#7  " 優作でごめんね” | タイトル作家の作品集

タイトル作家の作品集

タイトルしか思い浮かばない自称タイトル作家が送る ”クスッ”と笑えるタイトルだけをお届けします。
※内容はハッピーエンド限定で自力でお願いします。

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タイトルとざっくりとした登場人物しか思い浮かばない自称・タイトル作家が送る ”クスッ”と笑えるタイトルだけをお届けします。
※内容はハッピーエンド限定で自力でお願いします。

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今日のタイトルは、 ”優作でごめんね” です。

 

毎回 短すぎるとのご意見も 私のまわりだけですが、聞かれるので 今日は少しだけ

長めに頑張ってみましたが、 もともと タイトルしか浮かばないので これが精いっぱいです。

どうぞよろしくお願いいたします。

 

 

夏休みに入って五日目、 小学4年生の娘は、明日から合宿に出かける。

前日になってしまったが、新しいパジャマとビーチサンダルを買いに行こうと

私がお化粧をし始めている時だった。 電話のベルが鳴り 娘が出ると 叫び声の様な声が

受話器からもれていた。 ” きゃあ~ さきこちゃん まだ お家にいらっしゃる~”

いったい何のことかわからなかったが、娘によると 合宿は、今日からで みんなもう東京駅に集合していると りえちゃんのママが言ってる というのだ。

そうです。 合宿日を一日間違えてしまったのです。

その後 何が何だかわからないままに  ” あとから私一人でも行けるから 絶対に合宿に行きたい!” と言う気丈な娘に引っ張られる様に 急いで東京駅に向かった。

行先は 仙台から三駅のところ。  新幹線に一人で乗った事もないし まして乗り換え有り。

仙台までは良いとしても 仙石線に乗り換えるのに10分程歩くらしい。しかも乗り換える電車は、 

新幹線到着の6分後に発車。 子供の足でどうやってその4分をクリアするのか。

最寄の駅まで行けば 先生が迎えにいらして下さるとのこと。

”私は足は速いよ!” の娘の言葉を信じるしかない。

覚悟を決めて チケットを買い 新幹線に乗り込ませた。 

車両は ガラガラで ホッとした。ところがだ。 真夏なのに黒いコートを着た長身の男性が乗って来たのである。 もみあげを横にスパッと切り 後ろ髪だけ伸ばしているオージーカットのその男性、

 まるで古い映画 ”Black Rain” に出てくる超悪役の松田優作そのもの。

しかも これほどガラガラな車両なのに 何故か席は娘の真後ろ。

どう見ても一般人に見えない男性、 流れ弾にでもあたったら どうしよう。

たまらなくなり 車掌さんに頼み込んで 娘の座席を優作さんから最も離れた所に替えてもらった。

そして、子供一人で 仙台まで行き 仙石線に乗り換えなくては行けない旨を話すと

”大丈夫! 私がちゃんと面倒みますから!” と 車掌さんは言ってくれた。

あまりの優しさに 私は、絶対に御礼の菓子折りをJRに送ろうと心に決め 車掌さんの名札をチェックした。

 ”石井さん 本当にありがとうございます。 どうぞよろしくお願い致します。”

そして 娘を車内に残し 私は新幹線を降りた。

ホームから 見守っていると ドアが閉まる寸前 娘が席を立って出口まで走って来た。

気丈と言っても やはりまだ子供、心細くなって降りようとしているのかと思った瞬間、

低い声で娘は言った “車内販売買っていい?”

その時私は この先も大丈夫だと確信した。

 

そして お昼過ぎ 無事に合宿所に到着したとの連絡があった。

車掌さんが 面倒を見て下さったんでしょう? と娘に確認すると

” ううん、電車降りる時に ここまっすぐ行くんだよ!と言っただけだよ”

げげ 意外とシンプル。 もっと丁寧に面倒をみてくれると勝手に期待してしまった。

菓子折りはいいかなあ と思った。

それから 更に娘が言った。 ” 黒いお洋服の男の人 良い人みたいだったよ 仙台より前に降りた時に  私の顔見て ” ごめんね” って言ってたよ”

 

ひえ~  もっ申し訳ございません。 勝手に Black Rain の方にしてしまいました。

娘にも 謝って下さったんですね。

 ”優作でごめんね”  って。