#8 ”冷やしあめはいらんかね” | タイトル作家の作品集

タイトル作家の作品集

タイトルしか思い浮かばない自称タイトル作家が送る ”クスッ”と笑えるタイトルだけをお届けします。
※内容はハッピーエンド限定で自力でお願いします。

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タイトルとざっくりとした登場人物しか思い浮かばない自称・タイトル作家が送る ”クスッ”と笑えるタイトルだけをお届けします。
※内容はハッピーエンド限定で自力でお願いします。

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今日お届けするタイトルは、 ”冷やしあめはいらんかね” です。

 

 

お盆を過ぎたまだまだ暑い頃、ある一人の母親は高校生の息子二人と、社会人の息子そしてその友人の5人で、京都の有名な神社に出かけた。

 

お昼前には参拝を済ませ 昼食はどこかでゆっくり食べるつもりで、朝は駅のホームの隅で12個入りのあんこ餅を5人で分けただけだった。

ところが、なんとも認識不足、鳥居が10メートルくらい続いているだけの神社かと思いきや、

上っても上ってもまだ先がある。 

そこは山だったのだ。

 

いつもの事だが、その母親の荷物は大きくて重い。

暑い中へとへとになりながら、所々にあるお浄めの水を腕の付け根まで何度もかけて、体を冷やしながら 延々と続く階段を上った。

そろそろ体力の限界かと思った頃、息子たちが交代で母親の大きなバッグを持ってくれた。

そして、もっとも体力のある息子が、後ろから母親のパンツのウエスト部分を持ち 体をぐいっと持ち上げて 階段を駆け上がってくれた。

体が宙に浮いた状態で数メートル進んでは着地、進んでは着地、を繰り返し、

母親はまるでピーターパンの様だと大喜びしながら、優しい息子達だと泣きそうになっていた。

 

そして、ピーターパンはネバーランドに到着。

やっと頂上まで登り お参りする事が出来た。

達成感とはすごいもので、下りは元気はつらつ どんどん下りていけた。

途中、子供達は茶店でラムネを飲んだ。

その後も、どんどん下っていき 母親と少し距離が開いてしまった。

すると、再び茶店があった。

母親は、子供たちに追いつこうと足早にその茶店を通り過ぎようとした時

 

「冷やしあめはいらんかね・・・・」

と女性の声がする。

さっきまで店先には誰もいなかったはずなのだが、柱のかげに年配の女主人が立っているのだ。

なんだかぞくっとしたが、お客の入りも良くなさそうなお店なので応援するつもりで、

大声で子供たちを呼び戻し、ラムネでお腹がガボガボだと思うが 再び何か飲み物を飲むように指示した。

お客をゾクッとさせて 店の中に呼び込む独自のビジネススタイルなのかもしれない。

その店の、女主人の一番のおすすめは冷やしあめ。

一体どんなものなのかと皆で注文してみた。

生姜がピリッと利いた甘い飲み物は、炭酸なしのジンジャエールと言ったところだろうか。

なんだかとてもしみ入る味。

女主人の自信作だそうだ。

その冷やしあめを飲みながら、女主人から神社にまつわるちょっとゾクッとする話も聞き、すっかり涼しくなったところで

店を出て、下まで一気に駆け下りてきた。

上りはあんなに辛かったが、子供たちが支えてくれ やり遂げた達成感は大きく

母親の忘れられない思い出になった。

 


毎日 暑い日が続いておりますので 少しゾクッとして頂ける様な話を書こうと思いきや

普通の家族旅行の話になりました。

その上、頑張って 少しだけ長めにあらすじを書こうとしているうちに うっかり全部書いてしまいました。

 

では 失礼致します。