阿部定にもなれない
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バイアグラ

ところで・・・・・・・・・・・・


彼と知り合ってから、

障害について、いろいろなサイトをのぞきました。


その中に、

重度の彼よりもっともっと大変な障害の男性のサイトがありました。

とても感動的で、せつなくて、思わす泣いてしまうサイトでした。

こんなサイトがあるならインターネットも悪くないな、と思えました。


1回だけ、その掲示板に書き込みをしました。


障害者だけど彼が好きで好きで仕方がない・・みたいな内容を書いたと思います。


すぐ返事が書き込まれました。


なのに、それから1ヶ月ほどで、

そのサイトの男性は亡くなってしまわれました。


もう3年くらい前のことですが、

その掲示板に書き込んだ直後から、バイアグラに関する英語のメールが届くようになりました。


それが今だに続いています。


ずっとずっとたくさん送られてきます。


ウィルスはついていませんが、送信者もタイトルも英文なので、即、削除です。



彼は手を使えません。

指が動きません。

何かを叩いたり、指に引っ掛けて持ち上げることはできます。


パソコンは好きみたいです。

足や口で絵を描く人がいるくらいだから・・


車も運転できます。

乙武さんも運転してるくらいだから・・


それでも、

足が不自由な人で、手の指先が使えるか使えないかの差は大きいと思います。


自分で全てこなそうとすれば、生活のあらゆる場面がスローモーションです。

なんでも人に手伝ってもらえば、すっごい時間短縮です。


どちら寄りになるかは、人それぞれで・・

彼は後者でした。


私は生まれて初めて、男の人に物を食べさせました。


これまで、

「ハイ、あ~~ん」って、食べさせてもらったことはいっぱいあるけれど。


初めてというのは、なんでも緊張するし、恥ずかしいものです。

好き

ずっとずっと前、

10代の頃だったと思う。

「侯爵サド夫人」を読んで、私もこれかなって思った。


で、漠然と

私は、障害者を好きになったらいいのかもしれない、って思った。


私がいなければ生きていけないような人。

殺そうと思えばすぐ殺せちゃうような人。

私だけの人。

身体障害

彼がどうして身体障害者になったのか、

いつからか、

どこがどう悪いのか、


聞きづらくはなかったけど、

たとえば、

出身地や、年齢や学歴や家族のこと・・・・

人と知り合った時、わざわざ聞いたりしないように、


自然と話をしているうちにわかることであって、

それも自分にとってどうでもよくて、全く興味のない人なら、

当たりさわりない話ばかりで、どういう人かなんてわからないまま。


私の場合、好きな人であっても、

目の前のその存在以外は、さほど興味がない。

目の前の彼は、土地や家族や学校や仕事や人間や障害や

これまでのいろんなことがあっての彼だから、

敢えて知ろうとも思わなかった

(私は、人の携帯を絶対覗かない。)


であった頃の彼は、彼の障害というより、

障害について、広くいろいろな話をしてくれた。


話を聞きながら、面白いなと思ったのは、障害者はひとりひとり違うってこと。

当たり前のようだけど、そんなこと、わざわざ考えることでもないしね。

だって、「障害者」ってことばは、どんな障害者もひとつにくくってしまうから。

それも、あくまでも、ただのイメージで!!


実際は、制度としてもひとつにくくられていないし、

団体としても、つい最近になって、やっと全国規模でひとつにまとまったほどで、

ひとりひとりなんて、本当にバラバラ。


ひとりひとりがバラバラっていうのは、

たとえば、先生、

たとえば子育てママ、

いろんなものに置き換えればわかりやすいかもしれない。


幼稚園の先生、大学の先生、塾の先生、男子校、女子校。

一人っ子と子だくさん、男の子の親と女の子の親、専業ママと働くママ。

とかね。


どんなものかは、自分がなってみないとわからない。


車イスの人が言いました。

「目が見えないのが一番かわいそうだよ。目から入る情報ってすごいでしょ、面白いでしょ。」

目の見えない人が言いました。

「車イスが一番かわいそうだね、行きたい所に行かれない。狭い所は行かれない。小さな段差でもそこから先に進めない。」


人の方が大変に見えて、自分の方がマシかな、幸せかなって考えられるならいいけど・・・。

彼は違ってた。

車椅子って

近所にも車イスの人が2人います。

もっといるのかもしれないけれど、見かけたことがあるのは2人。


これまで老人ホームのお年寄りの車イスを押したことがあったくらいで、

車イスのことなんて何も知らなかった。

知る必要もなかったし。


彼と知り合って、びっくりすることがいっぱいだった。

身近にいなかったら、本当に、全然わからない。


最初にしたのは駐車の話だったかな。


「別の障害だけどね、どこでも駐車できるっていうカードを持ってる友だちがいるの。

便利よって言ってた。」


「それは、車イスじゃないからです。車イスの場合は、乗り降りにかなりの幅が必要なんです。

どこに停めてもいいって言われても、危なくて停められないです。」


「障害者用Pってすごい幅よね、そういうことなのね。

でも、私の父が杖をつかないと歩けない時に障害者用のPに停めたわ。

少しでもお店の入り口に近い方がいいと思って。」


「だから、それがダメなんですよ。僕たちは幅がないと乗り降りできないんだから、

そこしか停められないんです。

普通の所に停めて、降りられたとしても、乗る時に隣に停めた車との幅が狭かったら乗れないんですよ。」


「そうか・・私、障害者用駐車スペースを勘違いしてた。

あれって、車イスのマークだものね。

身体障害者だけが車イスのマークね。

でも、みんな、障害者ってまとめてイメージしてるから、

車イス限定とか、深くは考えてないよね。

気をつけるね。

でも最近は専用Pがけっこう空いてるよね。

マナーがよくなってきたのかしら。コーンが置いてあったりするしね。」


「ほら、それも困るんですよ。

車イスのドライバーが乗り降りするのは大変なんですから、

車椅子に移ってコーンをどけて、また車の座席に乗り移って、

そんなことしてたら、他の車が怒りますよ。」


「そうか・・」


「それでも、停められたらいいですよ。

僕は指も使えないから、駐車券のある駐車場には入ることもできないです。」


「・・・・」


ずっとずっと別れるまで、

少しずつ少しずつ、彼の障害の重さを知ることになる。

障害の名前や等級や支援制度や、

そういうことでなくて。

出会い

「はじめまして。 ○○です。どうぞよろしくお願いします。」

「あっ、どうも ○○です。」


廊下で上司から紹介された彼は車イスに乗ってた。


斜め下から挨拶をされたけど、

背、高そうだな。