ワニSS ~江戸城に空き巣に来たワニ~ | 適当

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あらすじ

江戸城に空き巣に来たワニ

偶然部屋にいた徳川親衛隊の弥助にみじん切りにされ死亡する

上様は褒美で3万円渡すが弥助300万要求、突っぱねると弥助は5億円持ち逃げる

切れた上様は弥助死刑判決、十字架持ってエベレスト登って対物ライフル蜂の巣の段取りが途中でワニとすり替わっててワニが死亡

 

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ワニには野望があった。

大金を稼いで株とマンション経営を始め、億万長者になって南の島のプール付き究極豪邸(トイレと湯船純金製)で悠々自適に過ごすという野望であった。

 

しかし、今のワニには資産運用するに足る資金は無い。それどころか今月のケータイ代、明日の食費すら不安である。

ワニ「かねがないのだぞ?」

 

途方にくれ、窓から外を眺めるワニ。日本一長い商店街外縁の古めかしい家々の家々の先に、江戸城が聳える。

高さこそ周囲の高層ビル群には及ばぬがその威圧感は東京の、いや日本のどの建造物と比しても右に出るものはいないだろう。

 

(あそこにはきっとものすごい財宝がありおるのだぞ?)

ワニがそう思ってから決意するまでに1秒も要さなかったのだ。

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ある夜の江戸城。

この日も天守閣のオリハルコン製のシャチホコが月光に照らされ東京の夜景の中でもひときわ異彩を放っておったのだ。

 

そして、そのお堀に異様な存在がひとつ。

 

ワニがお堀をよじ登り城内への侵入を試みておったのだ。

ワニ「臨時収入を得て株始めて億万長者になるのだぞ?」

 

ワニはさっそく外壁を超えて城の建物に入りおった。

ワニ「なかなかにひろいのだぞ?」

 

すると、彼の眼前に全面金色でせっしゅうみたいなイラストのふすまがあらわれおった。

ワニ「上様の部屋かもしれぬのだぞ?」

 

ここに日本中の金銀財宝があるかもしれない。ワニの胸が高鳴りおる。

 

純金製のふすまのノブみたいなやつに手をかけ、思い切って開ける。

ワニ「!?」

 

そこは64畳はある広大な和室だった。

部屋の設備としては床の間、そして身長3メートルはある黒光りで筋骨隆々のいかにも最強そうな男。

ふすまを開けてから、それが設備ではなく生身の人間であるとワニが気づくまでに3秒も要さなかった。

 

ワニ(ばれた!?)

江戸城に空き巣に入りおったのだ。110番通報では済まないかもしれない。

ワニは全身から冷や汗をかき、その身体はまるで立往生でもしたかのごとく静止しおった。

 

弥助「俺の名は弥助!徳川親衛隊で最強の親衛隊なのだぞ?貴様なにものだ?」

弥助と名乗るいかにも強そうな男はワニに問う。

 

徐々に硬直の解けたワニが口を開く。

ワニ「……俺は消火器の営業に来ました」

弥助「問答無用!侵入者は成敗なのだぞ!」

ワニが話し終えるのと同時に弥助は刀を抜いてワニはふつうにみじん切りにされて幽明界を異にした。

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後日、不審者を成敗した弥助は上様から特別ボーナスを貰うことになりおった。

上様「よくやった弥助よ。貴様に特別ボーナスとして3万やるのだ」

弥助「がんばったから300万円ください」

上様「貴様偉そうなのだぞ?」

弥助の要求は突っぱねられた。

 

その後……

弥助「上様はケチなのだぞ?」

上様が3万円しかくれないと悟った弥助は地下金庫から5億円持ち逃げすることにしおった。

金庫の暗証番号知ってたのでそのまま金軽トラに積んで江戸城を後にしおった。

 

翌日、5億円持ち逃げされた事を悟った上様は憤怒し、弥助を全国指名手配した。

そして、数日後に弥助は逮捕され、上様の眼前に突き出されおったのだ。

 

上様「弥助!貴様なんてことをしおったのだ!」

弥助「上様が300万円くれなかったからです」

上様「問答無用!貴様は俺が死刑にするのだぞ!?」

 

早速上様は弥助をリムジンに放り込んで空港へ移動し、究極自家用ジェット(レッドカーペット敷で椅子ソファーで飛行機の中にジャグジーある)でエベレスト空港に移動しおった。

 

上様「今から貴様はここからエベレスト山頂まで十字架持って移動してもらうのだ」

弥助は渋々エベレスト空港の出入り口に突き刺さってた十字架持ち上げて移動しおった。

 

十字架の高さはおよそ4メートル、重量はおよそ5億トンだろう。毎日凄まじい鍛錬で肉体を鍛え、力仕事の経験も豊富な弥助にとっては運搬物の推量もその運搬も容易なことであった。

彼にとってこれは極刑であるどころか、日常の鍛錬のほうがよほど過酷であったのだ。

 

弥助「なにかがおかしいのだぞ?」

弥助は肉体だけでなく頭も切れおるのだ。

 

そして、そんな彼の頭上には先程から徳川のヘリコプターが飛んでおった。

 

彼は悟った。

弥助「頂上に登ったら蜂の巣にしおるのだな」

彼は即座に携帯電話を使用しおった。

 

そして、彼は悟ったことを悟られぬよう、ヘリコプターには一瞥もくれず粛々とエベレストをのぼりおった。

そして、中腹のあたりでヘリコプターから死角となる部分に到達しおった。

 

すると、36分後くらいしてからワニがきおった。

ワニ「タイミーから来ました」

弥助「おはようございます。じゃあこの十字架を持って頂上までのぼってください」

ワニ「わかりました」

 

 

 

~数時間前~

江戸城での空き巣に失敗したワニは相変わらず金欠だった。

ワニ「パチンコで最後の金も使い果たしたのだぞ?」

ワニはとりあえず今から稼ごうとタイミーアプリを確認しおった。

すると……

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勤務時間:山を登りきるまで

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ワニ「これしかないのだぞ?」

ワニは速攻応募しおったのだ。

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そんなこんなでワニは十字架を持ち上げ山をのぼりおった。

ワニにとっては凄まじく重いものであったが、逆に勤務時間の長くなることでさらなる高時給が期待できる。

なんだったら筋トレにもなるのだぞ?

 

厳しい仕事であったが、ワニはいきいきしながら十字架を運搬しおった。

山頂は近い。

 

~一方その頃~

上様「なかなかこぬのだぞ?」

上様は山頂でヘリコプターホバリングさせて弥助の到着を待っておったのだ。

じい「道中でくたばっておるのでは?」

じいは山頂にむけて対物ライフルを構えておった。

上様「弥助はそこまで惰弱ではないのだぞ?」

 

その時だった。

じい「上様!十字架がみえおりましたぞ!?」

十字架の先端が見えおった。

すかさず上様も対物ライフルをかまえおった。

 

そして、顔面が見えると同時に上様とじいは弾倉が空になるまで撃ち込みおった。

上様「これで弥助はくたばりおったのだ」

じい「これで世界平和になりますぞ?」


二人は満足で帰っていきおった。

ついでに弥助もヘリコプターが去ってから満足で帰っていきおった。

 

弥助の代わりに山頂まで来たワニはふつうに対物ライフルで蜂の巣にされて死亡しおった。

 

~完~