俊太郎さまの新暦のお誕生日によせて(その1) からお読みください。
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――翌日
せめて、着物くらいは俊太郎さま好みのもので会いたい。
そう思って、出来るだけ俊太郎さまが好きそうなものを選んで、私は俊太郎さまのお座敷に上がった。
「失礼します」
そう言ってお座敷に入ると、俊太郎さまは満面の笑みで私を迎えてくれた。
「いつも綺麗やけど……今日は一段と美しおすなぁ」
「ありがとう、ございます……」
褒められて嬉しいはずなのに、俊太郎さまにちゃんとしたプレゼントを用意できなかったことを考えると、素直に喜べなかった。
「……なんや、おましたか?」
俊太郎さまに心配をかけたくない。
そう思うのに、うまく返事が出来なかった。
「俊太郎さまに、贈り物を用意しようと思ったんです」
「贈り物?」
「はい。でも、何を贈ったらいいのかわからなくて……結局こんなものしか用意できなかったんです」
そう言いながら、私はおずおずとお菓子を差し出す。
「……」
「ごめんなさい。こんなものしか用意できなくて」
恥ずかしくて、顔を上げられない。
俯いて膝の上にある手を見つめていると、その手を、俊太郎さまがそっと握った。
「わては、あんさんと過ごしたかった。それだけどす。贈り物が欲しかったわけやあらしまへん」
「でも……」
「わてに贈り物をしたかった?」
「……はい」
握っていた手を、俊太郎さまは優しくひいた。
「わての、目ぇを見て?」
そう言われて私は顔を上げる。
「ええ子や」
そう言って相好を崩す。
「もしわてが今のあんさんの立場やったら、同じことを思うてたかもしれまへんなぁ」
「俊太郎さま……」
「せやけど、わてにとっての一番の贈り物は、この時間や」
柔らかい笑顔のまま、俊太郎さまが私を優しく抱き寄せた。
「こないにして一緒におる時間が、あんさんに触れていられることが……一番の幸せや」
「でも……」
「そないにわてに、贈り物をしたい?」
「それは、そうですよ。だって、約束したし……」
私がそう言うと俊太郎さまは、いつもは見せない、ちょっといたずらっ子のような顔で笑った。
「せやったら、わての願いをきいてくれはる?」
「もちろんです!!」
「どんな願いでも?」
「はい。俊太郎さまに喜んでいただけるなら」
私の返事を聞いて、俊太郎さまはさっき私が差し出したお菓子を見つめた。
そして、その箱を手に取る。
「このお菓子を、一緒に食べまひょか?」
「え?それがお願いですか……?」
「そうどす。ただし――」
そう言ってお菓子を一つ取り出し、私の口に咥えさせた。
「口移しで」
その3へ続く……