ある日
佐伯幸三が境内を箒で掃いていると
社の裏手にまわり込む回廊の下に
元の色がわからない程
汚れたシャツを着た男が
うずくまっているのを見つけた
その横に
やや小ぶりな自転車が横たえてある
幸三が恐る恐る近づいて行くと
男はゆっくりと顔を上げて
そちらを見た
複雑な瞳の色と巻き毛の髪
どうみても外国人だった
幸三がどうしたものかと顎に手をあてて
じっと見ていると
その男はゆっくりと立ち上がって
そこから出て行こうとした
それを見て
幸三は思い切ってひとことふたこと
話しかけてみた
男は言葉がわからないのか
何も喋らない
だが無言でシャツのポケットから
取り出した紙には
ローマ字で隣町の住所と
名前らしきものが書いてあった
ただ、ところどころ字が掠れていて
肝心なところが読めない
どうやらその人を訪ねて
ここまでやって来た様ではあるが、、、
「 難儀をしているなら、好きなだけ
ここに居ていい 」
幸三は自分に言い聞かせる様にそう言いながら
身振り手振りで
なんとか男にそう伝えようとした

