多摩市・カナメさんからのリクエスト、ドラマ『ブギウギ』より吉柳咲良=水城アユミ『ラッパと娘』をお送りしました。
朝ドラ『ブギウギ』が終わりました。最後に一度ぐらいは、このドラマで朝ドラ日記をしたためておこうと思います。
そういえば前作『らんまん』は、一度も日記にしませんでした。槙野万太郎が新種の巨大生物を研究する劇場版『らんまん』特別編についてはチラッと触れましたが。(>違います)
何も書かなかったからといって、取り上げるに足らない、つまらない作品だったということではありません。サブカルブロガーたる日曜ライターとしては、すでに料理として完成している作品についてあれこれ語るという「二次調理」をしたい気になるか、またそれが食べておいしい料理にできるか、といったところがポイントになります。むしろダメな作品のほうが、かえって二次調理し甲斐があり、よく語っていたりします。
『らんまん』もそうですが、『ブギウギ』は良作だったと思います。ストーリーの進行を足踏みさせてでも、「ステージ」の描写を省略せず、ふんだんに盛り込んだことは好評価にして高評価です。『福来スズ子 傑作集』も買いました。
「歌謡ショー」として視聴者を魅了できる、その自信と実力の裏付けがなければ、これはでぎません。凡庸なドラマなら、「素晴らしい歌を披露しました」という体(てい)で省略し、誤魔化してしまうところです。少し前の名作『エール』を思わせます。
自分で云うのもはばかりですが、いい文章書いてますね。いま同じものを書けと云われても、自信がありません。衰えたんでしょうか? がんばります。
『ブギウギ』をテーマにした歌謡ショーはNHKで何度も放映されましたが、間違いなく『エール』の影響によるところは大でしょう。
ただ、ちょっと喰い足りなく感じた部分はありました。あと半年かけて、歌手引退後の女優・福来スズ子(=趣里/モデル:笠置シヅ子)の物語を観てみたかった。主人公の老後を描かない幕引きは、まるで朝ドラの現代もの。そもそもタイトルからして『ブギウギ』。そこを描くのは趣旨ではない。それはわかるのですが。
歌手をやめ、女優に専念する――。その活動、生き方は、河合奈保子の芸能人生を彷彿とさせます。これは朝ドラ日記ですが、奈保子日記の書き手としてはそう思います。
喰い足りなかったこと、その二。ドラマ終盤、新人歌手として登場した水城アユミ(=吉柳咲良/モデル:美空ひばり)とは、もっと『ガラスの仮面』的な「芸の競い合い」を繰り広げてほしかった。ライバル・茨田りつ子(=菊地凛子/モデル:淡谷のり子)が早々に味方で理解者になっただけに。
せっかく芸能界という、スポ根に等しい闘いの舞台がお膳立てされていたのに、そちらの要素は薄味でした。本人にものすごく気を遣った、マイルドな「笠置シヅ子物語」になってしまった。
あくまで事務所間の確執であって、笠置シヅ子自身は自分の歌を完璧にこなす少女の美空ひばりを可愛がっており、当人同士は「困ったわね……」という感じではなかったか? ワタシ個人はそんな風に想像しているのですが。
その水城アユミを演じたのが、吉柳咲良。名前が「キリュウ・サクラ」、カッコ良すぎ。何のマンガのヒロイン? そのカッコイイ名前を裏切らない、エッジの効いた美貌!
「ブギウギ ~時を越える 服部良一メロディー~ スペシャル・コンサート」という番組でも、彼女は『ジャングル・ブギー』を披露。これがまた凄くて。シビれました。
ここで多摩市・カナメさんからのリクエスト二曲目、その吉柳咲良が歌うこの曲です。
御存知、中森明菜のナンバーを見事に歌いこなす、抜群の歌唱力!
笠置シヅ子にとって変った時代の歌姫・美空ひばりを演じるのに、彼女ほどの適役はいないでしょう。
彼女の魅力を知るにつけ、福来スズ子と水城アユミとの関りの描かれ方があっさりしており、やや盛り上がりを欠いたまま終幕を迎えたのは惜しまれます。
リアルの笠置シヅ子が歌手引退を決意したのは自らの衰えだけではなく、美空ひばりの出現があったことは間違いないはずです。ドラマはそれを描くのを避けました。正面からそれを描いていたら、もっと凄い物語になったかもしれないのに。それを思うとちょっと残念な気がします。
これは本来、朝ドラ日記ではなく、奈保子日記の導入部になるはずでした。が、肝心の本論に難航してしまい、また月曜からは朝ドラ次作『虎に翼』が始まってしまいますので、ここまでを朝ドラ日記として発表します。奇しくも『ブギウギ』終了の週に放映された、「時代がよみがえる!昭和の名曲 あのころ最も売れた80年代ソング総決算」にからむここから先の奈保子日記は、近いうちに発表できたらと思っております。
2024.04.02 一部変更