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角松敏生久々のオリジナルアルバム「Inherit The Life」が8月31日に発売される。

 

 

未発表のものも含めた収録曲リストが解禁になり、ラストを飾る曲名を見た瞬間、目が釘付けになった。

 

GO&SEE MY LOVE、

 

それは、映画「グラン・ブルー」のラストシーンで、女が男に告げる、愛のセリフである。

 

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グラン・ブルー。日本では公開当時はさほどヒットしなかったものの、カルト的にじわじわと人気が高まり、90年代に入ってから何度もミニシアターで上演されては「グラン・ブルー現象」を巻き起こした、リュック・ベッソン監督の出世作。

 

リュック・ベッソンは、「ニキータ」「グラン・ブルー」続く「レオン」で人気を不動のものとしたのだが、「レオン」の次の作品以降、評価が落ちていく。

私の中でも次作「フィフス・エレメント」で急降下。才能って本当に枯渇するんだな、と妙に感心したものだった。

 

グラン・ブルーの何処が素晴らしいかといえば、まずはエリック・セラのサントラが、絶句ものなのである。

中でもオープニング“The Big Blue Overture”は、歴史上人類が作曲した中で、最も“海”と、海を見た時の“人の心”を表現し尽くした曲だと思っている。

 

 

この映画は、一言で言えば、“海に魅せられた男達の闘いと、そんな男を愛した女性のラブストーリー”である。

男は、次に海に潜れば命を失うかもしれないと分かっていて、必死で引き留める女の哀願を振り切り、深海の奥底目指して沈んでゆく。

その男の揺るがない意思を翻すことを諦めた女が、男を深海に送り出す最後のアンカーを引く直前、彼に言い放ったセリフが、冒頭の言葉だ。

 

なお、このあたりの経緯については7年前の過去記事で、角松の曲との対比として熱く既語りしているので参照して頂きたい↓

 

(しかしこれ、7年前の自分が書いた記事なので、今読むと赤面モノですな)

 

 

 

グラン・ブルーは、その後新海誠監督作品に出逢うまでの間、長らく私の推し映画1位に鎮座し続けていた。

 

心を捉えて放さなかった理由は、何よりも、主人公・ジャック(言わずもがな世界的ダイバーのジャック・マイヨールがモデル)を愛するジョアンナの、最後のあのセリフである。

“夢を追う男の背中を押す女”、それは女の在り方としてのロマンだ。

たとえ自分は顧みられなくとも、男の夢を、否、夢を追う男の存在を、丸ごと母性で包み込むような愛。“グラン・ブルー”で描かれたジョアンナのこの愛に、20代の私は激しく憧れた。

 

私が角松敏生を識る数年前、齢13歳の私が熱狂したのは「あしたのジョー」である。天涯孤独で喧嘩しか知らなかった矢吹丈が、闘いへのの情熱と男の友情だけに殉じる生き様に、どうしようもなく惹かれていた。あの頃の私は、間違いなくジョーを愛していた。

 

そして、そんなジョーを最後まで愛し抜く女が、財閥令嬢の白木葉子である。

葉子は、このまま闘い続ければ死ぬかもしれないと分かっていて、それでもジョーの背中を押すのだ。「行きなさい矢吹君、闘うのよ!」、と。

 

私は同じ男を愛する者同士として、白木葉子を同志であると解釈した。葉子の愛の姿に激しく共感した。闘いに生きる男を見守る女になりたいと憧れた。

 

この、

 

①主人公の好敵手が、主人公との闘いで死ぬ(あしたのジョー:力石徹、グラン・ブルー:ジャンレノ演じるエンゾ)

②命懸けで闘う主人公を愛する女性は、死ぬかもしれないと分かっていながら、最後は男の背を押す

③結局主人公が死んだのか死ななかったのか分からず観た者の解釈に委ねられるラストシーン

 

三要素が完全一致すればそれはもう、同一作品と見做して良いのではないだろうか?「あしたのジョー」をバイブルとしてきた私が、グラン・ブルーを見た瞬間に魂を奪われるのは必然だったのだ。

 

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あれから30年近く経ったであろうか。

葉子やジョアンナに憧れ、私のジョーやジャックを探していたはずの私は、どういう訳か今や、なんと、

 

「自分が」、ジョーやジャックである。

 

とりわけこの7年間、本気で「死んでもいいから司法試験という名の闘いを続けたい」と思ってきた。命にかかわるような検査も、試験を受ける為に後回しにしてきた。論文試験中に持病の発作が起きた時、薄れ行く意識の中で、「どうせ死ぬなら、ペンを持ったまま死のう。死ぬまで書き続けよう」と決意したような大馬鹿者である。

命を懸けて闘い続けてきたのは男ではなく、私の方だ。

 

そして今も、司法修習という新たな闘いに日々、身を投じている。それは司法試験などとは比較にならない、広くて深い艱難辛苦の日々と、それを凌駕する程の感動的で素晴らしい、闘いの世界である。

恐らくこの闘いは、一生終わらないだろう。何故なら、司法修習の先にはその延長線上に、実務という名の真の闘いが、それも“他人の為にどこまでこの身を投じることができるか”という究極の闘いが果てしなく続くからである。

 

なんだこれは。40年前から抱いてきた理想と、40年かけて達成した現実が180度違っていたとは・・・。

私がなりたかったのは、ジョーを愛する葉子であり、ジャックを愛するジョアンナである。ジョーやジャックになりたいなどと欠片も願ったことはない。

 

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野島伸司作品である「世紀末の詩」における、「教授」の最後の指導を思い出す。教授は主人公に教えていたのだ、“海よりも山の好きな女にしろ。海は母性の象徴だ。海は男が向かうものだから、女が向かったらそれは自己愛の強い証拠だ”と。

 

いや全くその通りである。海に憧れ海を愛し、海のように男を愛する女になりたいと渇望してきた私は、自己愛の強い女なのだ。

 

自分の男への愛は母性そのものであると、ずっと信じて止まなかったが、遂に気付いてしまった。

 

私の愛は、母性ではなく、父性であったと。

 

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そんな私が、ただ一瞬でも、“女”になれるのが、角松敏生を前にした時である。

私は、たとえそれがどのようなものであったとしても、彼の夢を信じているし、彼の背中を押し続ける。ステージを主宰し、立ち続ける彼を見守り続ける。

 

私ら女性ファンは最近つくづく思うよ、私たちはまるで角松の母じゃないか?このファン愛はほとんど母性じゃないか?って。

 

 

今宵のブルーノート青山は、修習が忙しくてチケットを取るのを忘れていたという痛恨の極み(号泣)、せめてこうして現地に赴き、心で呟いた、「角松さん、今年もまたこうして誕生日を迎えることができましたね」と。

 

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角松さんも“グラン・ブルー”からインスパイアされていたのは間違いない事実である。

さて、今度のアルバム、Interludeまで添えての角松版“GO&SEE MY LOVE”が渾身の一曲であることも間違いない。

どんな愛が奏でられるのだろうか。

 

 

  角松敏生OfficialSiteより 『Inherit The Life』概要

 

 

『THE MOMENT』以来、約8年ぶりのオリジナル・アルバム『Inherit The Life』が8月31日にリリースされる。今作は、既に先行配信されている『MILAD #1』『MILAD #2』からの楽曲をブラッシュアップした別バージョンと、新たに制作された楽曲で構成された全17曲収録のアルバム。現在のポップスの礎となった60年代から90年代の30年間の間に生み出された様々な大衆音楽のエッセンスが散りばめられたような作品。それはすなわち角松敏生がその音楽家人生の中で、体感し咀嚼してきた歴史そのものを彼なりの解釈で遺そうと試みたのではないだろうか。タイトル『Inherit The Life』に込められた想いは、生命の継承であり、彼自身の人生の継承、つまり彼自身が経験してきた音楽の継承という意味にもとれるだろう。ロックンロール、ロック、プログレッシブロック、R&B、ファンク、ジャズ、さらにはEDM黎明期、その時代を知る人ならニヤリとするフレーバー満載の作品だ。
尚、本作は今年の秋と来年秋に公演される角松がライフワークとして目指してきた彼独自の音楽エンターテインメントMILAD(MusIc Live, Act & Dance)のサウンドトラックでもあるという。
これが始まりなのかそれとも終わりなのかは天のみぞ知るところではあるが、この『Inherit The Life』は角松の最後の挑戦という覚悟が散りばめられたものであることは間違いない。

【リリース情報】
8月31日(水)発売
ニューアルバム『Inherit The Life』 
価格:3,300円(税込)品番:BVCL-1069

【収録曲】
01. THE DANCE OF LIFE
02. THE TIME IS NOW
03. GISELLE (Andante – Allegro)
04. Talk To You
05. STOMP TO THE BEAT
06. GOOD TIMES〜STEP INTO THE LIGHT
07. Follow Me
08. MOONLIGHT GIG〜Who are you
09. 夜はコレカラ
10. It isn’t you
11. I’m gonna dance to break out of loneliness
12. I Wanna Wrap You Up
13. GO & SEE MY LOVE (Interlude)
14. DANCE IS MY LIFE
15. FOR GIVE ME
16. Let’s Get Real
17. GO & SEE MY LOVE

 

 

超悲報・・・11月11日は、司法修習“考試”通称2回試験の2日目である。だが、今のところ私は、その日、和光から映画館に駆け付けるつもりである。

2回試験に落ちたら、新海監督に損害賠償請求だ・・・