「紅白歌合戦」の出場歌手を巡っては、毎年のようにその選出の正当性が取り沙汰されます。云ってしまえば一歌番組に過ぎないわけで、どんな基準で誰を選ぼうが、どんな情実のしがらみがあってそうしようが、局の勝手、番組の勝手ではあります。ですがそうは云っても、そこは受信料を徴収して成立している公共放送、年に一度その年を締め括る国民的関心事、ということなんでしょう。
かつてテレビは一家に一台、お茶の間に鎮座ましましていました。その時代、「夜のヒットスタジオ」などの歌番組には、演歌もアイドルもロック・フォークもいっしょに共演していました。こどものワタシはピンクレディを見たかったのに、八代亜紀をガマンして見なければなりませんでした。でも、そのお茶の間の共有体験を通して、ワタシの親世代は関心の無いピンクレディを知っていましたし、ワタシらこどもも好きでもない八代亜紀を知っていました。また、そうやって培われた素養が、いま現在のワタシの演歌好きにも繋がっているのだと思います。
「選択的に好きなものだけ見られる」のは、快適な環境には違いありません。しかし、それによって失われてしまったものは確実にあると思います。いまや大衆の興味・関心は「知識」とほぼほぼイコールであって、(好き嫌いは別にして)誰もがみんな知っている、国民的スターも国民的ヒット曲も、過去のものとなっています。
紅白出場歌手に万民が納得することは、もはや無いのかもしれません。
もうすでにちょっとした昔話になりますが、母親が紅白で初めて彼女たちを見て「この子らがモーニング娘。か!?」と云っていたのを思い出します。
後藤真希を擁するかの黄金期、国民的アイドル・モーニング娘。を、紅白で初めて目にしたのです、わが母は。考えてみれば、そりゃそうですよ。Мステ見ませんもん、カウントダウンTV見ませんもん、わが母は。
むしろ、この老婆の頭にさえ、名前だけでもインプットさせてしまうことだけでも、さすがはモー娘。と云わねばなりません。
そんな現代だからこそ、演歌とJポップが同じステージに立つ歌番組として、「紅白歌合戦」は貴重で、遺してほしいし、続いてほしいと思います。ワタシの望みはただひとつ、オーソドックスにやってほしい、それに尽きます。変に奇をてらわずに。視聴率は戻りませんよ、山口百恵の頃には。NHKが視聴率気にしてどうすんだと思います。むしろ視聴率を取り戻そうと躍起になるあまり、かえって視聴率落としてませんか? 見放されてませんか? 滅びへの道まっしぐらに突き進んでませんか? そのように危惧されてなりません。
そんなことを云いながら、ワタシはいま怖ろしくエッジの効きまくった、層を超限定した企画を云わんとしています。その名も「奈保子だらけの歌合戦」。
筆者の独断と偏見で、河合奈保子の全シングルを「ヤング・奈保子ちゃん期」と「レディ・奈保子さん期」にざっくり大別、前者はデビュー曲『大きな森の小さなお家』から『ストロー・タッチの恋』までの全12曲を、後者はそれ以降の歌から同じ12曲を選抜、チームに分かれて歌合戦を繰り広げていただきます。
実現、絶対不可能。妄想と音楽ソフトのプレイリスト上だけで成立する、時空を超えたSFワールド。
トップバッターを飾るのは、紅白初出場曲でもある『スマイル・フォー・ミー』、大トリは最後の紅白出場曲となった『ハーフムーン・セレナーデ』。
曲目と曲順は、ごくごくベタに選定したつもりです。これがワタシのお気に入り上位24曲というわけでもありません。流れの上で涙を飲んで外した歌もあります。自分ならこうする、というのは様々にあろうかとは思いますが、それは皆さまがそれぞれご自分の「奈保子だらけの歌合戦」を考えていただければと思います。
●ヤング・奈保子ちゃん組 キャプテン・河合奈保子ちゃん ![]() |
●レディ・奈保子さん組 キャプテン・河合奈保子さん ![]() |
1.スマイル・フォー・ミー![]() |
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2.夏のヒロイン![]() |
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3.ラブレター![]() |
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4.ムーンライト・キッス![]() |
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5.ストロー・タッチの恋![]() |
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6.Invitation![]() |
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7.大きな森の小さなお家![]() |
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8.17才![]() |
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9.ヤング・ボーイ![]() |
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10.愛してます※3![]() |
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11.愛をください※3![]() |
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12.けんかをやめて※3![]() |
※1 ステージでは吉川晃司さんにエスコートしていただきましょう。借りは返してもらいませんとね。
※2 攻めたジャケットですねぇ。日本コロムビア社員さんの猛反対が目に浮かぶようです。腹を括った奈保子さんは誰にも止められない?
※3 「愛してます」→(こんなに愛しているんだからあなたからも)「愛をください」→(と云っておいて両天秤にかけたお相手には)「けんかをやめて」と歌う、ワガママ奈保子ちゃん。
※4 8センチCD「エンゲージ」のジャケット全体像はこちら。
いまでこそ紅白の存在意義を力説しているワタシですが、昔は大のアンチ紅白。まったく見ていませんした。
河合奈保子出場回でさえもです。レコードも買わなかった、ビジュアル・ルックス面しか見ていなかった、それでも曲がりなりにも奈保子ちゃんのことが好きだったのに。
彼女が出場した81年から86年にかけてのステージは、この歳になってDVDで初めて拝見しました。
せめて、せめて、怪我から復帰した初出場回ぐらいは見ておけよと思います。
「ファンだった」なんて、とても云えません。おこがまし過ぎて。当時のことは、まったくキャリアのうちに入らないと思っています。
ワタシがいまやってることって、アレですよね。厳格な家庭に育って、欲しかったオモチャ買ってもらえなかったとか、やりたかったゲームさせてもらえなかったとか――そんな子供が大人になって、そういうものに年甲斐もなく夢中になってるオジサンそのものですね。別に「河合奈保子禁止」を親に命じられたわけでもないんですけど。
人間、やるべきことをやるべき時にやっておかないと、ひと様に説明するのも苦労しそうなタイミングで、今頃になってこんなこじらせたことをやらかすようになるんですよ。
今回もあります、多摩市・カナメさんからのリクエストはアルバム『JAPAN as waterscapes』より『終夜の螢』。「奈保子だらけの歌合戦」のエンディングは「蛍の光」ではなくこの歌。
2023.12.19 一部変更・加筆・削除
2023.12.29 一部変更・加筆