角松敏生、完全オリジナルのニューアルバム“Inherit The Life”について、私如きが語るべき事柄はない。

恒例のライナーノーツがないのは、角松が、聴く者各人の解釈に全面的に委ねているからだという。そう言われると、ますます、烏滸がましくてこのアルバムについて言葉を綴ることなど出来なくなる。

 

そうはいっても、アルバムのタイトル、“Inherit The Life”の“Inherit ”=「継承」に込められた深い想いには、どうしても、反応せざるを得ない。

 

 

8月、父の盟友でもある、偉大な経営者が亡くなった。父は病床で訃報を聞き、涙したという。

父はもちろんのこと、私も、その方の経営哲学には多大な影響を受けている。というよりも既に、人生の指針である。

父曰く、その方と自分は元々非常に考え方が似ていたので、互いに共鳴し合い、影響し合い、その方の言葉の中には自分が伝えた言葉も含まれているのだという。

 

父が退院したのは、8月31日であった。その日は角松さんのアルバム発売日である。

 

退院した日、父は何度も何度も、「伝承」という言葉を口にするのである。今、最も大切なことは、私たちが先人達から受け継いだ叡智の粋を、更に進化・発展させ、それを後世に「伝承」することなのだ、と。まるで、自分がこれから発する言葉は全て遺言であるかのように、90余年の人生で得た真理の全てを、私たちに余すことなく「伝承」しようとしている。

 

父の長い永い「遺言」のような教えを有り難く最後まで聞き届け、帰宅して角松のアルバムを再生した。

あぁ、これが角松さんが私たちに「継承」したかった、カドマツサウンドの全てなのだな・・・と、ずしり、と心の奥で重責の音が聞こえた。

 

 

私が物心ついた頃から、父から教えられた生き方はただ1つ。「自分の為にではなく、世のため人のために尽くす生き方をしなさい」ということである。

若い頃は父の思いを理解出来ず、激しく反発し続けた。しかし、家を飛び出て、子を産み育てるようになると、次第に父が私に託した思いが理解できるようになり、そして私自身もまた、自分がそうされたように、我が子に対し、自分が伝えられ、受け継いだ全てを「継承」させたいと願うようになった。

 

 

「終わり」が見えてきた人間にとっての最後の希いは、「命の継承」であると思う。

 

その命とは、私の父や私自身のように「生き方や哲学」であることもあれば、命を削って生み出した産物である「文学作品、芸術作品」であることもある。子を産み育てるという、文字通り「命」そのものの継承を意味することでもある。

 

そして角松は、それまでのカドマツサウンドの集大成として、このアルバムを私たちに、あるいは後世に、遺そうとしている。角松敏生の音楽を後世に伝承すること、それが、角松敏生の命、人生の継承に他ならない。

 

StereoSound ONLINEインタビュー記事。特に、世界的80年代シティ・ポップ・ブームの火付け役であるNight Tempoが一番最初にインスパイアされた曲「CATCH ME」含む中山美穂のアルバムと(長い💦)、角松ファンなら絶対に外せないJADOESの「あの時代」を今の角松自身の口から語られる部分は必読!

 

 

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“GO&SEE MY LOVE”、全っ然、グラン・ブルーじゃなかったですね(笑)でもこれは、継承されるべき世代と、そして私たちファンに向けての応援歌であると解釈できないだろうか。

この曲には、角松敏生の“愛”が溢れている。