#11 "求職者 空珍孫(くうちんそん)” | タイトル作家の作品集

タイトル作家の作品集

タイトルしか思い浮かばない自称タイトル作家が送る ”クスッ”と笑えるタイトルだけをお届けします。
※内容はハッピーエンド限定で自力でお願いします。

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タイトルとざっくりとした登場人物しか思い浮かばない自称・タイトル作家が送る ”クスッ”と笑えるタイトルだけをお届けします。
※内容はハッピーエンド限定で自力でお願いします。

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タイトルだけでは、つまらないとの意見も 親戚からだけですが受取り 最近は少し長めに

がんばっています。 また clever で lazy (賢くて 怠惰) な新しいジャンルとの

賞賛?の声も 海外から一件頂きました。 

タイトル作家としては、自分の仕事以上の仕事をしてしまっているようで そわそわしてしまいますので、 時々初心に戻らせて頂きますが、 今回もまた少し頑張りました。

どうぞよろしくお願いいたします。

 

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今日 お届けするタイトルは、 ”求職者 空珍孫” です。

 

 あさりのオフィスの席は、窓から緑が見える居心地の良い場所にある。

四月から新人リクルーターとして 新しい地で働き始めたのだ。

 

その日の朝も いつもの様に PCを開けて 求職者からのメールをチェック。

まず 履歴書から そして 本人のコメントを見る。

 

「こんにちは あさりさん。  僕を覚えていますか? 空珍孫です」。

 

あさりは、誰の事か 思い出せなかった。

そして そのメールの先は・・・

 

「僕もやっと大学を卒業する事ができました。 現在 仕事をさがしています。

 宜しくお願い致します」。

 

あさりは まるで見当がつかず データベースをさがしてみたが、

その様な名前は残っていなかった。

どういう事かわからないまま 上司にメールを見せた。

二人共 困惑したまま 二時間が過ぎた。

 

突然 あさりは はっと立ち上がり 上司にその名前に心当たりがある事を告げに行った。

 

五年前、初めてアメリカにやって来た時、

寂しくない様にと 兄がモールのおもちゃ屋で 買ってくれた小さな熊のぬいぐるみと同じ名前。

あさりは 熊のくーちゃんと名付けようとしたのだが、 

個性的な兄は、「違う! そんな名前じゃない! この子は 空珍孫だ!」

と 無理矢理  中国名を付けたその名前 まさに 空珍孫だ!

 

あさりは、 すでに日本に帰国して社会人となっている兄に連絡し メールの送り主の正体を確かめた。

 

案の定 兄の仕業。

Emptysky-grandson@ という Emailアドレスまで作り

妹の初仕事に エールを送ったのだった。

 

いつも かなり手の込んだいたずらをする兄。

ありあまるエネルギーで まわりを混乱させるが、 情の深さは 人一倍。

あさりは、大笑いをした後 少し申し訳ない気持ちになった。

 

今は ぬいぐるみを枕元に置かなくても 心細くないあさりだが、

久しぶりに 兄の買ってくれた熊の空珍孫を出して 思い切り抱きしめたくなった。