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閉会式エンディングの成功は、角松が前代未聞の〝生演奏〟に拘ったことが唯一最大の理由である。

「生」LIVEのもたらす祭の波動が会場にバイブレーションを起こし、演者・ジュニアダンサー・日本人選手・外国人選手・メダリスト・メダリストでない者、全てのアスリートそして観客…あの瞬間に閉会式会場にいた全ての者達の心を一体化させ、大きなグルーヴとなって会場全体を包み込んでから、全世界に向けてあの空気そのものを一気に発信したのである。

 

「イレアイエ ~WAになっておどろう」は、角松敏生音楽活動凍結中に結成された覆面バンド「AGHRTA(アガルタ)」が、当時飛ぶ鳥を落とす勢いのエイベックスにレーベルを移して発売されたシングルで、「NHKみんなのうた」で口コミにより評判になりました。

評判が良いので、V6(エイベックス所属)に歌わせようという話が持ち上がり、V6の「WAになっておどろう」がヒットしたのはご存じの通り。

当初、ジャニーさんは
「覆面バンド?アガルタ?なんだか訳の分からない得体の知れないオッサン連中の曲をうちの子たちに歌わせるわけにはいかない!」
とおっしゃっていたそうで、そこをジュリーさんが
「・・・でもこのアガルタって、
角松敏生さんですよ」
ジャニー「あ、そうなの。じゃぁいいや」
・・・という話になったとか。

その後、長野五輪のテーマソングに何とか押し込めないか、という話になったものの、五輪の公式テーマソングはもう5年前に杏里に決まっていたと。その他公式ソング、イメージソング・・・全て5~10年前に決まってるんですよ!
角松さん「東京五輪もね、もう今から凄い政治の力が蠢いてる筈です。もうEXILEあたりが歌うことになってるんじゃないですか(笑)」
・・・とまぁそんなわけで百家争鳴の所謂「五輪テーマソング」は、上記の通りです。
仕方ないので最後に余った公式キャラクター「スノーレッツ」のテーマソング、ということで押し込まれました。

長野五輪開催中、選手村などでBGMとして常時かけられた「イレアイエ ~WAになっておどろう」ですが、閉会式の最後の大トリを飾ることになった話。


当初、閉会式で歌いませんかという話が来た際、角松さんは二つ返事で飛びついた・・・と思いきや、上から目線で

「生じゃないとやんないよ」

五輪のイベントというのは、間違いがあってはいけないので、基本、全部口パクなのです。ですから他の歌手(杏里さんも、です)は皆さん、事前録りした音声を乗っけてます。
そこはもう角松さん、敢えて「生演奏」じゃないと、自然発生的な感動を呼ばない、という確信をお持ちだったようです。


「じゃぁいいです」(出ません)

角松さんからオファーを断られた担当者。演出の浅利慶太氏に聞いて、生演奏はダメだと一旦は主催者側も引き下がったそうですが、しばらくしてまたやってきて

「浅利慶太さんが、ラスト、花火打ち上げるところまでがオレの演出で、後は関知しないから、その後なら勝手にやっていいよ、とのことです。但し、花火打ち上げてる間にセッティングしてスタンバイ終わること」

・・・というわけで前代未聞の五輪閉会式「
バンド、生演奏」が実現し、閉会式最大の奇跡が生まれたのです。これ、演出じゃないんですよ。自然にグルーヴが発生し、勝手に選手がみんな雪崩込んできてリオのカーニバル状態になっちゃったんですから。練習を積んで踊っていた子供たちは、知らない外国人選手の肩車に勝手に乗っけられたり迷子になったり踊れなくて、ワンワン泣いちゃってたとか…


あのエンディングシーンを見て浅利さんは相当悔しがったらしいです。

 

~「角松敏生独演会 長野冬季五輪秘話」、2014.3.8より一部改変抜粋 

 
だから最初から角松敏生に任せときゃ、あんなグダグダな東京五輪セレモニーにならないんだってばと、心底呆れた全国の角松ファンによる心の総ツッコミ。もう日本における五輪の閉会式テーマソングはこの先永遠に「イレアイエ~WAになっておどろう」でいいよ。
〝密〟と〝生〟の化学反応がもたらす心のグルーヴには、絶対に勝てないのが常である。だから角松ファンにとっても角松史上で1,2を争うライブの感動度なのである、長野オリンピック閉会式〝角松ライブ〟は。
 

角松敏生(アガルタ・長万部太郎)の演奏は1:30:25から。

改めて冷静に見れば、祭りの興奮で我を忘れた大人達に巻き込まれた子供達の不安そうな顔や悲鳴が聞こえたりしてグッチャグチャなカオスそのものなのだが・・・

それでもやはり、これぞまさしく〝人類の祭典〟。私たちは、後にも先にもこれを超える祭りを体験することはできないだろう。

 

 

 

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