娘が昨日嫁いで行った
いや最近は嫁ぐと言うのは何となく違う感じで
ただ若い二人が
一緒に家庭を作っていく事になった
節目というだけなのかもしれないが、、、
田中は公園のベンチで昨日、娘と交わした
他愛も無い話を思い出していた
もう30年以上前の話
ある日、田中が公園のベンチに座っていると
若草色のカーディガンを羽織った
地味な見た目の女性に話しかけられた
その人は
「佐藤さんですか?」
田中に向かってそう言った
田中が違うと言ってそのまま座っていると
その人は隣に座って何やらゴソゴソと
鞄の中を探って
チョコレートを取り出して
「食べます?」
一片を田中に差し出した
その日、公園のベンチで田中はその人と
いろいろと話しをした
もう30年以上も前の事だから
何を話したのかほとんど覚えていないが
それが母との最初の出逢いだったと
次の日嫁いで行く娘に話した
「 あの内気な人が
人と待ち合わせしてるふりをしてまで
話しかけてくれたから
おまえが産まれたんだよ 」
田中はラベンダー色のカーディガンを
羽織っている娘にそう言って笑った

