あんまり話題になりませんが、景観法が施行されて
10年がたちます。

景観法が施行された当時は、マスコミも取り上げて
くれたので嬉しかったのですが、今はもう忘れ去ら
れた感じです。

当時は私も読売新聞に景観法の記事を掲載したり、
景観にかんする講演やセミナーの講師を結構引き受
けていました。

その中でも特に記憶に残っているのが、公聴される
人の態度です。

自治体の方は非常に礼儀正しく、講演や講義を聞い
てくれたのですが、大学の学生は残念なところが多
かったです。

千葉市に自治体職員向けの立派な施設があるのです
が、そこでの講義は気持ちの良いものでした。

少し笑ってしまったのが、教室に入ると、皆さんが
立ち上がって、当番の方の起立・礼・着席という指
示に従っていました。

私は本当に学校の先生になった気分でした。
さらに教室に入るときには、控室から付き添いの人
がついて、なんとその人が「先生カバンを持ちます」
とか言ってくるのです。

授業中も居眠りする人もいないし、こっちは全国の
きれいな景観を紹介できるし、とっても貴重な経験
でした。
当時聴講された方に感謝です。
調和のとれた空間は、
視対象としての建物や構築物の形状や
高さ・色彩に統一感があることだけではなく、
視対象と視点場の距離感や配置に工夫が見られる
地区のことです。

視対象とは、簡単に言うと見る対象物
視点場とは、見ている場所のことです。

具体的なイメージとして、
建物の高さや壁面の位置を揃え
街並みに連続感を持たせたり、
建物の配置、ボリューム、デザイン、
建築材料、色彩等を揃え
街並みに統一感を持たせたりした場所のことです。

同時に、建物、歩道、装飾物、記念碑、彫刻等に
関連性・一体感を持たせたり、
建物や壁等にあわせた石畳・タイルなどを
路面に敷き詰め、空間に統一感を持たせるなどの
工夫が見られたりします。

敷地利用は周囲との調和を考えたり、
建物建設にあたっても建築物の個別デザインより
地域デザインを優先するなどの配慮が行われて
いたりもします。

特徴としては、歴史的街並み、現代的街並みともに
目に見える形で、調和のとれた空間を整備することは
比較的行われています。

しかし、調和がとれている反面、
単調な空間に陥いりやすい点に注意が必要です。

このため、市民が共通して統一する場所と、
個人の個性を生かす場所を各々明確にするなど、
釣り合いやまとまりを意識しつつ、
個性的な一面を持つ空間を整備することが
必要と考えらます。

文化的な空間は、
自然風土、地域特性、歴史性を反映した
コンセプトを有した上で、
自然環境、文化財、歴史建造物等を維持しつつ、
コミュニティを継承している地区のことです。

文化的な空間を考えるにあたっては、
人の考え方といったソフト面と、
結果として形成された空間といったハード面に
まず大まかに分類してみましょう。

ソフト面では、
ビジョンを持ってまちづくりに
かかる市民間の話し合いが行われているか、
話し合いの場が常時設けられているか、
文化活動を通じてコミュニティが
維持・形成されているか、
地域シンボルが確立されているか、

ハード面では、
話し合いの結果として自然環境、
伝統資産等が保全されてきたかといったように、
ソフト・ハードの両面について整理してみましょう。

市町村や町内会において、
組織・ネットワークが形成され、
まちづくりの目指すべき方向イメージ・ビジョンをもち、
文化財などの歴史的建築物の保全、
地場産業・伝統産業等をイメージできる空間整備、
文化拠点の整備が行われている。

同時に、住民参加型の祭や年中行事が開催され、
コミュニティの維持・形成に役立っている。
自然との関係では、自然眺望に配慮されていることに加え、
河川、街路樹、生け垣等に触れる機会も設けられている。
自然地形や町割に工夫があり、景観に変化を持たせる場所も多い。

特徴としては、
現代的街並みにおいて文化拠点、文化財・歴史的建築物など
地場産業・伝統産業等をイメージできる場所が少ないこと、
住民参加型の祭や年中行事が少ないことがあげられます。

このため、地元住民が話し合える場を積極的につくり、
対話の中で地場産業・文化の再発見に努める。
または、文化を創造・発信するような
仕掛けづくり等が必要と考えられます。
安心できる空間は、自然災害、人災、犯罪、自動車等から
身を守りやすく、心地よく感じられる地区のことです。

景観を体験する場所の特性を最初に考慮し、
「自然の中に、建築物が存在し、車が行き交い、人と接触する」
といったイメージで、空間の大きさによって
まず大まかに分類してみましょう。

見晴らしがよいなど自分の位置が容易に確認でき、
犯罪の温床となる死角が少なく、
公園、広場、芝生等の休憩スペースを有する。
看板・広告等が目障りではなく、
電柱と共に上手く配置されている。
また、車両との関係では、通過車両を極力排除し、
生活車両との共存が図られている。

特徴としては、
歴史的街並みにおいて歩行者空間に生活車両が侵入したり、
歩車分離が徹底していなかったり、
やや車両との関係に難がある点に注意が必要です。

このため、市民生活を阻害しない範囲で、
生活車両の侵入を防ぐために、
歩行者専用空間をつくるなどの方策をたて、
歩行者の安全を守っていくことが必要と考えらます。
 景観の評価の基準は多様ですが、
大きくは「動物としての評価」と「文化をもとにした評価」の
二つに分けられます。

 動物としての評価とは、自分は敵からは見えにくく、
でも敵のことは見えやすい空間など、身を守りやすい空間が
動物や人間にとってよい空間であるということです。
いわゆる安心できる空間と言えます。

 人間ならではの評価基準が文化をもとにした評価とは、
私たちが無意識のうちに影響を受けている文化的な規範
(集団表象とよびます)が、この集団表象を無視した
コンセプトに基づく景観整備は成功しないということです。

誰が使うか、どんな集団か、かれらはどんな価値観を持つか、
どんな行動をするか、深く考察する必要があるということです。
 
以上のように、考察した場合、
良好な景観を有する地区とは、
動物的な生態に基づく「安心できる空間」、
文化的な規範に基づく「文化的な空間」、
並びに周囲と調和した「調和のとれた空間」
と整理されます。

このような空間は快適な生活環境、
すなわちアメニティな空間であることも多いです。

アメニティについては様々な見解がありますが、
ここでは自然的、人工的な様々な要素が調和して生み出す、
心地良く好ましい生活環境を意味します。

「安心できる空間」、「文化的な空間」、「調和のとれた空間」
それぞれについては、具体的に次回以降ご紹介します。