その町に一軒だけのうなぎ屋の店先から
何とも芳ばしい匂いがしている
涼太とクロは石畳のうえを横切って
隣町の商店街の外れにある
神社の鳥居の前にいた
この神社には
去年剣道の大会で来たことがある
試合で涼太はボコボコに
負けてしまったのを思い出して
少し気後れしながら中に入った
涼太が境内の隅に自転車を置いて休んでいると
「 おいボウズ
その自転車どこから持って来た?」
真後ろから声がした
涼太が驚いて振り向くと
自分の父親と祖父の中間くらいの歳に見える
作務衣姿の男が立っていた
涼太は一瞬尻込みをしたが
男の優しい目を見て少し安心して
その自転車を手に入れた顛末を
正直に話した
男は無精髭を撫でながら終始ニコニコして
涼太の話を聞いていた
そして聞き終わると同時に
おもむろにクロのハンドルを掴んで
「 おまえ、また戻って来たのか
しかも今回は不細工なカゴまでつけて 」
そう言ってガハハと笑った

