その作務衣の男は神社の神主で
クロの出自を知っている様だった
涼太は男に促されるまま
神社の敷地内にある納屋へ案内され
その納屋の軒下が
クロの定位置だと言われた
「 ここは飲み屋街にも近いからのう
酔っ払いや近所の悪ガキが
ちょくちょく自転車を持って行くが
いつのまにかコイツは
またここに帰ってくる 」
そう言って男は
もう一度ガハハと笑った
男の話によると
その自転車は日本を旅していて
ここに流れついた
ドイツ人のものだったらしい
どう言う経緯か神社に紛れ込んで
境内でうろうろしているところを
神主さんが見つけてから
一時期、納屋をねぐらに貸して
世話をしていたと言った
ある日
そのドイツ人は自転車を残して
何処かへ消えてしまったとも、、、
涼太はクロが舶来物と知って少し驚いたが
そう言えば町でよく目にする他の自転車よりも
全ての部品が無骨な作りなので
何となく合点が行ったのだった
男は自分はもう腰が悪くて
自転車に乗れないので
大事にしてくれるなら
持って行って使っていいと言った
夕暮れ時
涼太とクロは
農道を家に向かって突っ走った
そして何の根拠もなく
振り返ったらもう二度と
クロには乗れない様な気がした

