車椅子って | 阿部定にもなれない

車椅子って

近所にも車イスの人が2人います。

もっといるのかもしれないけれど、見かけたことがあるのは2人。


これまで老人ホームのお年寄りの車イスを押したことがあったくらいで、

車イスのことなんて何も知らなかった。

知る必要もなかったし。


彼と知り合って、びっくりすることがいっぱいだった。

身近にいなかったら、本当に、全然わからない。


最初にしたのは駐車の話だったかな。


「別の障害だけどね、どこでも駐車できるっていうカードを持ってる友だちがいるの。

便利よって言ってた。」


「それは、車イスじゃないからです。車イスの場合は、乗り降りにかなりの幅が必要なんです。

どこに停めてもいいって言われても、危なくて停められないです。」


「障害者用Pってすごい幅よね、そういうことなのね。

でも、私の父が杖をつかないと歩けない時に障害者用のPに停めたわ。

少しでもお店の入り口に近い方がいいと思って。」


「だから、それがダメなんですよ。僕たちは幅がないと乗り降りできないんだから、

そこしか停められないんです。

普通の所に停めて、降りられたとしても、乗る時に隣に停めた車との幅が狭かったら乗れないんですよ。」


「そうか・・私、障害者用駐車スペースを勘違いしてた。

あれって、車イスのマークだものね。

身体障害者だけが車イスのマークね。

でも、みんな、障害者ってまとめてイメージしてるから、

車イス限定とか、深くは考えてないよね。

気をつけるね。

でも最近は専用Pがけっこう空いてるよね。

マナーがよくなってきたのかしら。コーンが置いてあったりするしね。」


「ほら、それも困るんですよ。

車イスのドライバーが乗り降りするのは大変なんですから、

車椅子に移ってコーンをどけて、また車の座席に乗り移って、

そんなことしてたら、他の車が怒りますよ。」


「そうか・・」


「それでも、停められたらいいですよ。

僕は指も使えないから、駐車券のある駐車場には入ることもできないです。」


「・・・・」


ずっとずっと別れるまで、

少しずつ少しずつ、彼の障害の重さを知ることになる。

障害の名前や等級や支援制度や、

そういうことでなくて。