先日の東京駅での光景。名古屋に戻るために新幹線の自由席の列に並んでいた。前にはお母さんと娘さんの母娘。明らかに大学受験を終えて、帰ろうという姿。うまくいったのか、二人の会話にも笑顔が見える。合格するといいですね。まさに大学受験は真っ盛りです。
初めて大学受験を経験したのは、もうかなり前の話です。高校の先生に「私立は行かない!」と宣言しながら、「とにかく受けておけ。受けないと国立も受けさせない!」と言われて日本大学文理学部を受けることになった。
初めての受験、初めての東京生活、初めての新宿など初めてづくしのこととなった。この時、父親がついてきてくれた。宿泊を考えた時に、父親の仕事の関係から農業会館だったかに宿泊することになった。父親と二人で宿泊するということも初めて。何を話したのだろうか。今では記憶にない。
東京に出てきたその日は、宿舎に着いたのも遅かった。何せ当時は山形から上野の特急でさえも5〜6時間かかっていたように記憶している。その日の夕飯をどこでとるのかということになって出かけた。どんなところに入れば良いのかもわからなかった。父親はどうだったのだろうか? おそらく父親もそんなところだったのであろう。ホテルの人に聞いていたような気がする。そして入ったのは喫茶店のようなところ。そこで頼んだのが「生姜焼きライス」 どんなものだろうとドキドキしながら待っていた。ドキドキは会館を出てから、喫茶店に入り、注文して、「生姜焼きライス」が出てきて、食べてとずっと続いていたような気がする。もしかしたら次の日まで続いていたのかもしれない。
テーブルに出されたのは豚肉を焼いたものにキャベツが添えられ、ご飯は皿に盛られていた。初めて見る光景だった。ドキドキした。「こんなものが東京では食べられているんだ」と驚いていた。「味噌汁はないのか」とも思った。皿にご飯が盛られていることがいちばんの驚きだった。それまで、ご飯は茶碗で食べるものとばかり思っていたからだ。そして、ナイフとフォークに怯えた。味は覚えていない。ちょっと薄暗い喫茶店で、父親と向かい合って食べている不思議な光景。きっと背中が丸まっていたのだろうと思う。
次の日、新宿駅で下りて、中央の通路を歩いて京王線に連絡する階段を降りていく。その人並みの大波。京王線の乗り場に入るのに、右なのか、左なのか迷って乗り換える。心臓が耳から出てくるような感覚。下高井戸駅から日本大学文理学部への通り。喫茶店やパチンコ屋、雀荘などがひしめいていた通り。この通りを半年間通うことになるとは思ってもいなかった。
あの時、父親とどんな話をしたのだろうか? 父親は何を考えていたのだろうか? そんなことを知りたくなる時がある。丸二日いっしょにいたことになるが、きっと何かを伝えたかったのではないかと時々思うことがある。もう父親も忘れているだろうけど・・・