んでいる夢を見た
夏の眩しい陽射しの中
誰かに手を引かれ歩いていた
ちょっと疲れたので涼もうと
藤棚の木陰に座って着物の人に
何か話しかけようとしたところで目が覚めた
公園で一度だけ会った女性は
それから時々良子の夢に出てきた
普段、人見知りな自分が
どこの誰かもわからない人の夢を
見るのが不思議でならなかった
だが、それほど嫌な感じもしない
良子は上着を羽織って
今日も夜の公園に向かった

