桜舞い散る季節に その2からお読みください
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そんなお花見から数日がたったある日、私は俊太郎さまのお座敷にいた。
「明日、桜を見に行きまへんか?」
「桜?」
あの日満開だった桜は、もう散る頃を迎えていた。
「でも、もう桜は・・・」
「なんも言わんと、わてに着いてきてくれへんやろか?」
こんな俊太郎さまは見たことがない。
「もちろん、藍屋はんが許可してくれたらどすけど」
置屋に帰ってから秋斉さんにそのことを話すと、
「桜?今時期に?」
と言ってはいたけれど、外出の許可をもらうことができた。
翌日、あの日龍馬さんたちとお花見をした場所に着くと、そこはその時とは全く違った雰囲気になっていた。
「・・・・・・・」
「これはこれで、なかなかええでっしゃろ?」
そこには、一面、桜の花びらの絨毯が広がっていた。
「すごい・・・・・」
その時、さぁっと風が吹いた。
まだ花の残っている枝から、花びらが舞い散る。
風に舞う桜の花びらは、綺麗だけど、とても儚げだった。
「綺麗やなぁ・・・」
「ほんとに。とっても綺麗」
俊太郎さまは目を細めて、小さくかぶりを振ってこう言った。
「綺麗なのは・・・あんさんや」
「俊太郎さま・・・」
「あの花見のときにそう言おうと思うたんや。せやけど、坂本はんに先を越されてしもた」
柔らかく笑う俊太郎さま。
でも、その笑顔がなんだか私には切なく見えて、今この瞬間に、俊太郎さまが消えてしまいそうで・・・
「どこへも・・・行かないで」
そう言って、そっと俊太郎さまの手を握った。
「かえではん?」
「私を置いて、どこへも行かないでくださいね」
桜の絨毯の中で見つめあう。
その時、俊太郎さまがが私を抱きしめた。
「どこへも・・・どこへも行きまへん。あんさんがわてを必要としてくてる限り・・・もしこの身が果てても・・・」
「そんなこと、言わないで・・・生きて、ずっとそばにいてください」
桜の舞い散る中、私たちはずっと抱きしめあっていた。
この平和で、幸せな時が、永遠に続けばいいのに・・・と願いながら・・・
桜舞い散る季節に END